麹は不思議で面白くて興味がつきない

麹についての解説本は、乳酸菌ほどありません。そのせいか麹は地味な存在なのですが。少し調べてみると、米麹がなぜ出来たのだろうか?とか、米麹を使った米味噌はちょっとした発明品だったんじゃないだろうか?とか、カビの中から麹菌だけ取出す技術は室町時代にあったなど、面白い話が次々出てきます。

麹

麹って面白いな

麹って面白いなと思ったのは、「麹のちから!」という本を読んでからです。それまで麹は、酒、味噌、醤油作りに使われるもの程度のことしか知りませんでした。

乳酸菌の話は、ヨーグルトのメーカーがたくさん情報提供をしてくれていますが、麹に関しては料理に関係する以外、本があまり出ていないのです。そのせいか地味な存在です。

この本を読んで最初に魅了されたのは、塩麹をつかった一夜漬けの話でした。一夜漬けはたいてい塩を振って重石をして漬けておくのですが、塩の代わりに塩麹を入れて漬けるのです。すると、麹の出す酵素と、麹が乳酸菌増殖に関係していて乳酸菌を3倍速く増やすので早く漬かるというのです。

私はこういう話が好きなので、一気に読みました。

「麹のちから!」を読んだ

それから麹に興味を持つようになりました。

麹ってアミラーゼだけしか作らないわけじゃないよね

そもそも、麹は日本酒造りに必要。ああそうか、麹はお米のデンプンを糖に変えるアミラーゼを作るんだなとは知っていました。しかし、味噌作りにも、醤油を作るときにも必要なのです。

それもそういうものだと知っていましたが、はて、なぜだろう?よく考えるとわからなくなります。麹はたんぱく質を分解するプロテアーゼも作るのですね。麹は動物と変わらない全ての食べ物を外から得る従属栄養の生物ですから、たんぱく質(というかアミノ酸)も必要なのです。

つい、菌は一つの酵素しかつくらないような気になってしまうのですが、それは利用させていただくヒトの都合のよい考えで、菌も生き物だと考えれば、そうではないことがわかります。

麹の酵素は主にアミラーゼとプロテアーゼ

米麹を使った米味噌はちょっとした発明だったのではないか?

味噌作りでは、米麹をたくさん入れると、甘味噌ができ、しかも早くできてしまうのです。何となく味噌は長期熟成のものこそよいのだと思いこんでいたのですが、どうやらそうともいえないようです。米麹をたくさん使った味噌はおいしいのです。

私が初めてそれを感じたのは、丸の内タニタ食堂の減塩みそをもらって初めて食べた時でした。20割麹というのは、大豆に対して2倍の量の米麹を使うという意味です。

ところで、味噌のルーツは豆味噌にあるようです。豆味噌は朝鮮半島にルーツがあり、奈良時代から作られるようになったそうです。豆味噌と米味噌が登場したのはいつ頃か?

豆味噌は大豆に麹菌を植えつけた豆麹を発酵させて味噌にするのです。米麹は使いません。

米麹をたくさん使うと味噌は早くできる

すると、でき上がるまで2年くらいかかってしまうのですね。ところが、米麹をたくさん使う江戸味噌(江戸時代に好まれたそうです)はわずか10日~20日程度ででき上がってしまう。

なんだこの違いは?と思ってしまいました。

それで、米麹を使った味噌とはちょっとした「発明」だったのではないかと思いました。豆味噌よりもずっと早くできて、しかも豆味噌とは違う風味でおいしいのですから。

とはいうものの、米麹は味噌作りのためにできたものではありません。米麹は、(きっと)酒造りに先に使われていたと思います。人間、いつでも快楽の方を優先するからです。酔っ払った方が面白くて気分がよいに決まっています。

米麹を味噌に使うと誰が考えたのだろう?

酒造りに使っていた米麹を味噌を作るためのスターターとするというアイディアがどのように生まれたのだろう?いろんな本をひっくり返していますが、まだ私は発見できていませんが、とても興味をもっています。

豆味噌と米味噌を比べると、それぞれにおいしいのは当然のこととして、米味噌の方が少し洗練された風味がします。米味噌の香りのよさは日本酒の香りのよさと関係があるでしょう。吟醸酒のフルーティーな香りは、(短鎖)脂肪酸とアルコールが結合したエステルによるものですが、米味噌にも同じような香りを感じることがあります。

米麹はいつからつかわれているのか?

ところで、米麹はいつから使われているんでしょう?

まず、江戸時代はどうだったのか調べると、本朝食鑑には、精米した米を蒸してカビを生やしてひっくり返して黄カビになるまで待つという内容が書かれていました。

江戸時代は、味噌について、仙台味噌や江戸味噌などちょっとしたブランドが確立されていたので、当たり前のように米麹が使われていました。

江戸時代麹はどのようにつくられていたのだろう?

改めて、日本で米麹が使われるようになったのはいつからだろうと調べて行くと、10世紀頃ではないかという話を読みました。平安時代のことになります。

日本で米麹が使われるようになったのは10世紀頃か?

その米麹は、蒸したお米に米麹を混ぜてつくります。なぜ蒸すんだろう?と思いますね。これは実験して確かめられたのですが、煮米、焼米、蒸米をそのまま放置しておくと、蒸米だけカビの発生が著しいのだそうです。

米麹をつくる時なぜ蒸米を使うのだろう?

麹(菌)は、蒸米に生えるカビの中にいますが、もちろん、麹(菌)だけがカビの中にいるわけではありません。そのままにしていると蒸米が腐ってしまいます。麹(菌)だけを取り出す作業が必要になります。また、この技術がないと、米麹を量産することができません。

カビの中から麹菌だけ取出す技術

どうすると思いますか?

カビを生やしたご飯に木灰をかけるのです。木灰は麹(菌)の生存によい影響を与える一方、他の菌は生きられなくなるので、最終的に麹(菌)だけを取り出すことが可能になりました。よくこんなこと発見したなと思います。しびれる話です。

麹(菌)だけを取り出すことができれば、蒸した米に振りかけて米麹を作ることができるようになります。

寒天培地を敷いたシャーレで菌を培養しながら単離する技術を作ったのは、ロベルト・コッホだそうですが、コッホの生きていた時代は、1843年~1910年です。

麹(菌)だけを取り出す技術は室町時代にできたそうですよ。

カビだらけのご飯から木灰を使って麹を単離する

NOTE

麹に興味を持ち、いろいろ調べ始めると、東京農大の醸造学科の教授だった小泉武夫先生の本や論文が出てきます。小泉先生の本は30年位前から読んでいましたが、麹に関係する本は読んでいなかったです。

小泉先生は、料理も好きだし、ゲテモノも食べるし、いろんな方と対談もしているし、たくさん本を書かれていますが、麹に関してとても深く考えて調べていて、本当に好きなことを追求される方なのだなと思いました。

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