「麹親子の発酵はすごい!」を読んだ

ヨーグルトは何度も種として使い回せるのですが、麹はすぐに劣化してしまうそうです。海外でも麹に関心が持たれるようになっていますが、麹と同じアスペルギルスには猛毒を作るものがあり、麹を安易につくるのは注意する必要があります。麹には毒を作る遺伝子がありません。麹は善玉菌を増やす働きがあり、黒麹や白麹は、酪酸菌を増やしダイレクトに大腸の栄養になるので腸の健康に役立ちます。

麹

麹親子の発酵はすごい!を読みました。

著者の山元正博さんの本を読んで、以前、「麹のちから!」を読んだという記事を書いたことがあります。この本も麹の魅力満載ですが、息子さんで医師の山元文晴さんと共著であるところが以前との違いです。

本を読んで、是非覚えておきたいことを書いておきます。

麹は劣化しやすい

ヨーグルトは繰り返し培養できます。私もヨーグルティアを使っていろんなヨーグルトを種につくっていましたが、一番強いなと思ったのは、明治ブルガリアヨーグルトでした。繰り返し培養してもほとんど風味が変わらない印象があります。

そんな記憶があるので、麹も繰り返し培養できるのかと思ったら、こちらは、「劣化しやすい」のだそうです。

最近、欧米の方やオーストラリアの方などが麹に興味を持ち始め、私のところにも「話を聞きたい」「講演してほしい」という依頼がたくさん来ます。

ですが私は、麹は欧米の方々が現地で製造するより、日本人がきっちり管理して造ったものを購入し、使っていただく方が絶対によいと思っています。先に、日本の醸造家さんは専門の種麹屋から種麹を購入しているとお伝えしました。その理由として、「麹がとても劣化しやすい生き物だから」ということもあります。連続して麹を培養すると、麹が生産する酵素やクエン酸の量がどんどん減っていくんです。

そこで我々種麹屋は、来る日も来る日も種麹の胞子を一個ずつ丁寧にわけて、シャレーで別々に培養します。そして、その中でもっとも品質の良い麹を造るものを増殖させて、それを種麹として販売しているのです。毎日この作業をやっています。毎日毎日その繰り返し。いかにも勤勉な日本人らしいですよね(笑)。でもだからこそ、良い種麹が造れるのです。

麹を買って使った方がよいのは、麹が劣化しやすいほかにもう一つ理由があります。麹と似たカビには猛毒のものがあるからです。

アスペルギルスは病原菌の代表?

スーパーで買ってくる米麹は、蒸米に黄麹(Aspergillus oryzae アスペルギルス オリゼー)をつけたものですが、これは海外では病原菌扱いなのだそうです。

日本では生活に欠かせない「アスペルギルス」ですが、海外では病原菌の代表のように思われています。というのも、ダイオキシンの数十倍の毒性と言われる「アフラトキシン」という毒があるのですが、この「アフラトキシン」を出すカビの学名が「アスペルギルス フラバス」なのです。なんだか聞き覚えがありますね?(笑)

そうなんです。麹の学名にもすべて「アスペルギルス」と付いているため、海外の研究者から見ると「毒を持つカビじゃないか!そんなものを持ち込むな!安全性を証明しろ!」となってしまったんです。

しかも、その「アスペルギルス フラバス」と黄麹の「アスペルギルス オリゼー」が作るコロニーの形までもがとてもよく似ていて、人間の目では区別できないということもあり、かなり困りました。

もちろん、麹菌には毒などないのですが、最近の解析技術の向上により、そもそもカビ毒を出す遺伝子がないことがわかったそうです。

近年、ゲノム解析、遺伝子解析ができるようになってから、麹菌の遺伝子を突き詰めて研究したところ、『日本の麹菌には遺伝的にカビ毒を出す遺伝子がない』、ということがわかったのです。

通常カビというものは、人間の体に悪影響を及ぼす毒性を持っている物が多いのです。ところが麹菌には、まるで遺伝子変換をしたかのごとく、レギュラーターやイニシエーターなどの部分が欠損していたり、またはいわゆるカビ毒を出す遺伝子そのものがないのです。

少し前に、カビだらけのご飯から木灰を使って麹を単離するという記事を書きました。これは農大の小泉先生が行った実験を紹介した記事ですが、この中でも、小泉先生は、カビを侮らないようにと注意されています。

また、米麹をつくる時なぜ蒸米を使うのだろう?では、稲穂に生えるカビを稲麹として種麹とする話が出てきます。ネットを見ると、いろんな方が実践しているようですが、麹菌の他の菌も混ざってくるので注意が必要だなと思います。

麹は善玉菌と仲がよい

乳酸菌の場合、腸まで届くかとか、腸にしばらく定着するかどうか時々話題になりますが、麹についてそんな話は聞いたことがありません。気にしたこともありませんでした。醤油は火入れしているのが当たり前で、味噌はたいていの家庭では味噌汁にするので、殺菌されます。

麹を使った発酵食品を食べていると、腸内細菌の善玉菌を増やしてくれるそうです。

麹を使った発酵食品が体にいい、というのはなんとなく皆さんが知っている、感じていることだと思います。なぜ体によいのかというと、何しろ麹は菌ですから、腸内細菌にダイレクトに影響を及ぼします。そう、最近話題の腸内細菌ですね。最近では、腸が体の免疫力の6割くらいを司っているということがわかってきています。

そして麹と腸内細菌との関係の大きなポイントは、麹を好きな菌って、ほとんどが善玉菌なんです。これは、なぜなのかまだ解明できていないのですが、麹菌を好きで寄ってくる菌は、例えば納豆菌、酵母菌、放線菌、光合成細菌などの善玉菌ばかり。おかげで造る方は苦労するはめにもなるのですが、麹を好きな悪玉菌というのは聞いたことがありません。

だから麹を食べていると、お腹の中で善玉菌が増えて、当然便通がよくなる。それだけでなく、腸内環境もよくなり免疫力が上がる、というわけです。

ふと、麹を「生」で食べるとしたら・・・と考えると、米麹をそのまま食べる、甘酒を自分で作る、塩麹を自分で作る、きゅうりに味噌をつけて食べる、などということも日常的にしていた方がよいのかなと思いました。

麹を食べていると酪酸菌を増やす

黒麹はクエン酸をつくるのが特徴です。掃除用に粉のクエン酸を買って使う方が結構いらっしゃいますが、ドラッグストアや100均で売っているクエン酸は安いデンプンを黒麹に分解させて作られます。

もう一つ出てくる白麹は、黒麹の変異株で、やはりクエン酸を作ります。これらを食べていると、腸内で酪酸菌が増えるそうです。以下の話は黄麹について当てはまるのか?書かれていなかったのでわかりません。

黒麹と白麹の場合ですが、摂ると腸内環境が改善されて免疫力がアップすること、便秘を改善する効果があることは、もうすでに結果が出ています。(中略)

中でもとても大きなメリットは、酪酸菌(らくさんきん)を増やすことです。麹菌を食べると、大腸の中で酪酸菌が増えます。酪酸菌は、酢酸(さくさん)と酪酸というふたつの物質を作ります。どちらも酸なので腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌が育ったり活性化するのを抑制してくれます。酢酸はビフィズス菌からも作られますが、酪酸は酪酸菌からしか作れません。

そして酪酸は、大腸が必要とする栄養の約9割を占めるエネルギー源なのです。ですから、酪酸菌が増えれば酪酸がたくさん作られ、大腸の細胞が元気になる成分が増えることになります。

また、人の細胞は酸素が必要なので、大腸の細胞が元気だと腸からどんどん酸素を取り込むようになります。すると、腸の中には酸素が少ない状態になる。そうすると今度は、腸内細菌が活性化してきます。それも、酸素が少ない状態で活性化する、「嫌気性菌」という菌が増えてきます。

実は善玉菌と呼ばれるような菌たちは、この「嫌気性菌」が多いのです。逆に悪玉菌と呼ばれる菌たちは、酸素があってもなくても生きて行ける菌が多い。

なので、麹を摂って酪酸菌が酪酸をたくさん作る→腸の細胞に栄養がいきわたる→酸素が減る→善玉菌が増えて腸内環境が改善する、となるわけです。

酪酸菌について、コトバンク酪酸菌にはこのように書かれています。

炭水化物を分解して多量の酪酸を形成する細菌をいう。多くのクロストリジウム属Clostridium(バチルス科)の細菌が、比較的多量の酪酸をつくることから、クロストリジウム属を酪酸菌と呼称することも多い。代表種はC. butyricum(種名としての酪酸菌)である。

また、酪酸は、短鎖脂肪酸の一つです。短鎖脂肪酸とは、炭化水素鎖の端にカルボキシ基(-COOH)が付いた脂肪酸の長さが短いものです。特徴は「くさい」こと。酪酸のにおいはギンナンと足のにおいにたとえられます。

短鎖脂肪酸はクサイ
食用油のにおいをかいでも臭くありませんが、脂肪酸が短くなるとにおうようになります。ギンナンのにおい、靴下のにおい、汗臭いにおいなど短鎖脂肪酸が原因です。炭素数2から6の短鎖脂肪酸のにおいを調べました。納豆がくさいのは短鎖脂肪酸のせいだ昨日、

脂肪酸は脂肪を構成する部品なので、脂肪が分解されてできたのかなと思ったのですが、上の記事にあるように、炭水化物由来です。古くて新しいアセトン・ブタノール発酵の1ページ目に図が載せられていますが、グルコース(ブドウ糖)が解糖系で、ピルビン酸に分解され、その後アセチルCoAとなり、それが2個結合したアセトアセチルCoAから炭素数4の酪酸が作られます。

酢酸は、お酢の主成分ですが、炭素数2の短鎖脂肪酸です。

そして、酪酸が大腸が必要とするエネルギーとなるのは、酪酸に限らず短鎖脂肪酸は、大腸のエネルギーになります。こちらは、短鎖脂肪酸は大腸上皮細胞が増殖するための栄養だったという記事に詳しく書いています。

短鎖脂肪酸は大腸上皮細胞が増殖するための栄養だった
食物繊維をヒトは消化できませんが、かわりに腸内細菌が短鎖脂肪酸に分解します。短鎖脂肪酸は、大腸上皮細胞のもっとも重要なエネルギー源となり、血液から送られてくるものよりもずっと依存度が高いです。短鎖脂肪酸はクサイで短鎖脂肪酸のことを少し書きま

NOTE

以前、しばらくの間、毎日米麹を食べていたことがあります。なかなかお腹の調子はよかったです。米麹は特別おいしいものではないので、途中で飽きてしまったのですが、麹を食べていると酪酸菌を増やすという話を聞くと、また、食べようと思います。

果たして黄麹に黒麹や白麹みたいな効果があるのかわかりませんが、お腹の調子がよくなるのは間違いありません。

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酵素サプリや酵素ドリンクを説明するページを見ると、相変わらず酵素栄養学の話が多くてうんざりします。そこで、この記事では酵素不足を気にする人に1キロ1000円くらいで買える米麹を食べたらどうかという提案をします。 米麹は増やすことができて食べ...
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