日本のビール味の変遷

日本のビールは、最初はエールビールから始まり、すぐにドイツ風のラガービールに変わりました。日本人の口に合わせるため副原料に米が使われるようになりました。その後、トウモロコシや砂糖、ジャガイモなどデンプン類の使用が追加されました。これは戦争と関係があります。

ビール

このところ、ビールの話を書いていたので、ビールを飲む機会が増えました。

ところで、ビールの副原料の話を書いてから、副原料が入り出したのは戦時中の物資不足と関係があるのだろうなと思っていました。トウモロコシやジャガイモ、デンプンなんて主食になりにくいデンプン質です。

個人的に、日本のビール史を探して読んでみたいです。しかし、まずは、味の変遷をたどってみます。今は、うまいビールの科学を読んでいます。

この記事では、日本でビール造りが本格的に始まってからの味の変化について書いて行きます。

最初はエールだった

日本のビール造りは、幕末から明治初期にかけて来日した外国人のほとんどがイギリス人だったので、イギリス風のエールがほとんどでした。

イギリス風のエールとは、上面発酵のビールで、酵母を常温で短期間で発酵させ、複雑な香りと深いコク、フルーティーな味が特徴のビールです。常温の発酵は、エステルなど香り成分ができます。

ただ、日本人にはドイツ風のビールが口に合ったようで、1890年(明治23年)5月、福沢諭吉が創刊した新聞、時事新報には、「一口に評すれば、英国ビールは濃くて苦み十分に含み、独逸ビールは淡くして呑口さらさらと好し」とあったそうです。

下面発酵のドイツビールが好まれたようです。すでにこの時代には、ドイツ風のビールの生産が主流になっていきました。

最初の副原料は米

アメリカのビールは 副原料を使って淡泊な味にしています。それは喉の渇きをいやす目的が大きいからだといわれています。

1904年、麦酒税法改正で、日本の法律で初めてビールの原料が定義され、米も副原料の一つとして認められました。

この時代のビールは、防腐目的でホップをたくさん使用していました。そのため苦みが強かったそうです。貯蔵施設にもまだ問題があり、アルコール度数は高かったものの、炭酸も弱かったようです。

日本人の味覚に合わせるために、すでに米の使用は業界の常識になっていたそうです。

ビールがよく飲まれるようになる

1940年になって、それまで酒造税法の枠外に置かれて独自の課税体系に属していたビールや工業用アルコールなどを全ての酒類を統括した酒税法が施行されました。

1944年の酒税法改正で、副原料が米の他、トウモロコシや砂糖、ジャガイモなどデンプン類の使用が追加されました。これは戦争と関係しています。米と麦の節約のために他の原料を認めたのです。

その当時は、ドイツ以外の欧米諸国でも同じように副原料を認めていて、戦時中のビールは淡泊なものであったようです。

ところで、その前年1939年には、戦前最高のビール生産量を記録しました。

第一次大戦を契機とした、特需の影響で都市人口が増加し、カフェー、喫茶店、ビアホールなどでビールが提供され、ビールを飲む人が増えていたようです。

また、1941年6月から9月まで東京では、1世帯につき月2本の配給が実施されていました。配給によって初めてビールの味を知った人は多かったようです。

そして、軍隊の酒保では割安でビールを購入できたため、そこでビールを口にするようになった人も多かったようです。

第二次大戦後、1949年に酒類の自由販売と飲食店の営業が再開されてから、しばらくして食糧事情も好転し、ビールの原料も制約を受けなくなりましたが、戦前のようなビールには戻りませんでした。

それは、副原料を使ったビールの味を知っている人が多かったからだそうです。戦時中のレシピが今でも続いているとは、少し変な気もしますが、これは人の味覚によるのかもしれません。

ヒトは味には保守的なのかも

案外、人の味覚は保守的なのかもしれません。特にアッサリとした味のものに関しては。

私も同じです。新しいビールが出るととりあえずためしてみますが、しばらくするといつも飲んでいるビールをまた買うようになります。私の場合はサッポロです。

それぞれのビールは香りや後味が微妙に違うだけなので、別なビールしかないといわれると、それをおいしくいただきます。なんの不満もありません。しかし、味に関してはなんとなく好きという気持ちが購買に関係ありますね。

今でも麦芽100%のビールは何種類か販売されています。エビスビールは少し高いですが、たいてい他のビールと価格は変わりません。

最近行ってませんが、恵比寿にあるヱビスビール記念館に行くと、いろいろな種類のビールが飲めたと思います。

私がビールをよく飲むようになった頃は、まだ発泡酒はありませんでした。今のように発泡酒や第三のビールがたくさん並んでいると、そこから飲み始めた若者は、その味を好むようになるのでしょう。

NOTE

副原料の量が麦芽と逆転した発泡酒や第三のビールは、酒税とそれが反映される価格と関係があると思いますが、ビールに関しては、ヒトの味覚が保守的だということが大きく影響しているのではないかと思いました。

ビールについて他に書いた記事があります。ビールについて書いた記事をご覧下さい。

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