酵素洗剤の酵素について

洗濯洗剤に酵素が入ったのはいつからでしょうか?私が一人暮らしを始めた1970年代の終わりには、洗濯洗剤の箱に酵素の文字が入っていたと思います。そのせいか、酵素と聞くとまず思い出すのは、洗濯洗剤のこと。

その後、いわゆる健康食品の酵素を知った時、なんでこれが酵素なの?と思いました。

カラー図解 EURO版 バイオテクノロジーの教科書(上)によると、1960年より前から販売されていたようです。

この記事では、酵素洗剤の酵素がどのようにつくられているのかお知らせします。

酵素洗剤の標的はタンパク質

石けんも合成洗剤も、界面活性剤であり、油や油を含む汚れを水に分散させる作用によって油汚れを水に溶かすことができます。それで油汚れを落とすことができます。

界面活性剤とは、分子内に水になじみやすい部分(親水基)と、油になじみやすい部分(親油基・疎水基)を持つ物質のことです。

しかし、タンパク質は、水に容易に溶けないため落ちにくいのです。これは日常的によく経験しますね。高温になると、固まるのでよけい落としにくくなります。シャツについた卵の黄身などなかなか落ちません。

洗剤の標的は、タンパク質汚れなのでした。

初めての酵素洗剤

洗濯に酵素を使ったパイオニアは、ドイツのオットー・レームという人です。レームは、エドゥアルト・ブフナーの学生でした。

エドゥアルト・ブフナーは、酵母の酵素チマーゼを発見しノーベル賞を受賞した人です。

ネットで見つけた酵素と洗浄という論文によると、レームは1913年動物のすい臓の乾燥物を洗剤に応用する特許を出願し、1930年にはスイスですい臓由来の酵素洗剤が市販されたとあります。

レームの使った酵素は膵臓の酵素でしたが、安定性に欠け、とても高価でした。

1960年、アルカリ性の条件でも酵素活性があるサチライシンと呼ばれるタンパク質を分解するプロテアーゼがバシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)から発見されました。

この酵素は、基質特異性が低く、いろいろな粘着性をもつタンパク質をアミノ酸とペプチドに分解します。基質特異性とは、酵素が分解するタンパク質が特定のものとなる性質のことです。昔の高校生物では、一つの酵素は一つのタンパク質しか分解しないと習いました。その基質特異性が低いので、いろいろなタンパク質を分解できるのです。

タンパク質汚れは、こうして繊維から分離し、洗い流されるようになりました。

日本の洗剤は、酵素が入っていることが書かれていても細かく箱には書いていません。

布地を柔らかくするセルラーゼや、デンプンを分解するアミラーゼや脂肪を分解するリパーゼも含まれていて、赤ワイン、果物、コーヒーなどのがんこな汚ればかりでなく、複合汚れも落としてしまいます。

洗剤用酵素をつくる

カラー図解 EURO版 バイオテクノロジーの教科書(上)には洗剤用酵素の培養方法がでていました。

バイオ関係の仕事をしている人には当たり前なのでしょうが、私には面白いです。

菌を接種する栄養培地に、栄養源を加えます。

分解したデンプン(5%~15%)
大豆粉(2%~3%)・・・安価なタンパク源と窒素源として
ミルクタンパク質(2%)またはゼラチン

pHを安定させるためにリン酸を添加します。

培地は、121℃で20分~30分水蒸気滅菌します。その後、30℃~60℃の培養温度まで下げます。

pHは中性に保ち、培養液に空気を十分に送ります。好気性の菌なのでしょう。

使用する菌は、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)の純粋培養です。これは1960年頃と変わりがないのでしょう。

バシラス・リケニフォルミスが入った培養液を振とうフラスコに入った栄養倍地に接種します。

細菌は栄養培地中の窒素源を使い切り、10~20時間後には、細菌が分泌するプロテアーゼの一種サチライシンが培地中に検出されるようになります。酵素は細菌の外に分泌されます。

デンプンを分解するアミラーゼが一時的に現れますが、プロテアーゼの産生は栄養培地にタンパク質を含んでいる限り継続します。

他の微生物が培養液の中に混入し、生産量を低下させないために、培養中の全体を急冷して約5℃にします。

ここからは、酵素を取り出す工程です。

細胞を遠心分離またはろ過して除去します。得られた透明な上清(上澄み)を限外ろ過で濃縮します。限外ろ過とは、孔の小さな膜を通してろ過します。孔の大きさは概ね0.01~0.001μmです。μmは1/1000mmです。

この孔をプロテアーゼは通過できませんが、水、溶解した塩類、その他小さい分子は通過します。このプロセスで、10倍に濃縮されたプロテアーゼ液ができます。

さらに、このプロテアーゼ液を熱い空気の流れの中にスプレーすると水分が急激に蒸発します。これはスプレードライ方法と呼ばれますが、0.5mm~2mmの大きさの酵素の粒子が得られます。

酵素パワーのトップが国立科学博物館に

2016年9月12日に酵素パワーの『トップ』が未来技術遺産に登録というニュースが流れました。国立科学博物館が認定する2016年度の重要科学技術史資料に登録されるそうです。

酵素パワーのトップは、1979年発売でした。私はまだ短いCMソングを覚えています。ちょうど高校から大学の頃ですから、酵素パワーの酵素が耳に残っていました。

ライオン株式会社(社長・濱 逸夫)が1979年に発売した酵素配合の衣料用洗濯洗剤「酵素パワーの『トップ』」が、独立行政法人・国立科学博物館が認定する2016年度の「重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)」に登録されます。登録証および記念盾授与式は2016年9月13日に国立科学博物館にて開催されます。

植物酵素について詳しくお知りになりたい方は、まず、酵素について知りたいならまず最初にこのページから読んでほしいをお読みください。

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