塩麹をつくった時、特別に多くなる栄養成分はない

米麹と塩と水でつくる塩麹は色が変わり香りもつきます。栄養成分がごはんや米麹からどのように変化するんだろうと思いましたが、信頼できるデータが見つかりません。それで、ごはんが米麹になる時の栄養成分の変化から推理してみました。

塩麹

塩麹の栄養成分は特に豊富ではない

この記事は、少々長いので、先に結論から書きます。塩麹は、米麹を発酵させた香りと糖化酵素アミラーゼやタンパク質分解酵素プロテアーゼを利用して、野菜や肉に風味をつけたりやわらかくするものです。

残念ながら、塩麹自体に特筆すべき栄養成分はありません。

下でもう一度同じ表を出しますが、炊いたごはんと米麹を比べると、色を塗ったビタミンの増加がありました。しかし、100g食べても1日の推奨量や目安量にはとうてい届きません。

米麹でこの状態ですから、米麹に水と塩を加えた塩麹では、栄養成分がさらに薄まってしまいます。

100gあたりの栄養成分
ごはん ごはん
(補正済)
米こうじ
ナトリウム 1mg 1.7mg 3mg
カリウム 29mg 49.3mg 61mg
カルシウム 3mg 5.1mg 5mg
マグネシウム 7mg 11.9mg 16mg
リン 34mg 57.8mg 83mg
0.1mg 0.17mg 0.3mg
亜鉛 0.6mg 1.0mg 0.9mg
0.1mg 0.17mg 0.16mg
マンガン 0.35mg 0.60mg 0.74mg
ヨウ素 0 0 0
セレン 1μg 1.7μg 2μg
クロム 0 0 0
モリブデン 30μg 51μg 48μg
レチノール (0) (0) (0)
カロテン α 0 0
β 0 0
β−クリプトキサンチン 0 0
β−カロテン当量 0 0 (0)
レチノール活性当量 (0) (0) (0)
ビタミンD (0) (0) (0)
トコフェロール α Tr Tr 0.2
β Tr Tr 0
γ 0 0 0
δ 0 0 0
ビタミンK (0) (0) (0)
ビタミンB1 0.02mg 0.03mg 0.11mg
ビタミンB2 0.01mg 0.02mg 0.13mg
ナイアシン 0.2mg 0.34mg 1.5mg
ナイアシン当量 0.8mg 1.36mg 2.8mg
ビタミンB6 0.02mg 0.03mg 0.11mg
ビタミンB12 (0) (0) (0)
葉酸 3μg 5.1μg 71μg
パントテン酸 0.25mg 0.43mg 0.42mg
ビオチン 0.5μg 0.85μg 4.2μg
ビタミンC (0) (0) (0)

では、なぜこのような結論になったか、順番に説明していきます。

炊いたご飯と米麹の三大栄養素を比較する

塩麹の栄養成分について調べてみましたが、信頼できるデータが見つけられません。日本食品標準成分表2015年版(七訂)にも出ていませんでした。

こういうときは、日本食品標準成分表2015年版(七訂)から炊いたご飯と麹のデータを見比べて考えてみれば、だいたいわかります。

日本食品標準成分表2015年版(七訂)に出ていたご飯は、[水稲めし]/精白米/うるち米でしたが、長いので下の表では「ごはん」としました。

炊いた(正確には「蒸した」)ごはんと米麹の違いは、炊いたご飯に麹菌を植え付けて十分繁殖したところで、乾燥させている点です。

表だけ見ると、米麹の方がカロリーが高く、タンパク質、脂質、炭水化物の数字も大きいので麹菌によって栄養が増えたのではないかと勘違いしてしまいそうです。

100gあたりの成分比較
ごはん 米こうじ
エネルギー 168kcal 286kcal
水分 60g 33g
タンパク質 2.5g 5.8g
脂質 0.3g 1.7g
炭水化物 37.1g 59.2g
灰分 0.1g 0.3g

米麹は乾燥させているので100gあたりのカロリーが高くなる

米麹は、乾燥させているので水分が減っています。

たとえば、炊いたごはんが100粒で100gだったとします。そのごはんを乾燥させると、水分が飛んで200粒で100gになるとします。そうすると、100gあたりの栄養成分は多くなり、エネルギーも増えます。

麹は消費者なので全体のエネルギーが増えることはない

麹菌は繁殖するために炊いたごはんを消化します。

そして、麹菌は、植物のように光合成をしてエネルギーを新たに生産することはありません。植物は生産者ですが、麹菌は消費者です。

米麹の持つエネルギーは、ごはんに比べて減ることはあっても増えることはありません。

エネルギーの数字をもとに補正してみる

少々単純化しますが、全体のエネルギーが変わらないとして、ごはんの栄養成分を286/168倍して補正してみます。

ごはんを乾燥させて米麹と同じようにすると、100gあたりこのぐらいの栄養成分になるという意味です。

286÷168=1.7023・・・

1.7倍にしましょう。ごはんの栄養成分をそれぞれ1.7倍したものをごはん(補正済)として表に記入してみます。

100gあたりの成分比較
ごはん ごはん
(補正済)
米こうじ
エネルギー 168kcal 286kcal 286kcal
水分 60g 33g
タンパク質 2.5g 4.3g 5.8g
脂質 0.3g 0.5g 1.7g
炭水化物 37.1g 63.1g 59.2g
灰分 0.1g 0.2g 0.3g

補正しても、案外差があるものですね。しかし、補正前のごはんと比べれば、補正済のごはんと米麹の三大栄養成分の方が、近い数字になっています。

お米の成分は肥料によっても変わり、均一なものではありません。この程度のぶれがあるものだと考えて、もっと細かい栄養成分を比較してみましょう。

ご飯と米麹の栄養成分の比較

日本食品標準成分表2015年版(七訂)のデータを使って、ごはんと米麹の栄養成分、ミネラルとビタミンを載せます。

ミネラルは変わらない

最初にミネラルを載せますが、ごはんと米麹に違いはありません。ミネラルは増えも減りもしません。ごはん(補正済)と米麹を見比べていただければ、ミネラルの量は、だいたい同じだとわかりますね。

これで、炊いたごはん(補正済)と米麹の成分を比較すると、麹菌を植え付けたことによって増える栄養成分が分かります。

それを確認していただきたくて載せました。

米麹では、ビタミンB1、B2、ナイアシン、B6、葉酸、ビオチンが増える

ごはん(補正済)と米麹を比較してみます。下の表をご覧下さい。明らかに米麹にすると増える成分に色を塗りました。

ビタミンB1、B2、ナイアシン、B6、葉酸、ビオチンが明らかに増えています。つまり、炊いたごはんに麹菌を植え付けると、麹菌の働きでこれらの成分が増加するということです。

塩麹は、塩と米麹に水を加えてさらに発酵させたものです。

厳密に調べると違いはあるかもしれませんが、米麹をさらに発酵させても、ビタミンB1、B2、ナイアシン、B6、葉酸、ビオチンが増えると考えてよいと思います。

塩が入ると香りに変化がある

食塩が塩麹のにおいに及ぼす影響を読むと、塩麹と甘酒とではにおいに違いがあり、においは食塩濃度が低いほど甘酒に近づくことがわかりました。もちろん成分に違いがあるのですが、その成分は特定されていません。

100gあたりの栄養成分
ごはん ごはん
(補正済)
米こうじ
ナトリウム 1mg 1.7mg 3mg
カリウム 29mg 49.3mg 61mg
カルシウム 3mg 5.1mg 5mg
マグネシウム 7mg 11.9mg 16mg
リン 34mg 57.8mg 83mg
0.1mg 0.17mg 0.3mg
亜鉛 0.6mg 1.0mg 0.9mg
0.1mg 0.17mg 0.16mg
マンガン 0.35mg 0.60mg 0.74mg
ヨウ素 0 0 0
セレン 1μg 1.7μg 2μg
クロム 0 0 0
モリブデン 30μg 51μg 48μg
レチノール (0) (0) (0)
カロテン α 0 0
β 0 0
β−クリプトキサンチン 0 0
β−カロテン当量 0 0 (0)
レチノール活性当量 (0) (0) (0)
ビタミンD (0) (0) (0)
トコフェロール α Tr Tr 0.2
β Tr Tr 0
γ 0 0 0
δ 0 0 0
ビタミンK (0) (0) (0)
ビタミンB1 0.02mg 0.03mg 0.11mg
ビタミンB2 0.01mg 0.02mg 0.13mg
ナイアシン 0.2mg 0.34mg 1.5mg
ナイアシン当量 0.8mg 1.36mg 2.8mg
ビタミンB6 0.02mg 0.03mg 0.11mg
ビタミンB12 (0) (0) (0)
葉酸 3μg 5.1μg 71μg
パントテン酸 0.25mg 0.43mg 0.42mg
ビオチン 0.5μg 0.85μg 4.2μg
ビタミンC (0) (0) (0)

米麹、塩麹の栄養成分に豊富なものはない

米麹にすると明らかに増えているビタミンB1、B2、ナイアシン、B6、葉酸、ビオチンについて、1日の摂取量を調べて比べてみました。

結論からいって、米麹で増える栄養成分について、どれを取っても1日の推奨量、目安量を満たすものはありませんでした。米麹はビタミンB1やB2が豊富なんて書かれた広告文を見たことがありますが、それは違いますね。

また、米麹をつくるには、お米を蒸してから種麹を撒いて50時間くらい必要です。(出典)塩麹は、ヨーグルトメーカーを使うと6時間。暖かい季節なら室温で2~3日かかるので同じような変化をすると考えれば、上記の栄養成分が爆発的に増えるとは考えられません。

また、塩麹には水が足されているので米麹よりも100gあたりの栄養成分が薄まってしまいます。

米麹、塩麹とも栄養成分に特筆すべきものはないと思います。

ビタミンB1は足りません

米麹100gあたり、ビタミンB1は0.11mg含まれています。一方、ビタミンB1の成人男性の1日の推奨量は1.2~1.4mg。成人女性では0.9~1.1mgです。

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ビタミンB2は足りません

米麹100gあたり、ビタミンB2は0.13mg含まれています。一方、ビタミン B2の成人男性の1日の推奨量は1.3~1.6mg。成人女性では1.1~1.2mgです。

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ナイアシンは足りません

米麹100gあたり、ナイアシン当量は2.8mg含まれています。一方、ナイアシン当量の成人男性の1日の推奨量は13~15mg。成人女性では10~12mgです。

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ビタミンB6は足りません

米麹100gあたり、ビタミンB6は0.11mg含まれています。一方、ビタミンB6の成人男性の1日の推奨量は1.4mg。成人女性では1.2mgです。

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葉酸は足りません

米麹100gあたり、葉酸は71μg含まれています。一方、葉酸の成人男性の1日の推奨量は240μg。成人女性も240μgです。

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ビオチンは足りません

米麹100gあたり、ビオチンは4.2μg含まれています。一方、ビオチンの成人男性の1日の目安量は50μg。成人女性も50μgです。

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まとめ

塩麹の栄養成分表が入手できなかったので、炊いたごはんと米麹を比べて、栄養成分の変化を調べました。

炊いたごはんと米麹は水分量が違うので、100gあたりのカロリーで補正して、変化しないミネラルがほぼ同等であることを確認してビタミンを比較しました。

米麹では、ビタミンB1、B2、ナイアシン、B6、葉酸、ビオチンが増えることが分かりました。しかし、とても1日に必要な摂取量には足りない量です。

乾燥した米麹でこの状態ですから、水と塩を加えた塩麹では、栄養成分が薄まってしまいます。

つまり、塩麹の栄養成分には、特筆すべきものはありません。

しかし、これは牛乳とヨーグルトの栄養成分を比べた場合でも同じことがいえます。

塩麹の役割は、香りの変化と麹菌と麹菌が出すアミラーゼやプロテアーゼなどの酵素を利用するために使われています。

また、この記事を書いて、甘酒が栄養豊富であるといわれることに疑問を持ちました。アミラーゼのおかげでブドウ糖ができてエネルギー補給はすぐにできますが、ビタミンやミネラルはごはんと何も変わりません。

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