炊飯器が壊れて保温したご飯が臭うようになりました。保温目的なので安いマイコン電子ジャーを買って来て保温したら、やはりご飯が臭くなり24時間持ちません。保温温度が関係しているようで、保温温度73℃でパッキンが内ブタに付いているIHジャーを買ったらあっけなく解決しました。
使っていたIH炊飯ジャーの内ブタのゴムが切れてからご飯がひどくにおうようになった
あるメーカーの電子ジャーを保温ジャー代わりに使おうと買ったところ、ご飯がひどくにおうので困りました。結局、一番安いIHジャーを買ったら解決できました。
もともと1995年製造のタイガーの5.5合炊きのIHジャーを使っていました。丈夫で壊れないのでそのまま昨年(2021年)まで使っていました。途中、内釜の塗装(?)がはがれたので、新しく内釜を一度購入した程度です。うちでは玄米を圧力鍋で炊き、ほぼ保温ジャーとして使っていました。たまに白米を食べる時だけ炊飯機能を使いました。
ところが、長年使っていたせいで、内ブタを止めるゴムが切れてきちんとしまらなくなりました。その途端に、保温していたご飯がひどくにおうようになりました。
ご飯がべちゃべちゃになり酸味がして納豆のような臭いがする
それまでご飯を入れておくと、だんだん色が変化してカピカピに乾燥していく感じだったのですが、ご飯の粘りがなくなり、ベチャベチャして少し酸味が出て納豆のようなにおいを発するようになりました。私は少々の変化だったら気にしないタイプなのですが、私でも食べるのをためらうほどのにおいです。
新しく買ったマイコン炊飯ジャーでも24時間経つと「におう」
それで、家電量販店に行き、ほとんど保温に使うだけなので、あるメーカーの昔からあるタイプのマイコン炊飯ジャーを安く買ってきました。これも5.5合炊きです。
やれやれと思って使い始めました。その時は、もらってきた白米があったので炊飯ジャーで何回か炊いて保温したところ、24時間経つと同じように「におう」ようになりました。つまり夜にご飯を炊いて、翌日の夜になるとクサい飯になっているのです。
なぜ新品を買ったのにこんなことになるのだろう?
取り扱い説明書を読むと、保温時間の保証は12時間までなのです。確かに12時間まではにおいません。
何となくですが、以前使っていたようなIH炊飯ジャーを買うと、きっと解決するように思いました・・・が、買ったばかりなので他に解決できる方法はないか探すことにしました。
保温温度が関係しているのではないか?
何しろ、昔から当たり前のように炊飯ジャーを使っていたので、何でこんなことになるのか不思議でしょうがないのです。理由が知りたいと思いました。
初めて自分で炊飯ジャーを買ったのは、大学に入学した1980年代初めの春のこと。生協で買いました。もちろん、まだIHジャーなんてなく、マイコン制御なんてものもない、単なる(電子)炊飯ジャーといわれていたものです。
それで、一度に2合か3合炊いて2日で食べるような使い方をしていました。たまに食べ忘れて3日くらい置くこともありましたが、どんどん乾燥していくだけで、こんなすえたにおいが出ることはなかったです。
なぜこんなににおいが出るのだろう?考えてみると、ずっと使っていたIHジャーはフタがきちんと閉まらなくなりました。密閉性が悪くなると、保温温度が下がるだろうと思いました。そして、空気の出入りがあるので、雑菌が入って来るだろう。
私は、納豆の作り方自作してみようという記事を書いているように定期的に納豆をつくっています。

そのおかげで100℃くらいでは死なない細菌も当たり前にいるのだと知っています。
それで、圧力鍋でご飯を炊いて炊飯ジャーに移すのはやめて、最初から炊飯ジャーでご飯を炊いてみましたが、やはり24時間後にはにおっていました。
これは、昔の炊飯ジャーに比べて、設定された保温温度が低いのだろうと思うようになりました。
クエン酸を使って手入れすると一時的によくなる
それで、メーカーの窓口に問い合わせてみました。すると、水にクエン酸を入れて炊飯モードにしてみてくださいと言われました。これは通常のお手入れ方法だそうです。確かに一時的によくなりました。しかし、少し経つとまた同じにおいがしてきます。そして、メーカーからは12時間以上の保温はおすすめできませんと回答が来ました。
その後、保証期間内でもあるし、チェックしてくれることになり、メーカーに送りました。保温温度が若干低かったそうで、調整してくれました。
返ってきた当初は24時間持ち、やれやれ解決かと思ったのですが、数回炊いて保温すると、またにおいがしてきました。炊飯ジャーは、炊飯する時に蒸気を逃すために穴があります。保温状態になり、空気の出入りがあればそこから細菌は入って来るでしょう。
保温温度73℃のIHジャーを買ったらあっけなく解決した
これで、あきらめがついて、IHジャーを買うことにしました。今度は保温時間を重視して、各メーカーのカタログを見比べて象印のIHジャーを買いました。
この時は量販店の店頭価格よりアマゾンが安かったのでアマゾンで買いました。
使い始めたら、全く問題がありません。な~んだというくらいあっけなかったです。保温温度は高めと低めを選べますが、当然、高めを選んでいます。73℃で保温するそうです。
なぜこんな違いがあるのか理由が知りたい
さて、その後、炊飯器での保温について論文を探しました。73℃と設定された保温温度には根拠があるに決まっているからです。
ネットで探すと、炊飯器での保温中に米飯を変敗させる細菌の推定という論文が見つかりました。
同じ機種でも保温したご飯がくさくなったりならなかったりする
この実験で興味深いのは、同じ機種の炊飯器を使って行われているところです。同じ機種でも保温したご飯がおかしくなるのとならないのがあるのです。
同じ機種の炊飯器を複数機体用いて保温試験を行い,常に保温中に変敗が生じる炊飯器(Spoilage rice cooker, SR)と変敗が生じない炊飯器(Normal rice cooker,NR)の二種を選抜した。
spoilage とは、「腐敗」という意味です。
ただし、この炊飯器のメーカーや設定された保温温度については何も書かれていません。
くさくなったご飯には細菌が繁殖している
そして、同じ機種の炊飯器を使ってご飯を炊いて保温すると、その後ご飯に棲む菌の数は、ずいぶん差があるのです。
NRでは,保温を72時間継続しても菌数は検出限界以下(<1.0×101) であった。一方, SRでは0時間後で菌数は3.6×102colony form unite (cfu) /g であり, 24時間後には1.6×104cfu/ gと保温開始時の約100倍に達していた。
さらに保温を継続することにより菌数は増加し, 72時間後には4.6×106cfu/ gにまで増加した。
colony form unite (cfu)とは何だろうと思いますが、これは株式会社衛生微生物研究センターのCFUって何ですか?という記事がとてもわかりやすかったです。
「コロニーはもともと1個の生菌から増殖してできたものだ」という考え方をもとに、コロニーの数=生菌の数と考えています。
CFUはColony forming unit(コロニー形成単位)の略で、生菌数(生きている菌の数)を表す単位です。
「個」ではなく「CFU」という単位を用いる理由を下記に説明します。
生菌数を測定する一つの方法として、試験液を接種・培養した培地に形成された集落数を数える方法(希釈平板培養法)があります。
1個の集落はもともと1個の生菌が増殖し、形成されたものとみなし、「集落数=生菌数」とするのがこの方法の基本的な考え方です。
しかし、厳密には集落が必ずしも1個の生菌から形成されたものとは限らないことから、この方法で測定した生菌数を表す場合に、CFUを使うことが一般的に行われます。
細菌は熱に強い芽胞菌で内蓋のパッキンやその隙間などにいる
一体、ご飯を腐らせる細菌はどこにいるのだろう?探すと、内蓋のパッキンやその隙間などから高頻度に検出されたそうです。そして、この細菌は納豆菌のように芽胞(がほう)をつくり、100℃以上でも耐えられるのです。
保温時の変敗は繰り返し生じることから,炊飯器内のいずれかの箇所で変敗原因細菌が残存している可能性が予想された。そこで,炊飯器の内部の拭き取り試験を行った。
保温時には16か所中11か所から細菌が検出された。また,洗浄後にも16か所中10か所から細菌が検出された。特に内蓋のパッキンやその隙間などから高頻度に検出された。これらの部位は保温時に水蒸気が凝縮した水分が特に溜まりやすい部分であった。通常の洗浄ではこれらの細菌を除去することは難しいと考えられた。
米飯は100℃以上で炊き上げることからほぼすべての細菌は死滅してしまうことからも,耐熱性芽胞細菌が関与していることが考えられた。耐熱性芽胞であれば,洗浄や炊飯時の熱では死滅せず,休眠することが可能である。つまり,炊飯後の保温中に芽胞が発芽し,栄養細胞へと変化するため,変敗が繰り返し生じると考えられた。
芽胞菌は、熱・乾燥・消毒に耐える
芽胞菌については、名古屋学芸大学のサイトに加熱しても死なない細菌「芽胞(がほう)菌」という画入りのわかりやすい説明がありました。
栄養素が不足したり環境が悪化すると菌体内に芽胞を形成します。そして、芽胞は熱だけではなく乾燥や消毒剤にも耐えますので厳しい環境の中で生き延び、生育の適した環境になるのを待ちます。水分、温度、栄養などの生育環境が整うと、“発芽”し、“栄養細胞”となって増殖をしていきます。(中略)
芽胞を殺菌するには乾燥状態では180℃で20分程度、湿熱状態では高温高圧釜(レトルト)での121℃で15~20分の加熱が必要です。
このように芽胞菌を殺菌するのはなかなか大変なことになります。この実験で、炊飯器のご飯を腐らせる菌はG.thermoleovoransであると特定されました。
G.thermoleovoransが犯人だ
G.thermoleovoransは、炊飯器の保温時に増えてくるので、高温細菌と呼ばれます。
本研究により,耐熱性芽胞を形成する好熱性細菌であるG.thermoleovoransが米飯の変敗に関与していたことを明らかにした。これまで米飯をはじめとするデンプンを含む加工食品の汚染は,中温域(30-37℃付近)で良好な生育を示す,Bacillus属細菌によるものが多く報告されている。
米飯保温中の変敗に関与する細菌としてこれまでにB.stearothermophilusが報告されているがG.thermoleovoransの報告例はこれが初めてとなる。
もともとお米にいるわけではないみたい
お米を保温中にこのような問題に悩まされると、一体この菌はどこから入ってくるのだろうと思います。私も、相当回数お米をといで炊いてみましたが、少ない回数と変わりはありませんでした。
炊飯器への混入経路を明らかにするために,これまでGeobacillus属細菌の分離報告例のある糠をはじめとして,精米後の白米などから分離を試みたが,分離には至らなかった。
さて、この G.thermoleovoransですが、Geobacillus stearothemophilusのことだそうです。
常温では増殖しない
早速、どんな菌か調べてみると、高温細菌についてという記事が出てきました。
高温細菌は「常温で増殖しない」のが特徴です。40℃くらいが適温の納豆菌よりも増殖に適した温度が高いのです。においにうんざりしていたので、ご飯が炊きあがって夕食を食べてから一時保温スイッチを切っていました。そうすると、常温になるので確かにくさくなりませんでした。
高温細菌は、一般的に55℃以上の温度で増殖する細菌を指す。(中略)高温細菌は常温では増殖しないので、普段は問題となることは少ないが、ホットベンダーによる50~60℃で加温販売されるコーヒー缶詰やしるこ缶詰などで問題となった事例がある。
増殖温度の最高が72℃
また、主な高温細菌の増殖温度範囲の表が載せられていました。Geobacillus stearothemophilusだけ切り出しました。至適温度は書かれていませんでしたが、最高が72℃。なるほど私が買ったIHジャーの73℃の保温温度の根拠はこれかもしれません。
菌種 | 最低 | 至適 | 最高 |
Geobacillus stearothermophilus | 30℃ | – | 72℃ |
もし、私のように保温したご飯のにおいに悩まされて炊飯器を買い換えるなら、この保温温度を参考に、カタログを見比べて保温時間が長いものを買うのがよいと思います。
NOTE
少し前まで使っていたマイコン炊飯ジャーは、まだ処分していないのですが、この記事を書くために、象印のIHジャーと見比べていると、違いに気がつきました。
内ブタにパッキンが付いていてパッキンも洗える炊飯ジャーを選択する
炊飯器には、保温のため内ブタに必ずパッキンが付いています。象印のIHジャーの内ブタにはパッキンが一体化されて付いているのですが、某社のマイコン炊飯ジャーの内ブタにはパッキンが付いていませんでした。なぜか、ガチャンと閉める外ブタの裏にパッキンが付いています。
上で紹介した論文には、原因菌が、「内蓋のパッキンやその隙間などから高頻度に検出された」と書かれていました。外ブタの裏にパッキンが付いていると、当然、洗うことはできません。せいぜい、(アルコールなどで)拭くことぐらいしかできません。G.thermoleovorans は少々消毒したくらいでは死なない菌ですから、ここが格好の棲み家になってしまいます。
パッキンの取り付け方法の違いは、きっとコストが関係しているのだと思います。
炊飯器を買うときは、お店でよく見て、パッキンが完全に取り外せて洗えるものを選ぶようにしてください。保温温度とパッキンをチェックすれば私のようなことにはならないと思います。