発酵食品を読む | 発酵食品のよさや効果を読んで知ってためしてみる https://hakkou.kuni-naka.com 発酵食品のよさや効果を読んで知ってためしてみる Sun, 07 Aug 2022 10:18:30 +0000 ja hourly 1 酒粕はたんぱく質が豊富で焼いて食べるとよい https://hakkou.kuni-naka.com/5278 Sun, 07 Aug 2022 10:18:30 +0000 https://hakkou.kuni-naka.com/?p=5278 日本酒はお米と水だけで造りますが、酒粕はたんぱく質が豊富で100gあたり15g程度あります。これは酵母が増えているからです。酒粕をたんぱく源と考えると、ある程度の量を食べるには8%あるアルコールがじゃまになります。酒粕を焼いて食べるとよいことがわかりました。

酒粕

絵でわかる麹のひみつを読んでいました。この本は入門書のような体裁をとっていますが、もっともっと深いです。小泉先生が麹に興味を持って一通り研究されたことが網羅されています。塩麹とか甘酒を自分で作っている方が読むと、とても面白く読めます。

酒粕にはたんぱく質が多い

ところで、この本には酒粕についてこんなことが書かれていました。

清酒製造の際に出る酒粕にも機能性があります。酒粕はタンパク質や食物繊維,ビタミン類,ミネラル類を多く含んでいるので疲労回復,消化促進(つまりは整腸作用もある)によく、このほかにも総コレステロールを抑制する作用があるとされています。そしてもちろん美白効果も。

このように考えると,清酒を飲むよりも酒粕を上手に料理にとり入れて利用するほうが賢いかもしれません。米麹が栄養も旨味もアップして酒粕になっているのですから料理がおいしくならないわけがありません。是非,料理に酒粕をうまく活用してみてください。

酒粕は自分で買ったことはありません。甘酒の材料くらいにしか思っていませんでしたが、たんぱく質が多いと書かれています。

早速調べてみると、この通り。酒粕100gあたり、たんぱく質が14.9gもあります。比較のために赤味噌の成分も調べましたが、それよりも多いのです。赤身の肉は100gあたりたんぱく質が20g程度ありますが、結構、いい勝負しています。

100gあたりの栄養成分
食品成分 酒かす 赤色辛みそ
エネルギー 215kcal 178kcal
水分 51.1g 45.7g
たんぱく質 14.9g 13.1g
脂質 1.5g 5.5g
炭水化物 23.8g 21.1g
灰分 0.5g 14.6g
※日本食品標準成分表2020年版(八訂)

日本酒はお米と水だけで作りますが、酵母が増えてアルコールをつくります。日本酒は醸造酒としては世界一アルコール度数(20%くらい)が高くなるのですから、酒粕には酵母の残骸?がたくさん入っているでしょう。酵母にはたんぱく質が多いのです。薬局で売っているビール酵母と同じことです。

酒粕っておいしかったっけ?

酒粕というと思い出すのは甘酒。子供の頃、冬に甘酒を飲ませてもらうと、ちょっと味噌に似た風味があり、甘さに合わないような気がしていました。

私、味噌汁は好きなのですが、その記憶があるので今でも酒粕から作る甘酒はあまり飲みたいと思わないです。

ただ、大人になって、酒を飲み始めてからは、普通酒と吟醸酒では味や香りが全然違うので、吟醸酒や大吟醸酒の酒粕は、きっとおいしいのではないかと思っています。

酒粕っていくらぐらいするんだっけ?

酒粕は、秋に酒造りが始まって搾る時期になると、スーパーなどお店に並びます。あまり興味を持っていなかったので、いくらぐらいするのか知りませんでした。

アマゾンで調べてみると、使いやすそうな味噌の容器に入ったのがありました。福正宗 純米吟醸酒粕450g×3個というやつです。純米吟醸酒の酒粕です。練り酒粕ですぐに溶けるとレビューが書かれていました。

製造は、金沢の福光屋という酒造会社です。私はここのお酒は飲んだことはありません。

酒粕をたんぱく源とする

酒粕はたんぱく質が多く、味噌と違って塩が入っていないので、もし量を食べられるならたんぱく源になります。そのまま食べることってできるのかな?と思いました。

わさび漬けを自分でつくる

それでまず思い出したのが、わさび漬けです。

以前、わさび漬けの作り方調べたら意外と簡単でしたという記事を書いたことがあります。私はわさび漬けが好きで、奥多摩に行った時は必ず買って来ます。

わさび漬けの作り方調べたら意外と簡単でした
漬物学を読んでいます。昨夜台所の下を整理して、使えそうな空き瓶や梅酒漬け用のガラス瓶を出してきました。これから遊びながらあれこれ漬けてみようと思っています。 ところで、わさび漬けってお好きですか?私は好きで、観光地のおみやげ物屋さんで売って...

ただ、材料になる生わさびはいつも手に入るものでなく、なかなかお値段もよいのです。ふと、チューブ入りのわさびや粉わさびを混ぜたらどうなんだろう?と思って調べてみると、紹介している人がいました。

わさび酒粕 △基本のレシピで紹介されていました。こちらも富山の酒造会社、玉旭酒造の方が紹介されています。これは真似してみる価値がありますね。

材料 (基本の比率)
酒粕:大さじ1
チューブわさび:1~2cm
または
粉わさび:小さじ半分強
醤油:数滴

ただ、わさび漬けは辛いので、一度にたくさん食べるものではないです。そして、酒粕自体、そのままだと結構アルコールが入っています。

酒粕のアルコール度数は約8%

月桂冠の酒粕について知る 賞味期限、保存方法、酒粕の種類を読むとこのように書かれていました。アルコール度数は8%あります。ビールより強い。たくさん食べると確実に酔っ払いますね。それはそれで楽しいかもしれませんけれど。

しぼりとられた酒粕には、デンプン・タンパク質・繊維質、発酵中にタンパク質が分解してできたペプチドやアミノ酸、ビタミン、もろみの発酵中に働いた酵母などが含まれており、これらの成分は栄養的にも優れています。アルコール分も8パーセントほど含んでいます。

アルコールを飛ばすには、加熱するしかありません。煮るか、焼くか・・・と思って調べてみると、焼き酒粕というのが出てきました。

酒粕を焼いて食べる

酒と良縁な「焼き酒粕」─ こだわりの晩酌、呑むなら作るべしという記事がありました。酒粕を焼くなんて、今日まで考えたこともありませんでした。

少し焼くだけで香ばしいつまみになるそうです。アルコールも飛ぶでしょう。

板粕を適当な大きさに割って焼くだけ。炭火のほか、アルミホイルを敷いたオーブントースターや魚焼きグリルなどでも簡単に焼けます。(中略)

表面がこんがりとしたら食べ頃です。焼きたてを味わうと中はほっこりとしていて、素材の旨みが口の中に広がります。酒粕を生で食べた時の食べにくさはなく、その食感はまるでお菓子のようです。

焼いて食べるなら、酒粕の水分は少ない方がよいでしょう。上で紹介した練り酒粕でなく、板状の酒粕を買った方がよさそうです。

アマゾンで調べると、西宮食糧 酒粕一番板粕300g×3というのがありました。

これなら、適当に切ってトースターで焼くとすぐに食べられます。どうやら酒粕をたんぱく源にするなら、焼くのが一番簡単な方法のようです。

NOTE

この記事を書きながら、発酵させたままのどぶろくが飲みたいなと思いました。もちろん、搾った日本酒はおいしいですが、たまにはそのままの酒を飲んでみたい。その方が、体にも優しそうだなと酒好きなので思ってしまいます。

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炊飯器で保温したご飯が臭くなる https://hakkou.kuni-naka.com/5259 Wed, 04 May 2022 08:47:04 +0000 https://hakkou.kuni-naka.com/?p=5259 炊飯器が壊れて保温したご飯が臭うようになりました。保温目的なので安いマイコン電子ジャーを買って来て保温したら、やはりご飯が臭くなり24時間持ちません。保温温度が関係しているようで、保温温度73℃でパッキンが内ブタに付いているIHジャーを買ったらあっけなく解決しました。

炊飯器

使っていたIH炊飯ジャーの内ブタのゴムが切れてからご飯がひどくにおうようになった

あるメーカーの電子ジャーを保温ジャー代わりに使おうと買ったところ、ご飯がひどくにおうので困りました。結局、一番安いIHジャーを買ったら解決できました。

もともと1995年製造のタイガーの5.5合炊きのIHジャーを使っていました。丈夫で壊れないのでそのまま昨年(2021年)まで使っていました。途中、内釜の塗装(?)がはがれたので、新しく内釜を一度購入した程度です。うちでは玄米を圧力鍋で炊き、ほぼ保温ジャーとして使っていました。たまに白米を食べる時だけ炊飯機能を使いました。

ところが、長年使っていたせいで、内ブタを止めるゴムが切れてきちんとしまらなくなりました。その途端に、保温していたご飯がひどくにおうようになりました。

ご飯がべちゃべちゃになり酸味がして納豆のような臭いがする

それまでご飯を入れておくと、だんだん色が変化してカピカピに乾燥していく感じだったのですが、ご飯の粘りがなくなり、ベチャベチャして少し酸味が出て納豆のようなにおいを発するようになりました。私は少々の変化だったら気にしないタイプなのですが、私でも食べるのをためらうほどのにおいです。

新しく買ったマイコン炊飯ジャーでも24時間経つと「におう」

それで、家電量販店に行き、ほとんど保温に使うだけなので、あるメーカーの昔からあるタイプのマイコン炊飯ジャーを安く買ってきました。これも5.5合炊きです。

やれやれと思って使い始めました。その時は、もらってきた白米があったので炊飯ジャーで何回か炊いて保温したところ、24時間経つと同じように「におう」ようになりました。つまり夜にご飯を炊いて、翌日の夜になるとクサい飯になっているのです。

なぜ新品を買ったのにこんなことになるのだろう?

取り扱い説明書を読むと、保温時間の保証は12時間までなのです。確かに12時間まではにおいません。

何となくですが、以前使っていたようなIH炊飯ジャーを買うと、きっと解決するように思いました・・・が、買ったばかりなので他に解決できる方法はないか探すことにしました。

保温温度が関係しているのではないか?

何しろ、昔から当たり前のように炊飯ジャーを使っていたので、何でこんなことになるのか不思議でしょうがないのです。理由が知りたいと思いました。

初めて自分で炊飯ジャーを買ったのは、大学に入学した1980年代初めの春のこと。生協で買いました。もちろん、まだIHジャーなんてなく、マイコン制御なんてものもない、単なる(電子)炊飯ジャーといわれていたものです。

それで、一度に2合か3合炊いて2日で食べるような使い方をしていました。たまに食べ忘れて3日くらい置くこともありましたが、どんどん乾燥していくだけで、こんなすえたにおいが出ることはなかったです。

なぜこんなににおいが出るのだろう?考えてみると、ずっと使っていたIHジャーはフタがきちんと閉まらなくなりました。密閉性が悪くなると、保温温度が下がるだろうと思いました。そして、空気の出入りがあるので、雑菌が入って来るだろう。

私は、納豆の作り方自作してみようという記事を書いているように定期的に納豆をつくっています。

納豆の作り方自作してみよう
納豆は、保温さえうまくできれば簡単に自作できます。私は保温器としてタニカヨーグルティア(ヨーグルトメーカー)を使っています。納豆を作るために、材料や仕込み方法、失敗しないためのコツ(気をつけること)を説明します。大豆の安い入手先もご紹介しま...

そのおかげで100℃くらいでは死なない細菌も当たり前にいるのだと知っています。

それで、圧力鍋でご飯を炊いて炊飯ジャーに移すのはやめて、最初から炊飯ジャーでご飯を炊いてみましたが、やはり24時間後にはにおっていました。

これは、昔の炊飯ジャーに比べて、設定された保温温度が低いのだろうと思うようになりました。

クエン酸を使って手入れすると一時的によくなる

それで、メーカーの窓口に問い合わせてみました。すると、水にクエン酸を入れて炊飯モードにしてみてくださいと言われました。これは通常のお手入れ方法だそうです。確かに一時的によくなりました。しかし、少し経つとまた同じにおいがしてきます。そして、メーカーからは12時間以上の保温はおすすめできませんと回答が来ました。

その後、保証期間内でもあるし、チェックしてくれることになり、メーカーに送りました。保温温度が若干低かったそうで、調整してくれました。

返ってきた当初は24時間持ち、やれやれ解決かと思ったのですが、数回炊いて保温すると、またにおいがしてきました。炊飯ジャーは、炊飯する時に蒸気を逃すために穴があります。保温状態になり、空気の出入りがあればそこから細菌は入って来るでしょう。

保温温度73℃のIHジャーを買ったらあっけなく解決した

これで、あきらめがついて、IHジャーを買うことにしました。今度は保温時間を重視して、各メーカーのカタログを見比べて象印のIHジャーを買いました。

この時は量販店の店頭価格よりアマゾンが安かったのでアマゾンで買いました。

使い始めたら、全く問題がありません。な~んだというくらいあっけなかったです。保温温度は高めと低めを選べますが、当然、高めを選んでいます。73℃で保温するそうです。

なぜこんな違いがあるのか理由が知りたい

さて、その後、炊飯器での保温について論文を探しました。73℃と設定された保温温度には根拠があるに決まっているからです。

ネットで探すと、炊飯器での保温中に米飯を変敗させる細菌の推定という論文が見つかりました。

同じ機種でも保温したご飯がくさくなったりならなかったりする

この実験で興味深いのは、同じ機種の炊飯器を使って行われているところです。同じ機種でも保温したご飯がおかしくなるのとならないのがあるのです。

同じ機種の炊飯器を複数機体用いて保温試験を行い,常に保温中に変敗が生じる炊飯器(Spoilage rice cooker, SR)と変敗が生じない炊飯器(Normal rice cooker,NR)の二種を選抜した。

spoilage とは、「腐敗」という意味です。

ただし、この炊飯器のメーカーや設定された保温温度については何も書かれていません。

くさくなったご飯には細菌が繁殖している

そして、同じ機種の炊飯器を使ってご飯を炊いて保温すると、その後ご飯に棲む菌の数は、ずいぶん差があるのです。

NRでは,保温を72時間継続しても菌数は検出限界以下(<1.0×101) であった。一方, SRでは0時間後で菌数は3.6×102colony form unite (cfu) /g であり, 24時間後には1.6×104cfu/ gと保温開始時の約100倍に達していた。

さらに保温を継続することにより菌数は増加し, 72時間後には4.6×106cfu/ gにまで増加した。

colony form unite (cfu)とは何だろうと思いますが、これは株式会社衛生微生物研究センターのCFUって何ですか?という記事がとてもわかりやすかったです。

「コロニーはもともと1個の生菌から増殖してできたものだ」という考え方をもとに、コロニーの数=生菌の数と考えています。

CFUはColony forming unit(コロニー形成単位)の略で、生菌数(生きている菌の数)を表す単位です。

「個」ではなく「CFU」という単位を用いる理由を下記に説明します。

生菌数を測定する一つの方法として、試験液を接種・培養した培地に形成された集落数を数える方法(希釈平板培養法)があります。

1個の集落はもともと1個の生菌が増殖し、形成されたものとみなし、「集落数=生菌数」とするのがこの方法の基本的な考え方です。

しかし、厳密には集落が必ずしも1個の生菌から形成されたものとは限らないことから、この方法で測定した生菌数を表す場合に、CFUを使うことが一般的に行われます。

細菌は熱に強い芽胞菌で内蓋のパッキンやその隙間などにいる

一体、ご飯を腐らせる細菌はどこにいるのだろう?探すと、内蓋のパッキンやその隙間などから高頻度に検出されたそうです。そして、この細菌は納豆菌のように芽胞(がほう)をつくり、100℃以上でも耐えられるのです。

保温時の変敗は繰り返し生じることから,炊飯器内のいずれかの箇所で変敗原因細菌が残存している可能性が予想された。そこで,炊飯器の内部の拭き取り試験を行った。

保温時には16か所中11か所から細菌が検出された。また,洗浄後にも16か所中10か所から細菌が検出された。特に内蓋のパッキンやその隙間などから高頻度に検出された。これらの部位は保温時に水蒸気が凝縮した水分が特に溜まりやすい部分であった。通常の洗浄ではこれらの細菌を除去することは難しいと考えられた。

米飯は100℃以上で炊き上げることからほぼすべての細菌は死滅してしまうことからも,耐熱性芽胞細菌が関与していることが考えられた。耐熱性芽胞であれば,洗浄や炊飯時の熱では死滅せず,休眠することが可能である。つまり,炊飯後の保温中に芽胞が発芽し,栄養細胞へと変化するため,変敗が繰り返し生じると考えられた。

芽胞菌は、熱・乾燥・消毒に耐える

芽胞菌については、名古屋学芸大学のサイトに加熱しても死なない細菌「芽胞(がほう)菌」という画入りのわかりやすい説明がありました。

栄養素が不足したり環境が悪化すると菌体内に芽胞を形成します。そして、芽胞は熱だけではなく乾燥や消毒剤にも耐えますので厳しい環境の中で生き延び、生育の適した環境になるのを待ちます。水分、温度、栄養などの生育環境が整うと、“発芽”し、“栄養細胞”となって増殖をしていきます。(中略)

芽胞を殺菌するには乾燥状態では180℃で20分程度、湿熱状態では高温高圧釜(レトルト)での121℃で15~20分の加熱が必要です。

このように芽胞菌を殺菌するのはなかなか大変なことになります。この実験で、炊飯器のご飯を腐らせる菌はG.thermoleovoransであると特定されました。

G.thermoleovorans が犯人だ

G.thermoleovoransは、炊飯器の保温時に増えてくるので、高温細菌と呼ばれます。

本研究により,耐熱性芽胞を形成する好熱性細菌であるG.thermoleovoransが米飯の変敗に関与していたことを明らかにした。これまで米飯をはじめとするデンプンを含む加工食品の汚染は,中温域(30-37℃付近)で良好な生育を示す,Bacillus属細菌によるものが多く報告されている。

米飯保温中の変敗に関与する細菌としてこれまでにB.stearothermophilusが報告されているがG.thermoleovoransの報告例はこれが初めてとなる。

もともとお米にいるわけではないみたい

お米を保温中にこのような問題に悩まされると、一体この菌はどこから入ってくるのだろうと思います。私も、相当回数お米をといで炊いてみましたが、少ない回数と変わりはありませんでした。

炊飯器への混入経路を明らかにするために,これまでGeobacillus属細菌の分離報告例のある糠をはじめとして,精米後の白米などから分離を試みたが,分離には至らなかった。

さて、この G.thermoleovorans ですが、Geobacillus stearothemophilus のことだそうです。

常温では増殖しない

早速、どんな菌か調べてみると、高温細菌についてという記事が出てきました。

高温細菌は「常温で増殖しない」のが特徴です。40℃くらいが適温の納豆菌よりも増殖に適した温度が高いのです。においにうんざりしていたので、ご飯が炊きあがって夕食を食べてから一時保温スイッチを切っていました。そうすると、常温になるので確かにくさくなりませんでした。

高温細菌は、一般的に55℃以上の温度で増殖する細菌を指す。(中略)高温細菌は常温では増殖しないので、普段は問題となることは少ないが、ホットベンダーによる50~60℃で加温販売されるコーヒー缶詰やしるこ缶詰などで問題となった事例がある。

増殖温度の最高が72℃

また、主な高温細菌の増殖温度範囲の表が載せられていました。Geobacillus stearothemophilus だけ切り出しました。至適温度は書かれていませんでしたが、最高が72℃。なるほど私が買ったIHジャーの73℃の保温温度の根拠はこれかもしれません。

菌種 最低 至適 最高
Geobacillus stearothermophilus 30℃ 72℃

もし、私のように保温したご飯のにおいに悩まされて炊飯器を買い換えるなら、この保温温度を参考に、カタログを見比べて保温時間が長いものを買うのがよいと思います。

NOTE

少し前まで使っていたマイコン炊飯ジャーは、まだ処分していないのですが、この記事を書くために、象印のIHジャーと見比べていると、違いに気がつきました。

内ブタにパッキンが付いていてパッキンも洗える炊飯ジャーを選択する

炊飯器には、保温のため内ブタに必ずパッキンが付いています。象印のIHジャーの内ブタにはパッキンが一体化されて付いているのですが、某社のマイコン炊飯ジャーの内ブタにはパッキンが付いていませんでした。なぜか、ガチャンと閉める外ブタの裏にパッキンが付いています。

上で紹介した論文には、原因菌が、「内蓋のパッキンやその隙間などから高頻度に検出された」と書かれていました。外ブタの裏にパッキンが付いていると、当然、洗うことはできません。せいぜい、(アルコールなどで)拭くことぐらいしかできません。G.thermoleovorans は少々消毒したくらいでは死なない菌ですから、ここが格好の棲み家になってしまいます。

パッキンの取り付け方法の違いは、きっとコストが関係しているのだと思います。

炊飯器を買うときは、お店でよく見て、パッキンが完全に取り外せて洗えるものを選ぶようにしてください。保温温度とパッキンをチェックすれば私のようなことにはならないと思います。

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麹カビがなぜ 蒸米でよく増えると わかったのだろう? https://hakkou.kuni-naka.com/5238 Sun, 13 Mar 2022 00:55:28 +0000 https://hakkou.kuni-naka.com/?p=5238 蒸米が米麹作りに適しているのはわかったのですが、普段炊いたご飯を食べているので、なぜ蒸米が適しているとわかったのだろう?と思いました。調べてみると、大昔の弥生時代からお米は蒸して食べていたそうです。それなら食べ残したご飯にカビが生えるのは日常的に見ていただろうと思います。炊いたご飯にはカビが生えず、細菌が繁殖して腐るそうです。

麹

麹がなぜ蒸米だとよく増えるとわかったのだろう?

米麹を作る時、なぜ炊いた米でなく蒸米に麹カビを植えつけるのだろうと思ったことはありませんか?

米麹をつくる時なぜ蒸米を使うのだろう?では、蒸米を放置するとカビがつきやすく中でも麹カビが多いことを書きました。

実際、酒造りでは蒸米に種麹をふりかけて米麹を作る場面がよく出てきます。米を蒸すためには(こしき)という道具を使います。

なるほど、蒸米が米麹を作るのによいことは分かりましたが、なぜ、そんなことがわかったんだろう?思いました。

米を蒸すのは炊くことに比べて特別のことではないのか

というのも、普段、炊いたご飯を食べていますから、米を蒸すのは特別のことのように感じるのです。しかし、米麹作りに蒸米が適していると発見されるには、少なからぬ回数の試行錯誤があったはず。一体、どんな理由があって蒸すようになったのだろうと思っていました。

いつも発酵食品の本を書店で見つけるとパラパラやっていますが、小泉武夫さんの日本酒の世界 (講談社学術文庫)を読むとその理由がわかりました。

昔はお米を食べるために蒸すのが一般的だった

昔はお米を食べるときに蒸すのが一般的で、炊く(水を入れて水がなくなるまで煮る)ようになるのは後の時代になってからだったそうです。

奈良時代の風土記『播磨国風土記』に米麹による酒造りが初めて登場するのですが、その説明の中に、弥生時代前期までに米の調理法はすでに蒸していたと説明されています。

ところで、米麹を用いた酒造りが登場した最初の文献は、和銅六年(七一三年)に播磨国(今の兵庫県西南部)から録上した『播磨国風土記(はりまのくにふどき)』である。

宍禾(しきわ)郡庭音(にわと)村の地名説話に「大神の御粮沾(みかれいぬ)れて䊈(かび)生えき すなわち酒を醸(かも)さしめて 庭酒(にわき)と献りて宴(うたげ)しき」(神様に捧げた強飯〔こわめし〕が濡〔ぬ〕れて黴〔かび〕が生えたので、それで酒を醸し、新酒を神に献上して酒宴をおこなった)とある。(中略)

ここに記してある「御粮(みかれい)」とは強飯(こわめし)、つまり蒸した米のことで、それを造るには、甑(こしき)、つまり蒸し器が必要となる。ところが、甑はすでに縄文時代晩期後半あたりにも出土しているし、その上、水稲と共に米の調理具として大陸型のものが渡来してきていた(和歌山市鳴神音浦出土)から、弥生時代前期は甑の使用は当たり前のことであるからである。

当時の米の調理法は強飯主体であって(それよりもっと古い時代には蕗〔ふき〕の葉や樹皮などに包んでから火で焙〔あぶ〕ったり熱灰の中に入れたりして焼いて食べた)、今日のように水と米を一緒に炊く方法は、後の世になって、炊飯用の釜や器の進歩にともない貴族間で始められたという。

蒸すのと煮るのでは、でき上がりまでの時間がかなり違います。もちろん、煮る方が早い。釜や鍋があれば煮るのは簡単ですが、縄文式土器では無理だったのかな?

少し調べてみると、米穀安定供給確保支援機構:米ネットにあった縄文人は米を煮て食べていた?というなかなか面白い記事が出てきました。お米の調理の仕方は、このように最初に短く説明されています。なるほどなあと思いますよ。煮るのは(多分)誰でも考えることで原始的なことだと思いますが、煮るから蒸すにかわったのは、煮るのがむずかしかったからです。詳しくはリンク先を読んで下さい。

考古学では稲作が行われた当初はコメを煮て調理し、のちに蒸す方法にかわり、さらに中世になって釜で炊く方法へと戻ったといわれています。

どんな時代でもお米を無駄にすることなく食べたいと思っていたのでしょう。今は炊飯器や圧力鍋、鍋や釜でご飯を炊いていますが、上薬がかかっていない素焼きの土器でご飯を炊いたら結構大変ですね。

炊いたご飯はカビないで腐る

日本酒の世界 (講談社学術文庫)には、焼いた米、蒸した米、煮た米を放置した変化が詳しく書かれています。

炊いたご飯を放置すると、カビが生えず腐るそうです。

そういえば、ご飯が「すえる」時はまずにおいがおかしくなりましたね。納豆菌のような菌が増えるのか、さらにご飯のねばりがなくなりべちゃべちゃしてきます。

米を焼いたもの、蒸したもの、煮たものの三種を用意して別々の椀に入れ、室内に放置しておく。三日目には、蒸した米の表面にはカビが旺盛に繁殖し、ほのかに甘い匂いがしてきた。

ところが煮た米では、一週間ほど経つとカビが来ないどころか細菌(バクテリア)がクリーム状の薄い膜を造って繁殖し、腐った納豆のような異臭を放った。

さらに焼いた米に至っては、何の微生物もやって来ないことがわかった。実験は何度繰り返しても結果は同じである。

あとで出てきますが、炊いたご飯にもついカビが生えるだろうと思ってしまうのは、お餅のことを思い出すからです。

私は北海道で育ちましたが、正月に飾る鏡餅は、ストーブが消えると室温が氷点下になるような室内でも数日でカビが生えていました。でも、お餅は、もち米を蒸してからついていましたっけ。炊いたご飯ではなかったです。

蒸したご飯に種麹をふりかけるのは米麹を作る方法の完成形

米麹を作るためになぜわざわざお米を蒸すのだろう?という疑問から始まって調べ始めた話ですが、大昔、弥生時代にはすでにお米を蒸して食べていた(らしい)ことがわかりました。コトバンクで弥生時代を調べると、紀元前4世紀から紀元後3世紀頃のことです。

蒸したご飯を毎日食べていると、食べ残したご飯にカビが生えることをよく見ることになります。そのカビの中には麹カビがいて、それをいつから利用し始めたのかはよくわかりませんが、8世紀の奈良時代には、麹カビを使った酒造りが行われていました。

その後、カビだらけのご飯から木灰を使って麹を単離することができるようになったのは室町時代です。室町時代は14世紀。麹カビを単離するのは麹カビが酒造りに必要なものだとはっきり分かったからです。

弥生時代から室町時代まで、ざっと1800年くらいあります。

今のようにご飯を炊いて食べる時代、米麹を作るためにわざわざお米を蒸して種麹をふりかけている光景を見ると、なぜ米を蒸かすのかなと思いますが、米麹を作るための方法がかなり長い時間をかけて完成されているのです。

カビの生えやすさは調理後のそれぞれの米の含有水分量が関係している

ところで、煮ると蒸す。その違いは、私はお米についてはわかりません。お米を自分で蒸したことがないのです。

ただ、ジャガイモが好きなのでポテトサラダを作るために煮ると蒸すことを比べたことがありその違いが分かります。私は蒸します。煮るとすぐに形が崩れて来ますが、蒸すと(なかなか)崩れません。これはもちろん水分が関係しています。煮た方がジャガイモの水分が多くなります。

お米も同じようです。

含有水分量は多過ぎても少なすぎてもいけない

そして、カビが生えるかどうかは、調理した後の含有水分量が関係しているそうです。煮ると含有水分量が多くなりますが、多過ぎても少なすぎてもいけないらしいです。

その最大の理由は三種の加熱米の水分の差にある。煮るというのは一〇〇℃という温度で水中で加熱されることであり、蒸すというのは一〇〇℃に近い温度で水の蒸気と触れることであり、また焼くというのは数百度という高い温度で水を介在させずに加熱されることであるから、それぞれの場合での間には大きな水分含有量の差が出る。

ところで、微生物の繁殖には、生育環境の水分量が重要な影響を及ぼす。水分が多すぎたり少なすぎたりしてはならず、微生物の種類によって最適な水分含量の範囲があるのである。

そこで三種の米の水分量を測ってみたところ、煮た米は約六五%もの水分を含んでいたのに対し、蒸し米では三七%、焼いたものでは一〇%以下と、大きな差があった。

麹カビの繁殖には、三五ー四〇%が最も理想的な水分活性領域で、この数字は蒸した米の水分含有量と見事に一致しているのである。私のこの実験で、蒸した米にだけ麹カビがやってきたのはそのような理由によるのであって、今日私たちの生活にあっても、正月に神棚に捧げた餅(餅は蒸した米で造る)が数日間でさまざまなカビに被われてしまうのもその例である。

麹カビが増えるには、含有水分率が35~40%がよいということです。硬めの炊きあがり(蒸し上がり)になるのでしょう。

NOTE

この記事を書きながら、赤飯とかおこわってもち米を蒸して作っていたなと思いだしていました。デパ地下にたまに行くと山菜とか栗が入ったおこわはおいしそうだなと思ったことを思い出します。ウイキペディアでおこわを調べるとこんな説明が。

おこわ(御強)とは、もち米を蒸した飯の事を言う。元々は強飯(こわめし/こわいい)をあらわす女房詞が一般化した語である。強飯とは、こわい(堅い)飯の意で、うるち米の飯に比べ、独特のもちもちとした食感と甘味がある。赤飯もおこわに含まれ、狭義では赤飯のことを指す。

さらに、コトバンクで強飯を調べるとこのように書かれていました。

おこわ,強飯(ごうはん)とも。元来は米を甑(こしき)や蒸籠(せいろう)で蒸して作った飯のことで,釜(かま)で水を加えてたく飯を姫飯(ひめいい)というのに対し,堅かったのでこの名が付いた。

おこわは、御強で、強飯のことでした。覚えておこう。

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小西酒造大吟醸ひやしぼりはスッキリしたうまさ https://hakkou.kuni-naka.com/5201 Fri, 11 Feb 2022 23:41:37 +0000 https://hakkou.kuni-naka.com/?p=5201 1000円でお釣りが来る大吟醸酒、大吟醸ひやしぼり。兵庫県伊丹市にある小西酒造のお酒です。精米歩合50%で、原材料は米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造用アルコールです。醸造用アルコールはおもにサトウキビから造られた甲類焼酎と同じもの。加えられる醸造アルコールの量は白米重量の10%以下です。

1000円でお釣りが来る大吟醸酒

安い日本酒は「間に合わせ」のために買うものだと思っていたのですが、元旦にハナマサで買った4合ビンで1000円+αで買える純米大吟醸酒にびっくりして。急に興味を持ちました。

会津ほまれ純米大吟醸極(きわみ)は安くてうまくて驚いた

会津ほまれ純米大吟醸極(きわみ)は安くてうまくて驚いた
元旦の朝、日本酒を買ってなかったことを思いだし、会津ほまれ純米大吟醸酒極の4合ビンを買いました。1000円くらいでした。日本酒は大体おいしさと値段は比例していると思っているので冷やかし気分98%で買いました。しかし、香りがよくやわらかい味がしてとてもおいしかった。

実は、ハナマサには大吟醸とか吟醸クラスで安いお酒が他にもあるのです。これは一通り味わってみる価値があるなと思いました。

今日買ってきたのは、兵庫県伊丹市にある小西酒造株式会社のひやしぼり。大吟醸の方です。4合ビンで1000円出してお釣りがきました。ラベルの裏はこの通り。

安い日本酒はアルコール度数が低い(その分水が多い)のが多い印象がありましたが、これはアルコール度数15度以上16度未満で立派なものです。

精米歩合50%、原材料:米(国産)米こうじ(国産米)醸造用アルコール

原材料は国産米、米こうじも国産と書かれています。純米大吟醸ではないので醸造用アルコールは入っています。醸造用アルコールが入っているとキレがよくなる印象があります。

精米歩合は50%。これは大吟醸酒の決まりです。

醸造用アルコールとは

大吟醸酒は高級なお酒だと思っていますが、なぜ、醸造用アルコールが入っているんだろうと思いますね。これは、国税庁の「清酒の製法品質表示基準」の概要を読むとわかります。

大吟醸酒は、使用原料が「米、米こうじ、 醸造アルコール」と決められているのです。「米、米こうじ」だけしか使っていないなら、純米大吟醸酒になります。

醸造アルコールについて、このように書かれています。

醸造アルコールとは、でん粉質物や含糖質物から醸造されたアルコールをいいます。

もろみにアルコールを適量添加すると、香りが高く、「スッキリした味」となります。さらに、アルコールの添加には、清酒の香味を劣化させる乳酸菌(火落菌)の増殖を防止するという効果もあります。

吟醸酒や本醸造酒に使用できる醸造アルコールの量は、白米の重量の10%以下に制限されています。

アルコールは、お米のでんぷんを糖化すると酵母がアルコールにします。でんぷんならお米でなくてもよいのです。

醸造用アルコールの原材料はおもにサトウキビ

醸造用アルコールの原料として何が使われているんだろう?沢の鶴のサイトに醸造アルコールとは?醸造アルコールを含む日本酒の種類と特徴という記事がありました。

醸造アルコールは、主にサトウキビを原料として発酵させた純度の高いアルコールのことを指します。サトウキビ由来の香りや味はほとんどなく、クリアな味わいをしています。

甲類焼酎は、アルコール度数が36度未満に調整された醸造アルコールで、缶チューハイなどのアルコールも同じです。

サトウキビは砂糖の原料です。サトウキビを搾った後のカスが原料になるということです。甲類焼酎は、梅酒を漬ける時に使うホワイトリカーだと思うとよいです。

香りがよくてスッキリさっぱりしている

開けて飲んでみると、これで1000円しないのか?と思いました。大吟醸酒なので香りがよくてスッキリさっぱりしている。大吟醸・吟醸ひやしぼり – しぼりたての香りをそのままにを見ると、このように書かれています。

大吟醸 ひやしぼり

フルーティーな香りと、みずみずしい口あたり。しっかりとした奥行きのある味わいの、ミディアムボディタイプの大吟醸酒です。仕込みに使用するお米はその都度厳選し、ラベル裏のQRコードで産地を開示しております。

仕込みに使う米が、安く提供するためその都度変わっているのだろうなと思います。酒は高くてうまいのは当たり前ですが、安く提供して「どうだい?」と聞いてくる酒造会社もあるのだなと、今年になって初めて知りました。

ところで、兵庫県伊丹市にある小西酒造はかなり歴史の長い酒造会社のようです。

清酒のはじまりを知る伊丹。清酒の歴史を醸す白雪。で知ることができます。

私はワインがそれほど好きではないので、1000円出してワインを買うなら、このお酒を買います。

NOTE

ハナマサで買える安い大吟醸酒は他にもありましたが、会津ほまれ純米大吟醸極とこの大吟醸ひやしぼりが特においしかったです。一通り試しましたが、他は私の好みではありませんでした。

まあ、味の好き好きは個人差があります。しかし、こんなお酒があると知ると、量販店でお酒を見る目が変わりますね。また、試してみます。

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麹は不思議で面白くて興味がつきない https://hakkou.kuni-naka.com/5195 Mon, 10 Jan 2022 00:52:18 +0000 https://hakkou.kuni-naka.com/?p=5195 麹についての解説本は、乳酸菌ほどありません。そのせいか麹は地味な存在なのですが。少し調べてみると、米麹がなぜ出来たのだろうか?とか、米麹を使った米味噌はちょっとした発明品だったんじゃないだろうか?とか、カビの中から麹菌だけ取出す技術は室町時代にあったなど、面白い話が次々出てきます。

麹

麹って面白いな

麹って面白いなと思ったのは、「麹のちから!」という本を読んでからです。それまで麹は、酒、味噌、醤油作りに使われるもの程度のことしか知りませんでした。

乳酸菌の話は、ヨーグルトのメーカーがたくさん情報提供をしてくれていますが、麹に関しては料理に関係する以外、本があまり出ていないのです。そのせいか地味な存在です。

この本を読んで最初に魅了されたのは、塩麹をつかった一夜漬けの話でした。一夜漬けはたいてい塩を振って重石をして漬けておくのですが、塩の代わりに塩麹を入れて漬けるのです。すると、麹の出す酵素と、麹が乳酸菌増殖に関係していて乳酸菌を3倍速く増やすので早く漬かるというのです。

私はこういう話が好きなので、一気に読みました。

「麹のちから!」を読んだ

それから麹に興味を持つようになりました。

麹ってアミラーゼだけしか作らないわけじゃないよね

そもそも、麹は日本酒造りに必要。ああそうか、麹はお米のデンプンを糖に変えるアミラーゼを作るんだなとは知っていました。しかし、味噌作りにも、醤油を作るときにも必要なのです。

それもそういうものだと知っていましたが、はて、なぜだろう?よく考えるとわからなくなります。麹はたんぱく質を分解するプロテアーゼも作るのですね。麹は動物と変わらない全ての食べ物を外から得る従属栄養の生物ですから、たんぱく質(というかアミノ酸)も必要なのです。

つい、菌は一つの酵素しかつくらないような気になってしまうのですが、それは利用させていただくヒトの都合のよい考えで、菌も生き物だと考えれば、そうではないことがわかります。

麹の酵素は主にアミラーゼとプロテアーゼ

米麹を使った米味噌はちょっとした発明だったのではないか?

味噌作りでは、米麹をたくさん入れると、甘味噌ができ、しかも早くできてしまうのです。何となく味噌は長期熟成のものこそよいのだと思いこんでいたのですが、どうやらそうともいえないようです。米麹をたくさん使った味噌はおいしいのです。

私が初めてそれを感じたのは、丸の内タニタ食堂の減塩みそをもらって初めて食べた時でした。20割麹というのは、大豆に対して2倍の量の米麹を使うという意味です。

ところで、味噌のルーツは豆味噌にあるようです。豆味噌は朝鮮半島にルーツがあり、奈良時代から作られるようになったそうです。豆味噌と米味噌が登場したのはいつ頃か?

豆味噌は大豆に麹菌を植えつけた豆麹を発酵させて味噌にするのです。米麹は使いません。

米麹をたくさん使うと味噌は早くできる

すると、でき上がるまで2年くらいかかってしまうのですね。ところが、米麹をたくさん使う江戸味噌(江戸時代に好まれたそうです)はわずか10日~20日程度ででき上がってしまう。

なんだこの違いは?と思ってしまいました。

それで、米麹を使った味噌とはちょっとした「発明」だったのではないかと思いました。豆味噌よりもずっと早くできて、しかも豆味噌とは違う風味でおいしいのですから。

とはいうものの、米麹は味噌作りのためにできたものではありません。米麹は、(きっと)酒造りに先に使われていたと思います。人間、いつでも快楽の方を優先するからです。酔っ払った方が面白くて気分がよいに決まっています。

米麹を味噌に使うと誰が考えたのだろう?

酒造りに使っていた米麹を味噌を作るためのスターターとするというアイディアがどのように生まれたのだろう?いろんな本をひっくり返していますが、まだ私は発見できていませんが、とても興味をもっています。

豆味噌と米味噌を比べると、それぞれにおいしいのは当然のこととして、米味噌の方が少し洗練された風味がします。米味噌の香りのよさは日本酒の香りのよさと関係があるでしょう。吟醸酒のフルーティーな香りは、(短鎖)脂肪酸とアルコールが結合したエステルによるものですが、米味噌にも同じような香りを感じることがあります。

米麹はいつからつかわれているのか?

ところで、米麹はいつから使われているんでしょう?

まず、江戸時代はどうだったのか調べると、本朝食鑑には、精米した米を蒸してカビを生やしてひっくり返して黄カビになるまで待つという内容が書かれていました。

江戸時代は、味噌について、仙台味噌や江戸味噌などちょっとしたブランドが確立されていたので、当たり前のように米麹が使われていました。

江戸時代麹はどのようにつくられていたのだろう?

改めて、日本で米麹が使われるようになったのはいつからだろうと調べて行くと、10世紀頃ではないかという話を読みました。平安時代のことになります。

日本で米麹が使われるようになったのは10世紀頃か?

その米麹は、蒸したお米に米麹を混ぜてつくります。なぜ蒸すんだろう?と思いますね。これは実験して確かめられたのですが、煮米、焼米、蒸米をそのまま放置しておくと、蒸米だけカビの発生が著しいのだそうです。

米麹をつくる時なぜ蒸米を使うのだろう?

麹(菌)は、蒸米に生えるカビの中にいますが、もちろん、麹(菌)だけがカビの中にいるわけではありません。そのままにしていると蒸米が腐ってしまいます。麹(菌)だけを取り出す作業が必要になります。また、この技術がないと、米麹を量産することができません。

カビの中から麹菌だけ取出す技術

どうすると思いますか?

カビを生やしたご飯に木灰をかけるのです。木灰は麹(菌)の生存によい影響を与える一方、他の菌は生きられなくなるので、最終的に麹(菌)だけを取り出すことが可能になりました。よくこんなこと発見したなと思います。しびれる話です。

麹(菌)だけを取り出すことができれば、蒸した米に振りかけて米麹を作ることができるようになります。

寒天培地を敷いたシャーレで菌を培養しながら単離する技術を作ったのは、ロベルト・コッホだそうですが、コッホの生きていた時代は、1843年~1910年です。

麹(菌)だけを取り出す技術は室町時代にできたそうですよ。

カビだらけのご飯から木灰を使って麹を単離する

NOTE

麹に興味を持ち、いろいろ調べ始めると、東京農大の醸造学科の教授だった小泉武夫先生の本や論文が出てきます。小泉先生の本は30年位前から読んでいましたが、麹に関係する本は読んでいなかったです。

小泉先生は、料理も好きだし、ゲテモノも食べるし、いろんな方と対談もしているし、たくさん本を書かれていますが、麹に関してとても深く考えて調べていて、本当に好きなことを追求される方なのだなと思いました。

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会津ほまれ純米大吟醸極(きわみ)は安くてうまくて驚いた https://hakkou.kuni-naka.com/5179 Wed, 05 Jan 2022 01:25:22 +0000 https://hakkou.kuni-naka.com/?p=5179 元旦の朝、日本酒を買ってなかったことを思いだし、会津ほまれ純米大吟醸酒極の4合ビンを買いました。1000円くらいでした。日本酒は大体おいしさと値段は比例していると思っているので冷やかし気分98%で買いました。しかし、香りがよくやわらかい味がしてとてもおいしかった。

会津ほまれ純米大吟醸極

元旦の朝会津ほまれ純米大吟醸酒極の4合ビンを買った

元旦の寒い朝、日の出とともに初詣に行きました。快晴でした。元旦の初詣はどこも混雑するので、ついうっかり午後に行ったら、長時間行列に並ぶことになります。寒さが応える年齢になっているので、今年は人のなるべくいない時間帯に初詣を済ませてしまう作戦です。

それでも、普段行かない神社に行くとすでに人が並んでいて、賽銭箱の前まで行くのに、20分くらいかかったかもしれません。都内でも気温が下がり、-2℃で霜柱が立っていました。

初詣を済ませたあと、そういえば、おせちを食べる時の日本酒を買っていなかったことを思い出し、早朝から開いている肉のハナマサへ。ここは安くてあまり聞いたことがない銘柄の日本酒も売ってます。コンビニにも日本酒はありますが、コンビニは基本的に高い。まあ、なんというか買い忘れたので、適当なもの、今日飲むだけだからワンカップでもいいや!くらいの気持ちで寄ったのです。

1000円+αで純米大吟醸酒?

そうすると、福島の会津ほまれ純米大吟醸酒極の4合ビンが1000円+αくらいでありました。純米吟醸じゃなくて純米大吟醸です。ラベルを見ると精米歩合は50%と書かれていました。

純米大吟醸ってとても高くて、今まで贈り物にしたことがあっても自分用に買った記憶はありません。せいぜい純米吟醸までです。冷やかし気分98%で買ってみました。日本酒はもちろん例外がありますが、大体おいしさと値段は比例しているものです。

でも、精米歩合が50%ですから吟醸香は楽しめるのではないかとちょっとした期待がありました。

家に帰って来て、冷凍庫に入れて小一時間冷やしておきました。ようやく妻が起きてきておせちの用意をしてくれて、最初の一杯を。

香りがよくやわらかい味がする

東北の酒は口に含むとガツンと強い印象の酒が多いのですが、この酒は柔らかい。そして辛口ではない。でも、安い酒と違ってとてもおいしい。もちろん、香りもよいです。なんだこれは?と思いました。

早速、会津ほまれのサイトを調べてみると純米大吟醸 極(きわみ) 720mlはこんな風に書かれていました。サイトを見ると「中口」と書いてありました。

ちょっと贅沢な家飲み用の純米大吟醸酒。

リーズナブルな価格帯でデイリー純米大吟醸酒としての提案です。味わいと価格のアンバランス感で驚きと感動を演出します。

山田錦等のお米に敢えてこだわらず、当蔵の技術力によってどれだけの品質の純米大吟醸酒が醸せるかにチャレンジした商品。

一般の加工米を掛け米として使用し価格をリーズナブルに抑えることによって、毎日飲めるデイリー純米大吟醸酒をコンセプトに造られました。

ラベルを見ると、米麹も原料のお米も国産と書かれていました。

まず、純米大吟醸がどんなお酒なのか復習しましょう。

純米大吟醸酒とは

国税庁のサイトにある日本酒(清酒)に関するものを読むと、純米大吟醸にはこのような決まりがあります。「純米」なので醸造用アルコールは使っていません。

純米大吟醸酒 精米歩合50%以下の白米、米麹及び水を原料として吟味して造った清酒で、
固有の香味及び色沢が特に良好なものです。

価格を安く供給できるのは、ラインマーカーを引いた「加工米を掛け米」の部分にありそうです。

掛け米

掛け米とは、お米とお酒のいい関係にこのように説明されていました。

清酒製造に必要な原料米は麹米,掛米と呼ばれる米に分類される.麹米は麹造りに使用するお米であり,掛米は醪(もろみ)を徐々に増量していくときに使われ,酒母や三段仕込みに加える蒸し米のことを指している.

大吟醸酒などの高級酒では,麹米だけでなく,掛米にも酒造好適米を用いている場合がある.たとえば山田錦100%のお酒とは,原料米すべてが山田錦を用いて造られたことを表している.

山田錦などの酒造好適米は,一般的に背丈が高く,収量性を上げようとすると倒伏しやすくなり栽培管理が難しい.そのため,原料米すべてを酒造好適米で造った清酒は高級酒となってしまう.

では,安価で広く消費されている清酒の原料米についての事情はどうなのだろう?

清酒の製造原価に占める米価の割合は60~70%に達するため,清酒業界では良質な原料米の安定した確保が重要である.一般的な清酒でも麹米には酒造好適米を用いる場合が多いが,原料米のおよそ70%を占める掛米には,一般主食用米が転用されていた.

上の文章では、主食用の米が使われると書かれていますが、会津ほまれ純米大吟醸酒極には、加工米を掛け米として使用と書かれています。

加工米とは

加工米とは、正式には加工用米というようです。東北農政局の用語解説に出ていました。清酒の原料米も元々加工用米です。しかし、清酒の原料となるお米は、高いイメージがあるのですが、これを読むと、なるほど食品加工用の原料になるので、加工用米は、全体的には高いものではないですね。

加工用米とは、お酒、加工米飯、味噌、米菓等、以下の用途に供給することを目的として生産される米穀であり、生産数量目標の外数として取り扱われます。(中略)

(1) 清酒、しょうちゅうその他米穀を原料とする酒類
(2) 加工米飯(肉又は魚、甲殻類、軟体動物その他の水棲動物の混入割合が3%以上(仕込時)である密封包装したレトルト米飯、冷凍米飯等であって、2ヶ月以上の保存に耐えられるもの)
(3) みそその他米穀を原料とする調味料
(4) 米穀粉、玄米粉その他これらに類するもの
(5) 米菓その他米穀を原料又は材料とする菓子
(6) 玄米茶、ビタミン強化米、甘酒、アルファ化米又はアルファ化米を原料とする製品、漬物もろみ、朝食シリアル、乳児食、ライス・スターチ、いり玄米スープ、包装もち、水産練製品及び米穀粉混入製品
(7) その他政策統括官が特に必要と認めた使途

きっと加工米からどれを選ぶかが杜氏さんの腕の見せ所なのでしょう。

このお酒の値段は、純米吟醸クラスかその下です。しかし、この酒はよいです。大手メーカーが一升1000円くらいで吟醸香を演出した安いパック酒をだしていますが、飲めば素人の私でも何か不自然さ(?)を感じるのです。

NOTE

最近、若い人達がワインに対抗して海外で日本酒を広げようとチャレンジしているので、小容量でとても高い日本酒やどぶろくも増えて来ました。

ワインは高いものが多いのですが、日本酒は手頃な値段であってほしいと思います。

余談ですが、会津ほまれのサイトをよく見ると、フリーアナウンサーの唐橋ユミさんのご実家なんですね。

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ジップロックを使った味噌の作り方 https://hakkou.kuni-naka.com/5168 Mon, 03 Jan 2022 04:42:42 +0000 https://hakkou.kuni-naka.com/?p=5168 味噌作りは時間がかかるので、ついたくさん作らなくてはと思ってしまいます。しかし、ジップロックのLサイズの袋を使えば、乾燥大豆を400g使って、約2kgの味噌を作ることができます。袋で仕込むと空気を抜くのも入れかえるのも楽です。もしカビが生えて来ても袋を切ってカビを取り除き、新しい袋に入れればよいだけです。とりあえず仕込んだ。

味噌

ジップロックのLサイズの袋に味噌を仕込む

いつも納豆を作っていますが、味噌はまだ作ったことがありません。味噌作りは大豆と塩と麹が材料なので、できあがりまで納豆よりはるかに時間がかかり、面倒くさいかもしれませんが、仕込みがそれほど大変ではないことは、何となくわかります。

でも、まだ作ったことがないのは、つい、たくさん作らなければいけないような気になっているからです。

うちには梅酒を仕込んだ時の専用のビンがありますが、それで味噌を仕込んでみようと思いながら1年経ってます。味噌は1キロ買ってきても1ヵ月くらいしか持ちません。だから、つい、一度に何キロも仕込むことを考えてしまうのです。

少量ビニール袋に仕込むと考えるとハードルが下がる

ところが、「ポリ袋で簡単、おいしい はじめてのみそ作り」を読むと密閉できるチャックの付いたジップロックの袋を使って仕込む方法が紹介されていました。ジップロックのLサイズの袋を使っています。

そういえば、ネットでも見たことあるなあと思いながら読みました。

毎月仕込むと面白いかも

本を読みながら、毎月1回仕込めば、でき上がった順番に自作味噌を食べて行けるなと思いました。麹歩合を変えて仕込むと味の違いがわかって面白いですね。

できあがり2キロの材料

出来上がりが約2キロになる材料はこの通り。

  • 国産大豆・・・400g
  • 米こうじ・・・800g
  • 塩・・・200g

大豆の2倍の麹を使います。20割麹の味噌です。米麹を多く使うと発酵が早く進んで味噌の出来上がりが早くなります。

まず大豆400gを蒸す

現在は(確か)4Lの圧力鍋を使っています。蒸し器を置いて蒸し器の底に水が少し出てくるくらいまで水を張ります。フタをして、火にかけてシューシューいい始めたら火を細くして20分加圧。(圧力鍋と重りによって違います)

蒸している間に米麹と塩をよく混ぜ合わせる

大豆を蒸している間に、米麹と塩をよく混ぜ合わせます。買って来た米麹は板状でなく最初からばらけていたのですぐに混ざりました。板状の米麹なら最初によく手でほぐす必要があります。

大豆が蒸し上がったら煮汁を取っておく

大豆が蒸し上がって圧力鍋のふたが開いたら、ざるに開けますが、その時に鍋の底にある煮汁を別な鍋に取っておきます。後で使います。

こんなになくてもよいですが、分量がわからないうちは多めに取っておいた方がよいです。ピントがあってなくてすみません。

大豆をつぶす

ざるに取った大豆を一度水で冷やした圧力鍋に戻します。圧力鍋は厚さがあるのでなかなか冷えません。それで一度水を入れて冷やします。水を捨てて、大豆を入れます。これをつぶしますが、最初は熱くて手でつぶせません。

オタマ、大きなスプーン、木べらなど、何か手近なものを使ってつぶし始めると、わりと早く冷えてきます。

手でグイグイつぶす

その後は、本にも書かれていましたが、手でつぶします。私は昭和世代なので気になりませんが、今どきは、人が手で握ったおにぎりを食べられない人もいるそうなので、気になる方は手袋をするとよいでしょう。

もちろん、フードプロセッサーを使うのもありだそうです。ただ、やわらかさの実感として蒸かしたじゃがいもをつぶすのと変わりないです。豆で小さいので確実につぶす必要がありますが。本には10分くらいかけてつぶすと書かれていました。

米麹と塩を加えて混ぜ込む

さて、ここに米麹と塩を混ぜたものを半量加えてよく全体を混ぜ込みます。何しろ20割麹なので、量が大豆の倍あります。結構かさがある。

ある程度なじんだら、さらに残りの半量を加えます。よく混ぜて粘土を練ったり、そば粉を練るみたいに練ります。写真を撮り忘れましたが、適当な量の煮汁を少しずつ足して練ります。

ちゃんと煮汁を足さないといけません。塩と米麹は乾燥しているものなので、大豆とうまく混ざりにくいのです。

味噌玉を作る

さて、よく混ぜるとこんな感じになります。これから味噌玉を作ります。

ハンバーグを作る時のように手のひらでキャッチボールのようにやりとりしながらペシペシ空気を抜いて玉を作ります。本当は、麺類を打つ時のように台にぶつけた方がよいのかも。

ジップロック(L)に詰めていく

その味噌玉をジップロック(L)に詰めていきます。安物は口が弱いのでジップロックを買ってきました。最初は要領がわからなかったのですが、要はピチピチに隙間なく詰めていくのです。固い容器と違うのは、詰めながらグイっと押すことができるところで。こうすると、空気を押し出すことができます。

詰め終わった完成図がこれ。本はもっとカッコイイ形になっていたけど、似たようなものだ。ただ、果たしてこれでよいのか微妙に不安が残る。

ジップロック仕込み味噌愛好家の記事を読んで、このあたりはもう少し書き足すような気がします。

大豆を煮るのと蒸すのとどちらがよいのだろう?

この本では、大豆を圧力鍋で煮ていました。大豆は水に浸けていると泡立つようになります。そのせいか、大豆を圧力鍋で煮る時は、落としぶたをしないと圧力を逃がす穴が詰まって危険だと書かれているのをよく見ます。

私は納豆をいつも作っていて納豆の作り方自作してみようという記事にまとめていますが、いつも圧力鍋で蒸しています。

誰でもできる手づくり味噌を読むとこのように書かれています。

蒸すと色が濃くなり味も濃くなる

蒸すと色が濃くなるのはよく経験しています。今使っている圧力鍋で、大豆を20分蒸した場合と30分蒸すのではだいぶ色が変わります。

蒸煮(じょうしゃ)―蒸すか煮るかでみその味や色がかわる

蒸したり煮たりすることを、まとめて「蒸煮」という。みその業界では、大豆を蒸してやわらかくすることを「蒸熟(じょうじゅく)」、大豆を煮てやわらかくすることを「煮熟(しゃじゅく)」という。日ごろ聞き慣れないことばだが、本書でもこの用語を使うことにする。

大豆は蒸煮(加熱)することで、組織がやわらかくなり、酵素の作用を受けやすくなる。また、十分な加熱によって生大豆の青臭みなどが取り除かれる一方、結果的に雑菌類を殺菌することにもなる。(中略)

煮熟と蒸熟の違い

鍋、羽釜などによる煮熟では、その間に大豆は熱湯に浸漬されるので、大豆中の色素や成分などが熱湯中に溶出することになる。その結果、大豆の煮あがりは淡い色になり、大豆の味も淡白に感じる。みその色合いも比較的淡色になる。

蒸熟では、大豆は熱湯に浸漬されることがないので、蒸熟中に大豆の色素や成分が失滅することは少ない。また、大豆は空気にふれた状態で加熱される。したがって、蒸しあがった大豆は、煮熟大豆に比べると色が濃くなる。大豆の味も濃く感じる。みその色合いも濃くなる。市販の「赤みそ」は、この蒸熟によるものが多い。

加圧して蒸煮する場合も、ほぼ同様である。

色重視なら煮て、味重視なら蒸すと考えておきましょう。

袋で仕込むと空気を抜くのも入れかえるのも楽

味噌を仕込むには、空気を抜くために味噌玉を作って、それを詰めながらつぶしていく作業が必要です。ジップロックの袋はそれなりに強いので、使いやすいと思います。

そして、最後にしっかり口を押さえて空気を抜いてジッパーを閉じればよいですね。あとではがれるように養生テープを貼っておくと完璧でしょう。

袋がふくらんできたりカビが生えてきても楽

発酵が進むと、二酸化炭素ができて袋がふくらんできますが、口を開けて空気を抜いて手でよくもんで形を整え、また口を閉じればよいだけです。

もし、カビが生えてきたら、袋の両脇を切ってカビを取り除いて、また新しい袋に詰め替えればよいと書かれていました。なるほど。

NOTE

味噌を仕込む時の問題は、どうやって容器から空気を抜くかということです。それで塩を入れた袋を上に置いたり工夫する必要があるのですが、ジップロックの袋なら、空気をきちんと追い出して、チャックを閉めれば完了なので、かなり手軽に感じます。

ただ、実際にやってみて、これでいいのかな?と疑問に思いました。先達さんの記事を探して読んで、改良点があれば改良して、記事を更新していきます。とりあえず仕込んだ。

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「微生物が未来を救う」を読んだ https://hakkou.kuni-naka.com/5155 Sat, 01 Jan 2022 04:54:18 +0000 https://hakkou.kuni-naka.com/?p=5155 小泉武夫さんの20年前の本「微生物が未来を救う」を見つけて借りて来ました。NHKで放映されていた課外授業ようこそ先輩という番組に合わせて作られた本です。発酵を知るために最初に読むとよい本です。この本が書かれた当時、小泉先生は、遺伝子工学を使って微生物を操作するより、自然の中から人類の生活に有効な働きをしてくれる微生物を探してくる方が早くて安全だと考えていたようです。

細菌

図書館で見つけた「微生物が未来を救う」

年末の最終日に図書館で見つけて借りて来ました。小泉先生の「微生物が未来を救う」という本です。タイトルが昔風(=かなり前の)のつけ方ですが、読んだことがなかったです。パラパラしてみると、後ろの方にハザカプラントが出ていました。

私も以前、生ゴミなど有機性廃棄物を発酵処理するハザカプラントという記事を書いています。懐かしい。奥付を見ると、2000年の本でした。

課外授業 ようこそ先輩は、NHKで1998年から2016年まで続いた番組でした。小泉先生が母校、福島県の小野町立小野新町小学校を訪ねて発酵の授業をされたのですが、その時に作られた本です。私はこの番組は時々見ていましたが、小泉先生の授業の回は見ていなかったです。

発酵や発酵食品を知るために最初に読むとよい本

授業はかなりインパクトがあって、しかも面白いです。発酵について知りたい人が最初に読む本としてよいと思いました。まず、小泉先生といえば、シュールストレンミング。

加熱していないニシンの缶詰、シュールストレンミングの強烈なにおいで生徒達の度肝を抜き、くさやとくさやの漬け汁で追い打ちをかける。世の中にはとんでもなく(腐ったような)臭い食べ物があることを知るのですが、そこで終わらすわけでないのが、さすが大学の先生です。

次に、本当に腐ったもののにおいをかがせます。腐ったサバと腐った牛乳が出てきます。そこで腐ったようなにおいがする食べ物と腐ったもののにおいを比較して、食べられる/食べられないを区別することができることを学ぶのです。

ヨーグルト、甘酒、納豆を自作すると発酵がグッと身近になる

そして、次に、自分たちで、ヨーグルト、甘酒、納豆を作ります。どれも数時間から1日か2日でできるものです。

それまでお店で買ってきたものを自分で作ると、意外とたやすく作れること、一度にたくさん作れること、そして何より自分でも作れることを学びます。これが一番大きなことでしょう。

私も、ヨーグルト、甘酒、納豆を作りますが、初めてそれぞれ作った時は毎回「自分でも作れるんだ」という気分を味わいます。この気分は発酵や発酵食品をぐっと身近なものにしてくれます。

バイオテクノロジーよりオーソドックスの方が早い

ところで、今の時代、細菌を遺伝子組み換えして何かの目的の物質を作らせることは珍しいことではなくなりました。この本は20年前の本なので、まだ、それが始まった頃の話です。

ただ、ここで語られる小泉先生の話は書き写しておきたいと思ったので、ほぼ自分用ですが、ここに書いておきます。

自然の中から人類の生活に有効な働きをしてくれる微生物を探してくる

小泉先生は、遺伝子工学を使って微生物を操作するより、今いる微生物からヒトの生活に有効な働きをしてくれるものを探して来る方がよいと考えられているのです。

今、バイオテクノロジーで遺伝子工学とか色々な難しいことをやっていますが、わたくしはむしろ、オーソドックスに自然の中から無限の性質を持った微生物を取り出してきて、人類の生活に有効な働きをしているものを見出した方がはるかに早いと思っているのです。現実に、遺伝子工学とかニューバイオテクノロジーとだとかの世界で、どれぐらいすごくなってきたかと見渡しても、現在はほとんどないに等しい。それはこれからの課題なのですよ。

そのニューバイオテクノロジーが叫ばれて一〇年になります。ところが我々の方は、そんな遺伝子工学的なことではなくて、本当に設備も金もない研究です。例えば色を消してしまう微生物だとか、すごく汚れた川の水や排水をきれいにしてくれる微生物とか、自然界にはもう、いっぱいいるわけです。

今、一番私が注目してこれからやろうと思っているのは、海の微生物ですね。これからはマリンバイオテクノロジーあたりが非常に面白い分野だと思います。海の中の微生物というのはまだほとんどやられていません。海は発酵微生物の宝庫じゃないかな、とわたくしは思っています。

(聞き手)バイオテクノロジーというのは、学問分野では注目の最先端ですよね。先生の研究というのはどちらかと言うと、地道な方なのですか?

全くそのとおり。我々人類というのは、まだ一五〇万年とか言っていますが、微生物というのは今から三〇億年前にすでにいるわけです。三〇億年間ずっと自然の中で生きてきて、いろんな進化を経たものや、あるいはそのままの形で生きているものもいます。 ふつう、そういうものを我々が人間の都合だけを考えて自由に変えて、つまり、微生物を家畜化しようという考えを持ちますが、私はそうではなくて、彼らと共存しようという考えから彼らの自然の力を利用させてもらいたいと考えるのです。

ですから、私はニューバイオテクノロジーで遺伝子工学とかはやらず、むしろ微生物のオーソドックスな分離を考えています。限りない微生物の可能性を探した方が早いと思っています。それが自然の摂理というものではないですかね。

例えば新しいテクニックで異なった微生物同士をつくり変え、新しい微生物をつくって、人間にとって有効だと考えても、果たして他の生物に対しては害を与えるかもしれないということは考えられます。そういう意味では、取り返しのつかないような微生物学はやってはいけないですよ。

土、 一グラムの中に、微生物は日本の人口の二〇倍もいるわけです。その中にはとんでもない性質を持ったものがいます。素晴らしい性質のものがいます。そういうものを分離した方が早いのです。人間がいたずらにいろんな新しい微生物を作り出すということが果たしてどうなのかなという感じを、私は持ちます。

最先端工学には、お金も設備も必要になります。ぼくらには何もいりません。学生に「山に行ってうんこ取ってこいと言うと、全国にバッと散らばる。 そして全国から集まる。 一人三〇袋ぐらい取ってくると、一〇人の学生がいれば、三〇〇ぐらいのうんこが集まる。

これは別に金もかからずにものすごいですね。あと必要なのは寒天。シャーレに寒天を溶かして、ブドウ糖などの栄養源を入れて固める。そこで分離して、その中からおもしろい性質のものを釣り上げれば、これはもうあっという間に結果が出ます。そういうことの方がぼくはいいですね。

NOTE

少し前に、酒造りが学べる大学・学部について調べました。バイオテクノロジーについて学べる大学はとても多いですが、実際に酒造りを学べる大学はわずかしかありません。その中でも小泉先生が教えていた東京農大は、カリキュラムからして酒造りに特化している珍しい大学でした。

従来からある技術を大切に継承させようとしているのです。

さらに、小泉武夫「食いしん坊発明家」はとても面白かったに書きましたが、小泉先生は、発明家でもあるのです。調べてみると、小泉先生が発明者に名を連ねている特許出願は70件ほどありました。

今あるものから工夫するのが、小泉先生の考えのベースになっているんだなと思いました。

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納豆の賞味期限切れはいつまで食べられる? https://hakkou.kuni-naka.com/5146 Fri, 31 Dec 2021 05:58:23 +0000 https://hakkou.kuni-naka.com/?p=5146 納豆の賞味期限は、製造日を含め12日とありました。意外と短い。では賞味期限切れの納豆はいつまで食べられるのか?10℃以下の冷蔵保存をしていると、賞味期限切れの日から30日経ってもお店に並べられた日よりおいしく感じられたそうです。少なくとも30日までは大丈夫。

納豆

納豆の賞味期限はどのくらいあるの?

納豆を自作している方なら、納豆は蒸したり茹でた大豆に納豆菌をふりかけ、24時間でできることはご存知でしょう。市販されている納豆も同じです。

私は賞味期限をほとんど気にしていないので、納豆の賞味期限がどのくらいあるのか知りませんでした。製造後何日までが賞味期限なんでしょう?

調べ始めるとなかなか出てきません。

製造日を含め12日

やっと見つけたのは、茨城県の納豆メーカー有限会社トーコーフーズのサイト。よくある質問 Q&Aにありました。「製造日を含め12日」だそうです。

賞味期限は何日ですか?

要冷蔵(10℃以下)の保管で糸引き納豆は「製造日を含め12日」、そぼろ納豆は「製造日を含め21日」に設定しております。 賞味期限を過ぎたからといって食べられなくなる訳ではありません。

美味しく食べられる期間としていますが、保管の温度や方法で劣化の速度が変わりますのでご注意ください。 又は、納豆は冷凍での保管が可能です。冷凍保管の場合は2か月位を目安にしてください。

文中に出てくるそぼろ納豆とは、たくあん漬けと納豆を混ぜたもののようですから、ここでは除外します。

納豆の賞味期限は冷蔵保存で12日とは案外短いものだなと思いました。納豆を作るメーカーはたくさんありますが、製造方法は似たようなものですから、冷蔵保存で12日は、メーカーごとにそれほど大きく違わないと思います。

しかし、製造後12日とは短い。感覚的にはもっと持つように思います。

では、次に、製造後12日を過ぎて、賞味期限切れになった納豆は、どのくらい食べられるのでしょう?

納豆の賞味期限切れはいつまで食べられるのか?

どこのスーパーでも見かけるタカノフーズのおかめ納豆。よく寄せられるご質問にはこのように書かれていました。

賞味期限が過ぎた納豆は食べられますか?

期限を過ぎると、風味が落ちてきたり臭いが強くなってしまいます。いずれも本来の風味は損なわれてしまうので、お召し上がり頂くことはお勧めできません。

メーカーは、「おいしくない」といわれたくないですから、このように賞味期限内に食べてくださいと回答するでしょう。

さて、念入りに論文を検索してみると、「賞味期限切れ」の食品は、いつまで食べられるかの中に納豆も出てくるのを発見しました。

賞味期限から30日経過したものが購入日より味がよい

官能検査を行ってみると、賞味期限から30日経ったら購入日よりおいしく感じられたと書かれていました。

納豆については賞味期限日から徐々に低い評価となっているものの、30日経過したときの評価は購入日より高いという結果になったため、30日経過した場合でもあまり食味の変化は見られないといえる。

官能検査の結果より、食パン・納豆・ヨーグルト・コーヒー牛乳・コーヒーは、賞味期限が切れて30 日後であっても、冷蔵保存しておけば期限が切れる前の状態とほぼ変わらないおいしさで食べられることがわかった。

冷蔵保存の温度は10℃以下でした。家庭にある冷蔵庫の庫内は5℃以下が普通です。

この表が載せられていました。

納豆について
購入日 期限日 5 日後 10 日後 14 日後 18 日後 22 日後 26 日後 30 日後
2.8 4.0 3.1 3.3 3.1 2.7 3.1 3.2 3.2
見た目 2.9 4.0 3.4 3.6 3.2 3.2 2.7 3.4 3.2
におい 3.2 4.1 3.4 3.7 3.4 3.4 3.3 3.6 3.4
酸味 3.0 4.4 4.1 4.1 3.9 3.7 3.3 3.4 3.6
口当たり 3.1 4.2 3.8 4.0 4.1 3.9 3.6 3.7 3.7
捨てるか捨てないか 1.6 2.0 1.7 1.7 1.7 1.6 1.5 1.7 1.5
総合評価 3.0 4.0 3.6 3.7 3.3 3.0 3.0 3.1 3.1
※「賞味期限切れ」の食品は、いつまで食べられるか

賞味期限が味のピークになっている

官能検査について、それぞれの項目につき5点満点です。購入日が意外にも低く、賞味期限(表では期限日)がピークであることから、期限日に合わせて製造されていることがわかります。

官能検査はこのような基準で行われています。

10 名のパネラー(官能検査する人)により、実施した。上記各々のサンプルを約10 g ずつ皿等にとり、少量口に含み、味、見た目、におい、酸味、口当たり、捨てるか捨てないか、総合評価の7 項目を、判定基準(購入時と比較して5 段階評価)

  • 5 点:良い(標準品と同等の品位が保たれている)
  • 4 点:やや良い(標準品よりやや劣るが、遜色のない品位が保たれている)
  • 3 点:ふつう(標準品より劣るが、商品として必要な品位が保たれている)
  • 2 点:やや悪い(標準品よりかなり劣り、商品として不向きである)
  • 1 点:悪い(標準品より著しく劣り、商品としての品位が失われている)

により上記9 段階を時期毎に評点させた。

製造後40日、賞味期限切れ30日後でも食べられる

以上のことから、納豆は製造後40日経っても食べられる。また、賞味期限切れ後30日経っても食べられることがわかりました。

ただし、冷蔵庫で保存すること

納豆は製造後加熱したりアルコールを加えて殺菌したりしていません。そのため、発酵は進みます。常温なら味が変わるのは早いです。

冷蔵庫に保存していることが条件です。もちろん、もっと温度が低い冷凍庫なら冷蔵保存より長持ちするでしょう。

NOTE

私は若い頃山小屋で働いていたことがあるのですが、基本的に、自分で荷揚げしてきたものを食べていました。買い物はオーナーがしてくれるのですが、定期的だとはいえ、もちろん頻繁ではありません。

そんな時は、なぜか納豆、パン、アジの干物などがやたら食べたくなりました。納豆は定期的に買って来てもらいストッカー(冷凍庫)に入れていましたが、発電機を回している時間しか通電しないので、だんだん色が変わり黒ずんできます。においもアンモニア臭がきつくなります。

しかし、案外、食べられるものです。メーカーの品質管理はかなりよいのです。

私は納豆を自作していますが、こちらは水分調整がなかなか難しくて、水分量が多いと傷みやすいです。完全に味がおかしくなる前に食べてしまいますが、味の変化は自分でわかるものです。自分の舌を信頼してもよいと思いますよ。

納豆の自作については、納豆の作り方自作してみようにまとめてあります。

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なぜ甘酒は飲む点滴といわれるのか? https://hakkou.kuni-naka.com/5099 Mon, 29 Nov 2021 21:27:42 +0000 https://hakkou.kuni-naka.com/?p=5099 甘酒はなぜ栄養豊富で飲む「点滴」と呼ばれるのだろう?甘酒と炊いたご飯の栄養成分を比べると、甘酒の方がぶどう糖が多いものの、その他の栄養成分はご飯の方が多い。さらに、米麹甘酒の文献を読むと、炭水化物がほとんどぶどう糖に変わっていて、「点滴」の意味がぶどう糖を補給することならその通りだと思います。しかし、遊離アミノ酸もビタミンの量も大したことはなく、栄養豊富とはいえないと思います。

甘酒

なぜ甘酒は飲む点滴といわれるのか?

以前から「甘酒は飲む点滴」といわれることに違和感を感じていました。甘酒は飲む点滴で栄養豊富だとあちこちで目にします。本当かな?とずっと思っています。甘酒が栄養豊富なら、麹で発酵させるとはいうものの、原料の「炊いたごはん」も栄養豊富ということにならないでしょうか?

この記事を書くためにいろいろ調べました。

飲む点滴といわれるのはどっちの甘酒か?

ところで甘酒には、2種類あります。酒粕から作る甘酒と、米麹から作る甘酒です。私にとっては、子供の頃から酒粕から作る甘酒の方が身近でした。月桂冠 公式ブログに酒粕甘酒(さけかすあまざけ)を作ってみた!という記事があります。酒粕をお湯に溶かして砂糖を加えます。これでは、飲む点滴にはなりません。

米麹から作る甘酒が飲む点滴

ということで、米麹から作る甘酒が飲む点滴といわれる甘酒です。私もよく作ります。甘酒をヨーグルティアでつくるに書いています。砂糖を溶かしたのとは違う、おだやかな甘さの甘酒ができます。

甘酒をヨーグルティアでつくる
甘酒は、米麹と、炊いたご飯と、水があればできます。ヨーグルティアなら60℃の保温ができるので簡単に作れます。麹1:ご飯1:水3の割合で、10~12時間保温します。ご飯と甘酒の栄養成分を比較すると、甘酒にごくごくわずかにビタミンB2が増える程...

日本食品標準成分表2020年版(八訂)で甘酒と炊いたご飯と比べてみる

では、食品データベースで、炊いたご飯と甘酒の栄養成分を比較してみましょう。甘酒は炊いたご飯に米麹と水を加えて保温して作ります。そのため、炊いたご飯よりも薄くなります。

下の表を見比べて下さい。ご飯と比べて甘酒の方がほとんどの数値が小さくなっています。

甘酒はぶどう糖が多い

ご飯と比べて甘酒は、ぶどう糖が多いです。多いといっても100g中の3g程度です。ぶどう糖は、デンプンが麹のアミラーゼで分解されてできたものです。それ以外に増えたのは葉酸くらいでしょうか。

食品100gあたりの栄養成分
食品成分 めし/精白米/
うるち米
甘酒
エネルギー 156kcal 76kcal
水分 60g 79.7g
たんぱく質 2.5g 1.7g
脂質 0.3g 0.1g
炭水化物 37.1g 18.3g
灰分 0.1g 0.2g
食塩相当量 0g 0.2g
ナトリウム 1mg 60mg
カリウム 29mg 14mg
カルシウム 3mg 3mg
マグネシウム 7mg 5mg
リン 34mg 21mg
0.1mg 0.1mg
亜鉛 0.6mg 0.3mg
0.1mg 0.05mg
マンガン 0.35mg 0.17mg
ヨウ素 0μg
セレン 1μg
クロム 0μg
モリブデン 30μg
レチノール ‘(0) ‘(0)
αーカロテン 0
βーカロテン 0
βークリプトキサンチン 0
βーカロテン当量 0 ‘(0)
レチノール活性当量 ‘(0) ‘(0)
ビタミンD ‘(0) ‘(0)
αートコフェロール Tr Tr
βートコフェロール Tr 0
γートコフェロール 0 0
δートコフェロール 0 0
ビタミンK ‘(0) 0
ビタミンB1 0.02mg 0.01mg
ビタミンB2 0.01mg 0.03mg
ナイアシン 0.2mg 0.2mg
ナイアシン当量 0.8mg (0.6)mg
ビタミンB6 0.02mg 0.02mg
ビタミンB12 ‘(0)
葉酸 3μg 8μg
パントテン酸 0.25mg 0
ビオチン 0.5μg
ビタミンC ‘(0) ‘(0)
水溶性食物繊維 0 0.1g
不溶性食物繊維 0.3g 0.3g
食物繊維総量 1.5g 0.4g
でんぷん 34.5g (13.4)g
ぶどう糖 0.1g (3.4)g
果糖 0 ‘(0)
ガラクトース ‘(0)
しょ糖 Tr ‘(0)
麦芽糖 0 (0.1)g
乳糖 ‘(0)
トレハロース ‘(0)
アルギニン 200mg ‘(120)mg
リシン 84mg ‘(59)mg
ヒスチジン 61mg ‘(38)mg
フェニルアラニン 130mg ‘(79)mg
チロシン 100mg ‘(76)mg
ロイシン 190mg ‘(130)mg
イソロイシン 93mg ‘(65)mg
メチオニン 61mg ‘(40)mg
バリン 140mg ‘(93)mg
アラニン 130mg ‘(93)mg
グリシン 110mg ‘(74)mg
プロリン 120mg ‘(75)mg
グルタミン酸 410mg ‘(260)mg
セリン 140mg ‘(92)mg
トレオニン 91mg ‘(68)mg
アスパラギン酸 220mg ‘(150)mg
トリプトファン 35mg ‘(24)mg
システイン 54mg ‘(33)mg
※日本食品標準成分表2020年版(八訂)

「点滴」の意味はブドウ糖が多いからか?

点滴っていままで数回しか打たれた経験がないので、どのようなものが入っているのかよく分かりません。調べてみると、日本薬局方ブドウ糖注射液というのがあるのです。単純に水にブドウ糖だけが加えられている注射液でした。

ブドウ糖を点滴することがあるので、甘酒はブドウ糖が多いので「飲む点滴」と言われたのでしょうか?

甘酒が栄養豊富なら炊いたご飯はもっと栄養豊富だよね?

しかし、やはり、栄養豊富というのは間違っていると思います。比べてみれば、炊いたご飯の方が栄養豊富です。甘酒が栄養豊富なら、炊いたご飯はもっと栄養豊富です。ご飯を栄養豊富だという人がいるでしょうか?

これはやはり、甘酒を「売りたい」人が考えた広告文か何かの断片なのでしょう。

米麹と水だけでつくった甘酒は成分が濃い

ところで、念入りに甘酒についての論文を探していると、麹甘酒に含まれる成分についてという論文が見つかりました。

これは、日本酒好きの方にはおなじみの八海山の甘酒、麹だけでつくったあまさけについての論文でした。麹だけでつくったあまさけは、米麹と水だけで作られています。炊いたお米は使っていません。

この論文を読むと、日本食品標準成分表2020年版(八訂)と違って、炭水化物のほとんどがぶどう糖なので、飲む「点滴」の意味を感じられるようになります。

論文に書かれていた栄養成分だけ表にしました。上の日本食品標準成分表2020年版(八訂)と比較すると、結構な違いがあります。水分が少ないので、「濃い目」の甘酒です。ドロッとしているのでしょう。

炭水化物のほとんどがぶどう糖

炭水化物は100mlあたり24.8gありますが、そのうち、23.2gがぶどう糖です。日本食品標準成分表2020年版(八訂)のデータとはかなり違います。これだけぶどう糖が多いと、上で書いた飲む「点滴」といわれても、そうかなと思うようになります。

麹だけでつくったあまさけ
100mlあたりの栄養成分
食品成分
エネルギー 105kcal
水分 73.8g
たんぱく質 1.3g
脂質 0.1g
炭水化物 24.8g
ナトリウム 1mg
カリウム 9.9mg
カルシウム 1.7mg
マグネシウム 1.4mg
リン 12.7mg
亜鉛 0.3mg
0.04mg
マンガン 0.14mg
ビタミンB1 0.06mg
ビタミンB2 0.47mg
ニコチン酸(B3) 0.26mg
ビタミンB6 0.04mg
葉酸(B9) 0.27mg
パントテン酸(B5) 0.03mg
ビオチン(B7) 1.01mg
食物繊維総量 0.3g
ぶどう糖 23.2g
麦芽糖 0.13g
トレハロース 0.45g
アルギニン 12.2mg
リシン 25.6mg
ヒスチジン 6.5mg
フェニルアラニン 27.6mg
チロシン 37.4mg
ロイシン 46.7mg
イソロイシン 24.9mg
メチオニン 13.1mg
バリン 34.9mg
アラニン 39.3mg
グリシン 19.6mg
プロリン 16.9mg
グルタミン酸 39.7mg
グルタミン 29.1mg
セリン 29.3mg
トレオニン 22.1mg
アスパラギン酸 35.7mg
アスパラギン 9.6mg
トリプトファン 11.3mg
システイン 5.9mg
※麹甘酒に含まれる成分について

オリゴ糖が含まれる

その他に12種類のオリゴ糖が含まれていると書かれていました。オリゴ糖は、オリゴ糖とはどのようなものかに書いています。米のデンプンが麹で分解される時にできたものです。

オリゴ糖は、腸内でビフィズス菌のエサになり、ビフィズス菌を増やすことができます。

わかりにくい記号はぶどう糖(あるいはガラクトース、果糖)同士の結合の仕方が書かれているのですが、ここでは知る必要がないので、飛ばしてください。

グルコースを主成分として,二糖であるマルトース (Glc(α1-4)Glc), イソマルトース (Glc(α1-6) Glc),ニゲロース (Glc(α1-3) Glc),コージビオース (Glc(α1-2) Glc),三糖としてイソマルトトリオース (Glc(α1-6) Glc (α1-6) Glc),パノース (Glc(α1-6)Glc(α1-4)Glc) と四糖としてマルトテトラオースの存在を推定している。

著者らもこれら二糖及び三糖の 6種類を検出し, さらに二糖としてトレハロース (Glc(α1-1)Glc) とソホロース (Glc(β1-2) Glc), ゲンチオビオース (Glc(β1-6) Glc),三糖としてラフィノース(Gal (α1-6) Glc (β1-2) Fru) と二種類の未知三糖を新たに検出し,麹甘酒には少なくとも 12種類のオリゴ糖が含まれることを明らかにした。

遊離アミノ酸

上の表でアルギニンからシステインまではアミノ酸です。アミノ酸でも甘酒に含まれるたんぱく質を分解して計測したのではなく、麹甘酒の上清を分析した、遊離アミノ酸の数値を入れています。遊離アミノ酸は、甘酒の中に単独で存在するアミノ酸のことです。

スポーツ飲料よりも多く全てのアミノ酸を含む

遊離アミノ酸総量としては各社のスポーツ飲料よりも多く,また全てのアミノ酸を含むなどアミノ酸の供給源として有用である。

ビタミンB群が含まれる

ビタミンは水溶性ビタミンのB群が含まれています。論文にはこのように書かれています。

麹甘酒はビタミンの種類が豊富と言われるようにビタミン B群のうち, B12を除く 7種類が検出された。

これらビタミンは精白米にも含まれるが,麹菌によって生産・増強される。

特に, B1(チアミン)については原料米の搗精,原料処理によって著しく減少するが出麹時には 160μg/mL麹程度生産されることが報告されている。ビタミン B群の中で B7(ビオチン)が比較的多く生産されているが, B7は麹菌のペルオキシソームで生合成されることが報告されている。

これだけ読むと、ビタミンB群が多いのかなと思いますが、ビタミンB群については、以前記事を書いています。これらの記事を読んでいただくと、麹甘酒で1日の必要量を満たしているのは、葉酸くらいだとおわかりになると思います。しかし、この葉酸の数値、単位が違っているかもしれません。違っているなら、ビタミンB群は含まれていても、全て多くありません。

ビオチン(B7)と葉酸(B9)の単位はmgではなくµgかも

表を見ると、ビオチン(B7)は、麹甘酒100ml中1.01mgあることになっていますが、これは、1.01mgではなく1.01μgの間違いではないかと思います。1.01mgは、1010μgになり、ビオチンは酵母に多く含まれるでビオチンが多く含まれる食品を紹介していますが、1位のパン酵母乾燥の3倍強の数値になってしまいます。

また、葉酸(B9)についても、食品分析表で出てくる単位は、たいていµgです。表の通り0.27mgなら、270μgとなり、あおのりの素干しや、乾燥そらまめに含まれる葉酸とほぼ同じ数値になりますが、ちょっとこれは考えにくい。

甘酒はぶどう糖が多く、ぶどう糖を補給するという意味でなら飲む「点滴」といえるかも

さて、麹甘酒に含まれる成分についてを読むと、米麹と水だけで作った甘酒は、炭水化物のほとんどがぶどう糖になっていて、ぶどう糖を補給するという意味で、飲む「点滴」と言えると思います。

遊離アミノ酸とビタミンについて、量として多いのか少ないのか、ぶどう糖とアミノ酸とビタミンからなる点滴がないのか調べたらありました。大塚製薬のビーフリード輸液です。組成を見ると、500ml中、ぶどう糖は約37.5g、総遊離アミノ酸量15g、ビタミンB1(チアミン)0.75mgです。

この数字と米麹甘酒の成分を比較してみます。

米麹甘酒の成分表は、100mlあたりなので、500mlにすると、ぶどう糖は116g、遊離アミノ酸は約2.4g、ビタミンB1(チアミン)0.3mgです。

点滴の成分は、設計して決められているので、この割合でなければ体の中でうまく働かないのだと考えます。すると、米麹甘酒は、ぶどう糖が突出して多く、遊離アミノ酸、ビタミンB1(チアミン)も足りないということになります。

やはり、甘酒は、ぶどう糖を補給するという意味で飲む「点滴」といえるものの、「栄養豊富」とは言えないと思います。

NOTE

麹甘酒に含まれる成分についてには、最後にこのように書かれていました。まったくその通りだなと思います。

インターネットや雑誌には,まことしやかな効果・ 効能が列挙されているが,科学的な根拠が乏しいものや全く示されていないケースも多い。今,甘酒は空前のブームと言われるが,ただ単なるブームで終わらせることなく,科学的根拠に墓づいた正しい情報を消費者に発信することで,この「伝統的な飲み物」の素晴らしさを伝えていきたい。

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