しょうゆ讃歌は面白い本だ

しょうゆ情報センターが出している「しょうゆ讃歌」(2冊)は、非売品のエッセイ集ですが読む価値があります。読むとすごくお腹がすきます。体の調子が悪くて寝込んでいるときに読んだら効果てきめんな本だと思います。

最近、図書館に行くとまず製造業の棚に行って、発酵食品の本を眺めます。料理の棚にも発酵食品の本はがあるのですが、製造業の棚はメーカーの話で、料理の棚はユーザーの話なのです。

今日は製造業の棚に初めて見る「しょうゆ讃歌」という本が2冊並んでいました。残念ですが非売品なので、アマゾンリンクは貼れません。しょうゆ情報センターが出している本です。

代わりに撮った画像を載せておきましょう。

しょうゆ讃歌

私は昔から本好きなので、本の装丁と目次を見ると面白いか面白くないか何となく分かるのですが、この本は面白い本です。読みたいと思った人は近所の図書館の蔵書を検索してみて下さい。

最初からすごいです。

醤油じゃないとうなぎはおいしく食べられない

中谷宇吉郎さんの話からすごい。知らない方でしたが、物理学者、随筆家。位階は正三位。勲等は勲一等。学位は理学博士(京都帝国大学・1931年)だそうです。出典

ロンドン留学中に、料理上手なフランス人の女性に毎日食事をつくってもらって、「なにか食べたいものは?」と聞かれ、「うなぎ」と答えて、当時最低(と認識されていた)の食べ物であった鰻のスープを食べさせられた。

確かにまずかったそうなのですが、名誉挽回とばかりに、その女性を連れてロンドンの日本料理屋で鰻の蒲焼を食べさせたらびっくり仰天、これは醤油なしでは料理ができない・・・という、この本は「醤油がなければ話」集なのです。

醤油をお湯に溶かして飲む

二番目に登場する椎名誠さんは、1980年代から辺境を旅していろんな話を書いている人で、私も1980年代からずっと本を読ませていただいています。

椎名さんのネタは、アンデス山脈の旅行で羊の肉と瓜とトマトの連続攻撃の後の醤油なのです。私は好きですが、羊の肉はにおいがあるので嫌いな人は多いです。しかし、食べ物はそれしかない。

ああ、ギョーザが食いたい、ざるそば、カツ丼という醤油味噌を使った料理への渇望の日々があった後に、日系人旅行者から、醤油を少し分けてもらうことができました。

だしは入ってないですが、何よりも醤油を溶かして飲んだお湯が実にうまかったという話です。そんな状況になったことはないけれど、想像できますね。

この本を編集した人は話の順番の並べ方が実にうまいと思います。

醤油で病気がなおってしまう

その次に出てくる内舘牧子さんのは、落として持ち上げる話です。

常々、海外にでかける時に友人が梅干しや醤油、インスタント味噌汁など日本食をもって行くのを、鼻で笑っていた内舘さんでしたが、あるときパリで高熱がでて動けなくなってしまったのです。

熱は1週間近くたっても39度台から下がらず、おまけに猛烈な吐き気に襲われて、病院にも行けない状態でした。

ところが、突然、「おろしそばが食べたい」と思い、しかも、体中がそばつゆの醤油味をほしがっているのが分かったのです。

それで、病院にも行けない状態だったのに着替えておろしそばを食べに行ってしまったのです。それもすごいですが、その夜から熱が下がり始めて、翌日にはほとんどなおっていたとか。

朝食のおかずを醤油なしで食べられるか?

食べ物の話といえば、東海林さだおさんです。

朝食のメニュー、納豆、カマボコ、海苔、ワサビ漬け、トロロ芋、ホウレン草おひたし、生卵を食べようとしたとき、醤油さしに醤油が一滴も入っていなかったらどうなるか?という想像のお話です。

絶対に醤油が手に入らない。

あきらめて、醤油なしの納豆をニチャニチャかき回してご飯にのせて食べる想像をする。
醤油なしの海苔を、ゴハンに巻いて食べるところ。
醤油なしのカマボコを、ゴハンといっしょに食べるところ。
醤油なしのワサビ漬けを、ゴハンにのせて食べるところ。
醤油なしの生卵を、ゴハンにかけて食べるところ。
醤油なしのトロロ芋を、ゴハンに混ぜて食べるところ。

これら、朝食のおかずは、実は醤油におんぶにだっこの人生だったことを、つくづくと知ることになるというお話でした。

減塩醤油への意志

日野原重明先生は、減塩醤油を日本人の普通の醤油にするという運動を起こすことができれば、日本人に高血圧が多いという問題に対して、簡単に効果がでると書かれています。

東京の人は、食塩を1日に12グラム~13グラムとっています。これに対し、アメリカ人は、約8グラム。

昔の日本人は粗食で、ご飯の味をつけるのに塩が一番よかった。調味料としても安かった。保存のために野菜や魚を塩漬けにもしていたので、自然と塩分を多くとるようになってしまいました。

普通の醤油は、100mlの中に食塩が15グラム入っています。減塩醤油はその半分の8グラムですから、同じ量の醤油をかけても塩分の摂取量は半分ですみます。

日野原先生にいわれると、よしやってみようと思うのが不思議です。

 

しょうゆ讃歌第一巻

中谷宇吉郎/椎名誠/内舘牧子/獅子文六/松永伍一/東海林さだお/阿刀田高/荻昌弘/立松和平/村松友視/関西テレビ/日野原重明/河野友美/大塚滋/坂口謹一郎/石毛直道/小泉武夫/榮久庵憲司/金子修也/司馬遼太郎/小菅桂子/竹内誠/平野雅章/田中則雄/木村尚三郎/加藤秀俊/小山裕久

しょう油についていくつか記事を書いています。他の記事は、しょう油についての記事でご覧下さい。

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