浅漬けの正しい漬け方が分かる本

漬け物名人、針塚藤重さんの「漬けもの名人が教える おいしい浅漬け」は、名人というより、農業が好きで仕方がない人が書いたんだと感じさせられる本です。50~60℃のぬるめのお湯に浸して、3%の塩を足し、5℃の冷蔵庫で重しをして乳酸発酵させるのがコツです。

名人というより、好きで好きで仕方がない人が書いた本

漬けもの名人が教える おいしい浅漬けを読みました。

なんてよい本なんだろうとつぶやきながら読みました。アマゾンで見ると絶版になっているのか、中古本しかありません。

出版元の家の光協会はJA系の出版社ですが、こういうよい本は絶やさないようにしてほしいです。こうやって書いておけば家の光協会が増刷してくれると思っています。

読みたい方は、プレミアム価格で中古本を買うのはおすすめできないので、まず、図書館で探してみるとよいと思います。本体価格が1200円の本です。

著者の針塚藤重さんのことは、ぬか床のことを調べているときに知りました。知識と経験が豊富な方だからこそつくれるぬか床だと思いました。

簡単ですぐに使えるぬか床の作り方
ぬか床を新しく作ると、実際に漬けられるようになるまで1週間くらいかかります。これが待ち遠しいもの。しかし、新しく作って、その日から野菜を漬けられるぬか床の作り方があるのですよ。すぐに漬けられるなんてどうしてでしょう。

針塚藤重さんのインタビューもあります。

この人と語る21世紀のアグリビジネス/JACOM

針塚さんのぬか床の作り方を読んですっかりファンになってしまい、他の本も読みたいと思いました。きっと面白いと思ったのです。何しろ、この方、仕事として以上に、農業が好きで好きで仕方がない感じが伝わってくるのです。

浅漬けも乳酸発酵

浅漬けといっても塩を振って漬けるので乳酸発酵します。浅漬けは、決して浅漬けの素を混ぜてもみもみすることではないですよ。

針塚流浅漬けは、漬物の本筋を外しません。発酵させることにこだわっています。

漬物は発酵が早く進みすぎると味があまりよくならないので、温度を低くしてゆっくり発酵させるのがおいしくするコツだそうです。

腐敗を防ぐ塩分は3%

今は減塩時代で、塩辛いものを好む人は減っていますが、漬物としてのおいしさを保ちつつ、腐敗を防ぐ塩分のボーダーラインは3%。これを切ると、腐敗菌が繁殖しやすくなってしまうそうです。

冷蔵庫の中で漬ける

この本では、塩分3%で5℃に保存して乳酸発酵させます。針塚流浅漬けは、冬はともかく冷蔵庫の中で漬けるのです。5℃は冷蔵温度です。

低温で保存するのは、腐敗菌対策とゆっくり発酵させるためです。

しっかりと重しをすると水が上がってきて、野菜が空気にふれなくなると、野菜から乳酸菌群が塩水中に出て来ます。乳酸菌は乳酸を出して、雑菌が繁殖できないようにします。

重しをするのは、乳酸菌が増えるためにも必要なことです。

ちなみに本には方法までは書かれていませんでしたが、ぬか床を作ったときのように市販の乳酸菌製剤(ビオフェルミンS細粒)を加えれば、その日から食べられるなんて小さな記事がでていました。

浅漬けの作り方の原則

目次の次に針塚流浅漬け作りの極意がありました。

  1. ていねいにトリミングする。汚れや傷んだところを取り除きます。
  2. 野菜は必ずシャワー洗い。たまり水だと有害な菌が残る。
  3. 漬ける前に50℃~60℃のお湯に浸す。残っている農薬を落とし、えぐみが少なくなり、野菜がもっている酵素を活性化させるため。
  4. 野菜の色、味を素直に引き出す。
  5. 漬け方を変えて水を早く上げる。材料によって早く塩が回るように工夫します。
  6. 塩、麹、昆布、唐辛子にこだわる。

浅漬けって簡単にできるから浅漬けなんでしょうと思う方にとって、手順が多いのは確かです。しかし、プロに習ってその通りに漬ければおいしいものができます。

アマゾンのレビューにも、この本に書かれている通りにやるとおいしいのができると出ていました。

乳酸菌で発酵させるためには、雑菌を減らす1.と2.は必要な作業です。

お湯に浸すとは、2012年頃、しなびた野菜がよみがえると50℃のお湯で野菜を洗うという話が流行りましたが、この本が出たのは2010年です。プロの間では常識だったのでしょう。

材料が入る大きさの鍋に50℃~60℃のお湯を張り、塩小さじ1を溶かして材料を入れ、10分ほど置きます。塩を入れるのは、野菜自体がもつ酵素を活性させるためだそうです。

漬ける前に50℃~60℃のお湯に浸せば、白菜などあらかじめ干さなくても漬けられます。

下漬けと本漬け

針塚流の浅漬けは、下漬けと本漬けに分かれています。普通の浅漬けは、下漬けだけで完成です。3%の塩を使い、材料の重さの1.5倍から2倍の重しをします。

冷蔵庫に入れ一昼夜、寒い季節なら二昼夜置いて、水が上がってきたら漬け上がりです。

漬け上がったものは手でよくもんでアクをだします。さらに流水で水洗いして余分な塩分を落とします。

普通は、これで完成なのですが、ここから本漬けをします。

本漬けは、漬け汁を捨てた容器に再度入れて、重しをそれまでの半分にして再度冷蔵庫に入れます。容器は洗う必要はなく塩も加えません。本漬け後もすぐに水が上がってきて、翌日から食べられるそうです。

食べるときは、軽く水で洗います。塩分約1.5%の浅漬けになります。

冷蔵庫で漬けるなら漬物容器が必要かな

冷蔵庫の中で漬けるには、収納のじゃまにならないように四角形の容器が必要になります。たとえば、こんなのがほしいですね。ホーロー製です。

ホーロー製はにおいが移らない利点があり、しかも結構な重量の重しをのせるので、樹脂製でない方がよいと思います。100均の樹脂製の容器は薄いので、強度に問題ありですが、最近、ガラス製の容器も置いてありますから、比べてみて下さい。

レビューを読むと、蓋が弱いと書かれていました。ところで、無印良品に行ったときにホーロー製の保存容器を見つけました。

こちらはもう少し容器の高さがほしいですが、しっかりした蓋でした。お近くの無印良品で買えます。

該当する商品がありません。 | 無印良品
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クックパッドに出ていないキャベツの浅漬けレシピ

いまキャベツがとても安いので、キャベツの浅漬けをやってみようと思っています。

漬け時間:下漬け1日+本漬け1日
保存期間:冷蔵庫で3週間

材料

  • キャベツ・・・1個(約1キロ)
  • 粗塩・・・30g(キャベツ重量の3%)
  • 昆布(3cm角)・・・3枚~4枚
  • 赤唐辛子・・・1本~2本
  • 塩水・・・水0.5リットル+塩15g

作り方を紹介します。

【下漬け】

  1. キャベツは外葉を1~2枚外し、傷や汚れがあれば取り除きます。4つ割りか6つ割りにします。芯はそのままでよいです。
  2. 鍋に50℃~60℃のお湯を入れ、塩小さじ1を溶かし、キャベツを浸して10分。
  3. 漬物容器に塩水用の塩と水を入れ、溶かします。これは早く水を上げるためにさし水にするのです。塩水の濃度は3%です。
  4. キャベツ半個を容器の中に並べて上から残った塩15gの約半量をふる。残りのキャベツも上から重ね、残りの半量をふる。手で押しながら漬けると塩水が上がってきます。
  5. ポリ袋を上にのせて重しをします。重しは1.5キロ~2キロ。さらに別のポリ袋で覆って空気が入らないようにヒモで縛るなど密閉し、冷蔵庫に一昼夜置く。

【本漬け】

  1. キャベツを塩水ごと手でよくもみ、流水でアクと余分な塩気を洗い流します。容器に入っている漬け汁は不要なので捨ててしまいます。
  2. 漬物容器にまたキャベツを並べて、昆布と赤唐辛子を入れ、上にポリ袋をのせて重し0.75キロ~1キロをし、さらに別のポリ袋をかぶせて冷蔵庫に入れます。翌日から食べられます。食べるときは軽く水洗いします。

漬物は塩分が強いほどよく漬かります。しかし、お医者さんに聞きましたが、高血圧と塩分量は、はっきり関係があるそうです。

ちなみに、きゅうりの場合ですが、通常の塩漬けは、塩分濃度は2.5%。ぬか漬けは、5.3%。しょうゆ漬けは、4.1%でした。出典

浅漬けなら漬物に対して塩分の比率が1.5%程度になるので、塩を減らせると思います。浅漬け100gに塩が1.5g含まれています。

NOTE

浅漬けをつけるなんて簡単だと思って、適当にやってしまいがちです。もちろん、発酵食品のよさは、「アバウト」さを寛容してくれるところなんですけれど。

しかし、ぬるめのお湯に浸して、3%の塩を足し、5℃の冷蔵庫で重しをして乳酸発酵させる。その日に食べたいなら、ビオフェルミンS細粒を足すなんて読むと、自分でもやってみたくなります。

深い興味と丁寧な仕事っていいなと思います。

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