サトウキビが原料のラム酒

黒糖焼酎は糖質がないのかな?を書いたら、同じ砂糖を原料に使ったラム酒はどうやってつくられているんだろうと思いました。ラム酒はお菓子にも使われていて香りがとてもよいですが、ほとんど飲んだことはありません。ラム酒はカリブの酒ですね。

黒糖焼酎は、原料がたまにおやつで食べる黒砂糖だったので、とても贅沢な酒だなと思いました。焼酎は飲めといわれたらおいしくいただきますが、自分ではまず買いません。それほど好きではないです。

この記事では、ラム酒のつくりかたを書きます。

うまい酒の科学 造り方から楽しみ方まで、酒好きなら読まずにはいられないを読んだら出ていました。

ラム酒の原料は砂糖を精製した残りの廃糖蜜

一般的には、サトウキビの搾り汁を煮詰めて結晶させ、精製糖を採取した残りの糖蜜(molasses)を原料として、発酵・蒸留して造られるそうです。

サトウキビ

この説明だと糖蜜というのがよく分かりませんね。ニュアンスとしては砂糖をつくったあとの残渣のようにも思えます。ウイキペディアで砂糖を調べたら、砂糖の製法はこんな風に書いてありました。

サトウキビの茎を細かく砕いて汁を搾り、その汁の不純物を沈殿させて、上澄み液を取り出し、煮詰めて結晶を作る。

伝統的な製法では、カキ灰に含まれるカルシウム等のミネラル分が電解質となり、コロイドを凝集させる為、カキ殻を焼いて粉砕したカキ灰を沈殿助剤として加える例もある。

煮詰めてできた結晶と結晶にならなかった溶液(糖蜜)の混合物を遠心分離機にかけて粗糖を作る。

粗糖の表面を糖蜜で洗った後、さらに遠心分離機にかけて、結晶と糖蜜を分ける。その結晶を温水に溶かし、不純物を取り除き、糖液にする。それを煮詰めて結晶を生じさせ、真空状態のもとで糖液を濃縮する。結晶を成長させた後、再び遠心分離機にかけて、現れた結晶が砂糖となる。(出典:砂糖

やはり砂糖が一番大切な商品で、その残りを酒を造るために使っているという感じのようです。砂糖は結晶になりますが、どうも結晶にならないものを指しているようです。

もう少し探していると、廃糖蜜ということばが出て来ました。

廃糖蜜(はいとうみつ)は、砂糖を精製する時に発生する、糖分以外の成分も含んだ粘状で黒褐色の液体であり、英語ではモラセスまたはモラッセス(Molasses [məˈlæsɨz])と記す。

日本では廃糖蜜という呼び方に抵抗感があるため、単に糖蜜、あるいはモラセスと外来語表記する場合も多い。

廃糖蜜は食品廃材の一種ではあるが、サトウキビなどから得られたものは糖分などをまだ6割前後含んでいることから、そのまま甘味料として(砂糖が貴重品だった時代に多用された)、またうま味調味料(グルタミン酸の生成)やアルコール(工業用エタノール、ラム酒、日本や韓国の連続式蒸留焼酎(焼酎甲類)など)、医薬品製造(リジン、抗生物質など)、健康食品原料(オルニチンなど)の製造などの発酵工業の原料(主原料または補助原料)として用いられる需要があり、砂糖の生産地で発生する大量の廃糖蜜は、工業原料として地元で消費されたり輸出されることが多い。(出典:糖蜜

廃糖蜜は、原料としては日本では焼酎甲類用なので、高級なものではありません。しかし、お酒のことを調べているといつも思いますが、酒を安く造りたいのではなく、何としても酒を飲みたいのだという強い気持ちを感じますね。

アメリカでラム酒を造っていたこともあった

砂糖の歴史 (「食」の図書館)にとても面白いことが書かれていました。1700年頃、アメリカでラム酒をつくっていたというのです。ラム酒はカリブ海特有の酒なのかと思っていました。

砂糖きびはカリブ海が大生産地として知られています。

イギリスは1627年にバルバドスに入植を始め、砂糖きびの栽培を始めました。グーグルマップで場所を見てください。

その後西インド諸島で大規模な砂糖きびプランテーションが建設されました。そこで生産された砂糖やラム酒は、イギリス本国や北アメリカのイギリス植民値で売られました。

また、フランス人も1635年に、マルティニーク島やグアドループ島を砂糖植民地とし、イスパニョーラ島の西部にプランテーションを建設しました。

ところが、フランス領での製糖では途中でできる糖蜜が余ることになってしまったのです。

製糖過程でできる副産物である糖蜜は、結晶化した白砂糖と比べるとかなり安価な甘味料だった。糖蜜はアルコール飲料の原料にもなり、プランテーション所有者や商人は糖蜜から高級なラム酒をつくり、イギリスあるいは奴隷と引き換えにアフリカへ輸出した。

ラム酒はカリブ海のフランス領の島々でもつくられたが、フランス本国のブランデー醸造業者たちが輸入に反対し、糖蜜が大量に余る事態に陥った。

そのためフランス政府は、糖蜜を海に捨てるのではなく、買い手がつけば自由に売る許可を植民地に与えた。

買い手が北アメリカのイギリス植民地であることは明らかだった。

フランス領西インド諸島産の糖蜜はイギリス領西インド諸島産よりも60~70パーセント安かったため、ニューイングランドの植民地船は、マルティニークやグアドループ、サン=ドマングから糖蜜を大量に買い入れた。

ニューイングランドはラム酒の製造には理想的な場所だった。蒸留所をつくるのに必要な熟練労働者が多く、大量の糖蜜を運ぶ船、蒸留器の燃料や樽の原料となる木材に恵まれていたためである。

ラム酒はあっという間に北アメリカで人気の蒸留酒となった。

ニューイングランドは、アメリカ合衆国北東部の6州(メイン州、ニューハンプシャー州、バーモント州、マサチューセッツ州、ロードアイランド州、コネチカット州)を合わせた地方のことです。

サトウキビの搾り汁が原料のラム酒もある

もちろん、ラム酒の原料として、サトウキビの搾り汁を使うものもあります。廃糖蜜ではないですから、きっと値段が違います。高くなります。アグリコール製法というのだそうです。

ラム酒の仕込みは、水と硫酸で酸度を調整しつつ薄めた糖蜜を加熱殺菌し、ろ過して、さらに水を加えて糖度を調整して糖液をつくります。

ラム酒の製造方法

このあと、製造方法は、「ライト・ラム」、「ヘビー・ラム」「ミディアム・ラム」に分かれます。

モヒート

ライト・ラム

糖液に純粋培養酵母を加えて発酵させます。サトウキビの搾り汁を使う場合はライトタイプが一般的だそうです。その後、連続式蒸留機により高濃度のスピリッツを製造します。

蒸留機は、単式と連続式があります。単式は、一度だけ蒸留するので、アルコール以外の成分が一緒に入りやすくなり、連続式は、アルコール度数が高くなり、雑成分が入りにくくなる特徴があります。

これに水を加えて、タンクまたは、内側を焦がしていないオーク樽で熟成後、活性炭などでろ過します。

キューバ・ラムはこのタイプです。

ヘビー・ラム

糖蜜を2~3日放置して、自然発酵を起こさせます。これにサトウキビの搾りかすや、前回製造に使用し蒸溜残渣などを加えて発酵させます。

蒸溜残渣なんて結構な高温にさらされたと思いますが、発酵を進ませる働きをするのは何でしょう?

蒸留は単式蒸留機で行い、(ウイスキーのように)内側を焦がしたオーク樽で3年以上熟成します。この熟成期間で、香りも色も濃厚なラム酒となります。

ジャマイカ・ラムはこのタイプです。

ミディアム・ラム

糖蜜を自然発酵させたもろみを連続式蒸留機を使って蒸留し、樽熟成します。ヘビー・ラムとライト・ラムをブレンドして製造することも行われています。

バー

国産ラムは贅沢仕様でつくる

黒糖焼酎とラムの違いを考えていて、(失礼ながら)ラムの発酵方法がかなり大ざっぱに思えて、これならサトウキビの産地の沖縄ならラムはつくれるなあと、何となく検索したら、ありました。国産ラム酒。しかもあちこちに。

各社ともサトウキビの搾り汁を仕込むアグリコールラムを製造していました。廃糖蜜を原料とするのではない、砂糖もそのまま使われる贅沢な造り方ですよ。

株式会社グレイスラムは南大東島のメーカーでCOR COR (コルコル)、COR COR AGRICOLE (アグリコール)を生産しています。

小笠原ラム・リキュール株式会社は東京都小笠原村のメーカーです。

菊水酒造株式会社は、高知県安芸市の酒造会社です。SEVEN SEAS(セブン シーズ)をつくっています。

高岡醸造株式会社は、鹿児島県徳之島町の酒造会社です。黒糖焼酎の他にラム小夜曲(Serenade)をつくっています。

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