塩麹がブームになってからずいぶん経ちますが、スーパーに行くと市販の塩麹がいつも並んでいますから定番の商品になったのでしょう。ところで、麹がつくる酵素ってどんな酵素だかご存知ですか?同じ麹でもつくるときの温度によって作る酵素の特性が変わるとは知りませんでした。
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麹の酵素は主に二つある
麹の酵素はアミラーゼとプロテアーゼです。
アミラーゼは、デンプンを分解して糖に変える。
プロテアーゼは、タンパク質を分解してアミノ酸に変える。
麹菌はどのような種類でもこの二つの酵素をつくりますが、麹菌の種類と生育条件によって二つの酵素の生産量にちがいが出てきます。
たとえば日本酒製造の時には、蒸した酒米を糖化するためにアミラーゼの生産能力が高い麹菌を使います。また、醤油や味噌醸造のためには、プロテアーゼの生産能力が高い麹菌を使います。
また、同じ麹菌でもアミラーゼとプロテアーゼを生産するのは温度条件によって変わります。一定の温度以上の条件下で生育したものはアミラーゼが多くなり、一定の温度以下の条件で生育したものは、プロテアーゼが多くなります。
そのため、酒造用麹など、デンプンを糖化する目的の麹の場合は、糖化酵素の能力の高い麹菌を使って、一定の温度以上の条件で麹をつくります。これを「高温製麹」といいます。
一方、味噌、醤油などタンパク質を分解することを目的とする場合には、タンパク質分解酵素の能力の高い麹菌を使って、一定の温度以下の条件で麹をつくります。これを「低温製麹」といいます。
麹の4つの種類
麹菌は大まかに分けて4種類あります。黄麹、醤油麹、黒麹菌は、日本醸造学会によって2006年に国菌と認定されました。
黄麹菌Aspergillus oryzae
日本の麹菌の代表です。味噌、醤油、日本酒、焼酎、酢、味醂などに幅広く使われています。成熟した麹菌の胞子の色は、黄色になります。アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)と呼ばれます。
胞子の色は、製麹操作によって白~黄~黄緑~褐色といろいろな段階の色相を示します。
酵素特性の違いによって、アミラーゼ力価の高い麹は酒造用に、プロテアーゼ力価の高いものは味噌用、醤油用に使われます。
また、黄麹菌の醤油用麹は、醤油用麹アスペルギルス・ソヤ(Aspergillus sojae)と区別するため、特にオリゼータイプの醤油麹といわれることがあります。
醤油麹菌Aspergillus sojae
sojaeは大豆のことです。タンパク質を分解する能力が高く、おもに醤油醸造用として使われます。この仲間の菌種にたまり醤油用のアスペルギルス・タマリ(Aspergillus Tamarii)がありますが、いまではほとんど使われていません。
泡盛黒麹菌Aspergillus awamori/luchuensis
沖縄の泡盛をつくるのに使用される黒色の麹です。その名の通り、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)と呼ばれます。全体が真っ黒で、噛むとクエン酸を強く感じます。沖縄にどのように黒麹が入って来たのかその経緯は分かっていませんが、沖縄独特の麹です。
九州の焼酎(いも、麦など)には焼酎用白麹を使います。これは泡盛黒麹菌の白色変異株で、白~灰白色になる麹菌です。製造した焼酎の味がまろやかになるのが特徴です。発見者の河内源一郎氏にちなんで、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)と名づけられました。
クエン酸がたくさんできるので、暑い地方でも腐らせずに酒が造れます。
紅麹菌Monascus purpureus
中国の紅酒をつくる麹で、もともと日本にはなかったものです。糖化酵素やタンパク質分解酵素は黄麹菌と同種のものを生産し、日本酒や味噌を作ることができます。調べたら紅麹みそってありました。紅麹には特有の機能性があるのだそうです。
また、一方で天然色素(紅麹色素)も有名で、カニかまぼこの赤い色は、紅麹の色だそうです。
甘酒を造るときは温度管理をきっちりと
麹はデンプンを分解することもタンパク質を分解することもできることが分かりました。
市販の乾燥麹では、例えばよく知られている伊勢惣 みやここうじがあります。
パッケージを見ると味噌、甘酒、べったら漬け、こうじ漬けなど何でも使えますと書かれています。味噌を作るにはプロテアーゼが必要だし、甘酒を作るならアミラーゼが必要です。
酵素がアミラーゼしかなければ温度管理は割とアバウトにできるのでしょうが、温度条件によってはプロテアーゼも働くようになると、温度管理を厳密にしておかないとおいしくないものができそうです。
甘酒は60℃を維持して12時間
クックパッドで甘酒をつくるレシピを探したら、ヨーグルティアで作っている方がいらっしゃいました。



炊いたご飯でつくる方法も書かれています。これなら作りやすいです。そして、ヨーグルティアなら60℃で保温できます。アミラーゼの活性は60℃あたりが最適です。
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