クエン酸は黒麹からつくられるってご存知ですか?

クエン酸と聞くとレモンを思い出します。実際レモンにはクエン酸がたくさん含まれています。しかし、市販されているクエン酸は黒麹を使った発酵法で製造されています。

レモン

洗剤がわりにクエン酸が使われるようになった

何年か前から、掃除に強力な洗剤でなく重曹やクエン酸を使う人が増えているようです。私もなるべく洗剤を使わないようにしている一人です。

洗剤は手荒れがするのと、使わなくてよい時も無駄に使っているような気がして、水だけ余計に汚してはいかんなと思っています。

きっかけになったのは、プロフェッショナル仕事の流儀2015年6月1日放送、「心を込めて、当たり前の日常を」を見てからです。

羽田空港で20年清掃作業を続けている新津春子さんが使っている洗剤は必要最小限のものを薄めて使っていて、しかも強い洗剤は使っていませんでした。これは見習わねばと思ったのです。

クエン酸ってすごく酸っぱい

ところで、クエン酸には思い出があります。小学生の頃、理科教室に通っていたのですが、「ジュースをつくろう」というテーマの日にクエン酸を使いました。

最初にクエン酸の顔が曲がりそうになるものすごい酸っぱさを体験し、どのくらい砂糖を入れたら飲めるようになるのかという実験をしました。クエン酸2g(?)に確か40gくらい入れて飲めるようになった記憶があります。

クエン酸はデンプンを黒麹菌で発酵させてつくる

ジュースの話を書きましたが、クエン酸は、実際に清涼飲料水や食品の酸味料、保存料として使われます。レモンをはじめ柑橘類に多く含まれ、爽やかですが強い酸味を持っています。梅干しの酸っぱさもクエン酸によるものです。

もともと柑橘類に含まれているクエン酸。しかし、今はデンプンを発酵させて作っています。

クエン酸製造には黒麹を使った発酵法が使われています。黒麹というといも焼酎を思い出した方、お酒好きですね。当たりです。関係があります。

クエン酸を検索していたら、わが国最大のクエン酸メーカー九州化工株式会社のサイトがでてきました。でん粉工場で排出される年間数万トンのさつまいもでん粉粕(残りかす)を原料に発酵法で製造しているそうです。サツマイモはデンプンの原料にもなっているんですね。

黒麹菌はもともと沖縄の泡盛に使われていました。明治の終わり頃から九州のいも焼酎にも使われるようになってきました。

黒麹菌のつくるクエン酸は、もろみを雑菌から守る働きがあります。沖縄のように暑いところでは、黒麹菌が役に立ったでしょう。白麹菌は胞子の色こそ黒麹菌とは違いますが、性質は似ています。黄色麹菌は古くから日本酒造りに使われてきたもので、クエン酸はほとんど作りません。(出典

クエン酸製造の化学式

クエン酸製造の化学反応を調べていたらクエン酸発酵で出ていました。

糖を分解してクエン酸を蓄積する発酵をいう。酸化発酵の一種で、クロカビ、アオカビなどのカビ類にみられる。

クエン酸の製造は従来柑橘(かんきつ)類からの抽出に頼っていたが、現在ではほとんど発酵法によっている。全反応は次式で表される。

C6H12O6+3/2O2→C6H8O7+2H2O

好気的代謝を行う生物では、糖は通常ピルビン酸に分解され、それがTCA回路に入って完全に酸化を受けるが、クエン酸発酵は、TCA回路がクエン酸のところで止まったものと考えられる。

工業的には糖蜜を原料としクロカビAspergillus nigerを用い、酸性条件下で発酵生産されている。(出典

クエン酸は、高校生物で習うTCA回路(クエン酸回路)に出て来ます。ミトコンドリアで行われる反応です。アセチルCoAがTCA回路に最初に入る物質なのですが、それがオキサロ酢酸と反応して、クエン酸ができます。酸素呼吸をする生物ならみんな同じ反応経路を持っています。

「TCA回路がクエン酸のところで止まった」というのが何でなのかなと思いましたので、調べました。別記事にかなり詳しく書きました。

クエン酸を黒麹カビで製造する歴史は100年前からをお読みください。

クエン酸を黒麹カビで製造する歴史は100年前から
この記事では、クエン酸が黒麹を使って製造されるようになったのは100年前のアメリカからで、黒麹は、パンに生えたカビから採取されたこと、黒麹のTCA回路の反応を途中で止めることで、クエン酸がたくさん得られるようになったことを説明します。 以前...

強酸性の環境で培地中の鉄イオンを0.5mg/Lに減らすとTCA回路でのクエン酸から次のイソクエン酸に変化する過程が阻害されるので、クエン酸で止まってしまうという方法を使っています。

実際、微生物による糖代謝の途中でできるものは、大量生産され利用されています。TCA回路では、有機酸が次々変化していくのですが、それを取りだしているようです。微生物による有機酸発酵を読むと、クエン酸は生産量が他のものに比べて突出して多く、年間160万トン生産されています。

まとめ

レモンの果汁には、100gあたり6.5gのクエン酸が含まれています。(日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用)

クエン酸は英語で書くとcitric acidです。柑橘類、citrusから派生したのでしょう。クエン酸はもともとレモン果汁から製造されていました。しかし、レモンは果実なので不作の年もあります。

しかし、発酵法なら、でんぷん、もしくはブドウ糖を原料にでき、さらに黒麹カビを使うだけなのでとても安価に製造できるようになります。大量生産も可能ですね。

クエン酸についてその他の記事は、クエン酸についての記事をお読み下さい。

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