「納豆の快楽」を読んだ

「納豆の快楽」の中で、納豆を食べると食中毒を防いでくれる話が一番興味深かったです。おかしなものを食べたら納豆を食べると覚えておきます。納豆菌と病原性大腸菌を同時に培養すると、納豆菌の増殖の早さで病原性大腸菌を淘汰してしまうそうです。そして栄養豊富で消化されやすい納豆は、体が弱った時に食べるとよいです。

納豆

納豆の快楽 (講談社文庫)を読みました。もう退官されたようですが、東京農大の小泉先生の本です。

小泉先生は食べることが本当にお好きなようで、この本を読んでいると無性に納豆が食べたくなってきます。もう、今夜は納豆を食べることに決めました。

納豆は食中毒を防いでくれる

小泉先生が納豆信仰(?)に目覚めたきっかけが書かれていました。納豆好きには無視できない、いや、是非覚えておきたい話です。何となくおかしなものを食べたら、納豆を食べる。

私が納豆信仰の教祖様のように、旅に出るごとに納豆を持って行くようになったのにはきっかけと申しますか、理由があります。

それは、大学を卒業してすぐに研究室に残ったとき、私の教室の教授は山田正一博士でした。山田先生は国税庁醸造試験所の所長をされた人で、醸造学の大家でしたが、あるとき、「小泉君、君はよくガツガツ食ってばかりいるけど、ちょっとおかしなやつを食って、ありゃ、これ食っちゃったけど大丈夫かな?少し腐っていたんじゃなかろうかなあなんて心配したときには、すぐに納豆食っておくといいよ。食中毒の防止には納豆、これですよ」というのでした。

以来、ちょっと腐りかけたようなものを食った後は、意識して山田先生の金言通りに納豆を食べてきたのですが、その結果は一度も下痢とか吐き気などせずに予防効果満点だったのです。

その実例もいくつか紹介されていますが、一つ書いておきます。小泉先生はいろんな本に書かれていますが、旅行に出かける時は、必ず納豆を持ち歩くそうです。

あやしげなベトナムのスッポンスープ

納豆を食べなかったら、きっとただでは済まなかっただろうなというのが文面から漂ってきます。

ベトナムに旅していたとき、街道筋の料理屋で昼飯を食べることになりました。スッポンのスープがあるというのでそれをもらうことにし、その他、鶏肉の炒め物や野菜とナマズの炒め物なども注文。出てきた料理を順々にパクパクと食べ始めたのです。

すっぽんのスープがなかなか出てこないので催促すると、ほどなくして出てきたのですがどうも生ぬるい。それでもこっちは腹空かしていますので勢いよくガブリガブリと飲みましてから、ウッ!ときました。何だかとても不快な臭いがそのスープから出ているのです。

じつはそのスープの表面には薄い膜のようなものが浮いていて、明らかに枯草菌か何かに汚染されていたスープでした。いっしょに旅をしていた他の3人もすでにそのスープを飲み込んでしまっていたのです。

これはいかん!と私はとっさに思いまして、カバンから納豆を八パック取り出し、それをみんなで二パックずつ食べたのでありました。この時も私を含めて四人ともその日の夜、そして翌朝と何の異常もなく、以後も体調に変化は全くありませんでした。

病原性大腸菌よりも早く増えて淘汰してしまう

なぜ、納豆を食べると食中毒が防ぐことができるのか?その理由の一つが後ろの方に書かれていました。納豆菌は大腸菌よりも早く増えて、大腸菌を淘汰してしまうのです。

培養基を寒天で固めた培地の上で、納豆菌と病原性大腸菌を一緒に増殖させますと、納豆菌はその増殖力の速さと威力のために大腸菌を淘汰(除き去ること)してしまい、納豆菌のみの世界になってしまうのです。

納豆菌といいましても、それは何千種類といます。人の顔や性質が一人一人異なるのと同じで、納豆菌にもさまざまな性質を持った菌がいます。

その中にはぐうたら納豆菌なんていうのもいて、糸引きのための粘性物質をつくらないのまでいるのですが、そんなぐうたら菌でも戦わせると、なんと大腸菌に勝ってしまうのです。いやはや納豆菌というのは本当に強いものですねえ。

日本酒の蔵では、納豆はご法度になっています。それだけ強い菌なんですね。

暴飲暴食の果てに納豆で復活

もう一つ、是非、納豆を食べたくなる話を。納豆はもともと栄養豊富で「畑のお肉」といわれる大豆を発酵させたものです。

いままで書いて来たようにちょっとおかしなものを食べても納豆菌のお陰で食中毒を防いでくれるのですが、納豆は消化吸収されやすい栄養でもあります。体が弱った時は、納豆を食べようと思います。

二八歳のあるとき、一週間にわたりまれなるほどの暴飲暴食をしたことがあって、体調を完全に崩し、胃痛、嘔吐、下痢、食欲不振が数日間続いたことがありました。「俺はもう駄目かな。しかし食べ過ぎて死ぬのなら悔いは残らないからいいことにしよう」なんて真剣に考えたほどでした。

ところが、蚊が吐息するように意気消沈していたそんなとき、ふと考えたのが納豆を食ってみようということでした。そこで、やっとの思いで歩いて行って納豆を一〇袋ほど買ってきて、その一袋にちょんと醤油をかけて食べてみたわけです。

しかし、やっぱり吐き気が強く納豆は不味く感じて食べきれなかったのです。そこで開き直って、「ええい、俺は男だ!納豆の一袋ぐらい何だ!」といった気持ちになって無理して胃袋の中に送り込みました。

そしてひと眠りして目を醒ますと、どうも前とは違う。少し腹が減ってきたような感じがするんですな。「おおっ、こりゃ納豆のせいで良くなったのかも知らん。よっしゃ、あと一袋食ってみんべ」などと考えまして、醤油をちょんと滴らしてまた食ってみたんです。

するとどうでありましょうか。今度は納豆が美味しく感じられるようになったんです。「よしゃ、よしゃ、これだ!」ということになって、それから三日間、ただただ納豆だけを食べてみたんですね。そうしたらもうからだの方はバンバンに元気になって、完全復調したというわけなんです。それ以来、納豆信仰の私になりました。

NOTE

私、納豆が好きです。いつもスーパーで買わず、八百屋さんにたまにある、1パック100g入りが3パックで100円というのを探して買っていました。しかし、リーマンショック後だったか、大豆の値段が上がり、1パック100g入りだったのが、知らない間に90gに減っていました。

これではいかんと、ヨーグルトを作るためのTANICAヨーグルティアを買い、乾燥大豆を買ってきて種菌はスーパーで買った納豆小パックを使って、以来ずっと自作しています。発酵食品は簡単にできるところがよいところです。納豆を作るのも大豆を前の晩から水に浸けて圧力鍋で30分蒸すのがめんどくさいくらいで、あとは納豆を混ぜて保温ですから簡単なものです。納豆の作り方 自作してみようを読んでください。

納豆の作り方自作してみよう
納豆は、保温さえうまくできれば簡単に自作できます。私は保温器としてタニカヨーグルティア(ヨーグルトメーカー)を使っています。納豆を作るために、材料や仕込み方法、失敗しないためのコツ(気をつけること)を説明します。大豆の安い入手先もご紹介しま...

ところで、納豆について書いていて、ふと昔のことを思い出しました。私は北の方の人間ですが、大学に入ったとき、同じ下宿に和歌山から来たのがいました。ある日、朝食に納豆がでたのですが、初めて見た。食べられないというのでもらったことがあります。

今は健康情報が津々浦々まで行き渡っていますからどこでも納豆は売っていると思いますが、昔は、関西以西の人はあまり食べなかったと思います。

納豆について記事をいくつか書いています。他の記事は、納豆についてをご参照下さい。

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