カカオ豆を発酵させるココア発酵

チョコレートはカカオからできているのは知っていましたが、カカオ豆を発酵させてからチョコレートを作っているのは知りませんでした。

チョコレート

チョコレートは発酵食品?

チョコレートの散歩道―魅惑の味のルーツを求めてを読みました。

実は少しチョコレートに興味を持っています。カカオにポリフェノールがとても多いことは知っていたのですが、傷を早くなおす効果があるというココア研究という記事を読みました。

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それから私も純ココアを買って来て飲むようになりました。純ココアはココアパウダー100%です。

普通のチョコレートは、ココアパウダーにココアバター(脂肪)を足して、さらに植物油脂や砂糖やミルクやその他いろいろ入ります。お店でチョコレートをひっくり返して原材料を見るとよいですよ。植物油脂は、製造コストを下げるためにココアバターのかわりに入れているようです。

チョコレートというかカカオはすごいなと思っていたら、マツコの知らない世界という番組に楠田枝里子さんが出て来てチョコレート特集をやっていました。

私よりだいぶ年上なのに、毎日チョコレートを食べているという楠田枝里子さんの若々しい感じが印象に残っています。

楠田枝里子さんは東京理科大卒で化学を専攻された方なので、チョコレートを好きで食べる以外に何か裏付けがあるのだろうと思ったら、やはりチョコレートの奇跡という本を出されてました。さすが化学を専攻された方らしい聞き方をする対談本です。

ところで、カカオはチョコレートの原料であることはよく知られていますが、カカオ豆はチョコレートに加工される前に発酵させるということはご存知ですか?

カカオ豆の発酵

カカオ豆は、カカオの木の幹に生える木の実、カカオポッドの中にあります。

cacao

硬くて厚いポッドの殻を割ると、中に白くて粘っこい繊維(パルプといいます)に包まれた30個~40個の豆が房状になって出て来ます。

pod

豆の断面の色はカカオの木の種類によって変わります。紫色と白があるようです。

熟したカカオポッドからカカオ豆とパルプを取り出して、数日間発酵させます。発酵させなくても焙炒(ロースト)させれば食べられますが、チョコレートの風味を出すためには発酵が絶対に必要なのだそうです。

発酵の様子は、クラウドファウンディングこの夏、ガーナ現地まで赴き、皆様にチョコレートを届けます!!というプロジェクト(すでに終了していますが)の記事が写真も大きくてとても詳しいです。

しかし、図書館で探してみると、発酵ハンドブックに詳しく説明されていました。

カカオ豆の主産地は、アフリカ西海岸のガーナであり、世界のカカオ豆の約95%を生産しているそうです。

温度とpHの変化

収穫した果実は2つに割って中の果肉と種子を一緒に取り出す.

ガーナで行われている発酵法はかなり原始的なもので,果肉と種子をそのまま”すのこ”の上に敷いた大きなバナナの葉の上に積み上げる.

量は1回の仕込みあたり果肉と種子500~550㎏程度.直径約1.7m,高さ約60cm程度の積み上げとなる.

積み上げた後はバナナの葉で横と上を覆う.発酵は144時間(6日間)行われ,この間,わが国のコウジ製造のときと同じように2~3回積み替え(手入れ)が行われる.

強制通気は行わない.(中略)発酵開始後2日で品温約50℃に達し,発酵終了までほぼこの値が維持される.

pHは果汁部分では終始4程度で変化しないが、豆部分では最初pH6.5のものが発酵開始後2日でpH5程度に低下し、そのあとも徐々に低下して果汁のpHと差が認められなくなる.

どんな菌が活躍しているのか知りたかったのですが、説明されていました。

ココア発酵にかかわる微生物

おもなミクロフローラは酢酸菌(Acetobacter),乳酸菌(Lactobacillus)および酵母である.好気性有胞子細菌 Bacillusも多くはないが必ず存在する.

空気と接触の多い好気環境が強い上部では終始酢酸菌が優勢をしめるが,嫌気状態が維持される下部では酢酸菌と乳酸菌の割合はほぼ等しい.

その菌濃度は107~108CFU/gである.ココア発酵の環境で棲みつくことが可能な乳酸菌は,まず高温に耐えることができること,乳環境の乳酸菌とは異なりグルコース,スクロースなどの糖発酵性に優れていること,とくにこの点では植物繊維などを基質に含むためキシロース資化能に優れているものも多く見られる.

ガーナの積み上げ式ココア発酵で一般に見られる乳酸菌はホモ発酵菌のLactobacillus plantarum,ヘテロ発酵菌でキシロース発酵性の L.collinoides,L.fermentum が共通して見られる.

ココア発酵における酢酸菌の重要な役割は発酵系に熱を供給することであると考えられている.

好気的にエタノールを酸化して酢酸をつくることにより発生する熱がココア発酵を50℃の高温を維持することを可能にしていると考えられている.

酢酸菌が活発にはたらくことにより培養系は高温に保たれ,多くの熱感受性菌が死滅してココア発酵に最適な環境を形成する.

ガーナの積み上げ発酵では酢酸菌は Acetobacter rancens,A. ascendens,A. xylinum,Gluconobacter oxydans が確認されている.

A. rancens A. xylinum はビネガー醸造用の generater で一般に見られる代表的な酢酸菌であるが,A. ascendens はココア発酵以外ではあまり知られない酢酸菌である.

Gluconobacter oxydans は酢酸生成力は弱いが酢酸菌として機能していると思われる.

いまひとつのココア発酵における重要な微生物は酵母である.酵母は酢酸菌の基質であるアルコールを生成するほか,多様な揮発性アロマ物質を生成し,カカオ豆の複雑なフレーバー形成を行っている.

ガーナでは Hansenula, Kloeckera, Torulopsis, Saccharomycopsis などの多様な酵母が確認されているが,これらの酵母の個々のはたらきとチョコレートフレーバーとの関係は明らかになっていない.

また,ココア発酵では Bacillus 属菌もみられるがガーナでは Bacillus subtilis(枯草菌)のみが確認されている. Bacillus 属菌は数も多くはなく,その役割は不明である.

エネルギー源として糖が使われ、バナナの葉っぱで包まれているので(酸素が足りず)アルコール発酵が始まります。

できたアルコールが、酢酸菌によって酢酸に変わります。酢酸は家庭で使っているお酢の成分です。もちろん酸性です。

酢酸ができることが、カカオ豆をチョコレートの原料にするためにとても重要なことだそうです。酢酸がカカオ豆にしみ込んで、渋みを減らす役割をしてくれるのだそうです。

Dari KさんのDari K のカカオ革命を読んでもカカオ豆を発酵させる重要さが分かります。カカオ豆を発酵させると、チョコレートにした時の香りが格段に良くなるのだそうです。

cacao beans

発酵させたカカオ豆は乾燥されてチョコレート工場へ送られ焙炒されます。その時に加えられる熱によって反応が起こり、1000種類以上の香味物質が生まれ、チョコレートの香りになります。

カカオのお酒

カカオパルプは糖分があってアルコール発酵しますから、当然、そのお酒もあるでしょう。カカオパルプは、搾ってジュースにして飲むそうです。アマゾンにはカカオパルプ フルッタというのが売られていました。

カカオパルプのお酒は、チョコレートの散歩道―魅惑の味のルーツを求めてでは「Mel de Cacao」(カカオの蜜)というのがあるそうですが、残念ながらネットでは見つけられませんでした。

発酵させて焙炒したカカオ豆をアルコールに浸漬した、カカオリキュールはたくさんありましたよ。

まとめ

糖が発酵してアルコールから酸に変わるのはよく知られたことです。酸とアルコールが反応するとエステルになり、香り成分に変わります。

日本酒のよい香り、たとえば吟醸香などエステルによるものです。

しかし、チョコレートの香りが同じ仕組みでできているとは知りませんでした。

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