NHKスペシャルで昨年放送されていた腸内フローラ 解明!驚異の細菌パワーって面白かったそうですね。
友人から、その番組関連のやせる! 若返る! 病気を防ぐ! 腸内フローラ10の真実という本を教えてもらいました。NHKの番組の本らしからぬタイトルと、なぜNHK出版でなく主婦の友社から出たのだろうということはともかく、とても面白い本でした。
この記事では、肥満と腸内細菌の関係について書きます。
肥満すると腸内細菌叢が変わる
世の中にはいろいろなことを考える人がいて、肥満している人とやせている人には腸内細菌叢(フローラ)に違いがあるのではないかと考えた人がいました。そして、実際に無菌マウスを使って実験しました。
無菌マウスには腸内細菌は棲んでいません。
無菌マウスに肥満している人の便とやせている人の便を植え付けます。すると、肥満した人の便を植え付けられたマウスは肥満し、やせている人の便を植え付けられたマウスは、変化しないのだそうです。しかも何度やっても同じになる再現性があるのです。
この研究を発表したのは、ワシントン大学のジェフリー・ゴードン教授です。研究室のサイトがありました。gordonlab
肥満している人の腸内フローラには特徴があり、肥満を防ぐために強力してくれる菌が、極端に少ないのだそうです。
バクテロイデス(Bacteroides)属の菌
その菌は、主にバクテロイデス(Bacteroides)属の菌です。今まで読んできた本には出てこなかった、初めて聞く名前です。肥満している人の腸内では、バクテロイデス(Bacteroides)属の数種類の菌の数が、極端に少ないのだそうです。
バクテロイデス属の下、「種」や「株」も知りたかったのでgordonlabのサイトを見ましたが、書かれていませんでした。
ウイキペディアによると、割と一般的な菌のようです。
口腔内から腸内細菌叢を構成する細菌の優勢菌のひとつで大量に存在する。人間の大便には1gあたり100億から1000億匹存在する。
基本的には病気の原因とはならないが、日和見感染症の原因となる細菌のひとつである。
偏性嫌気性の菌なので、ビフィズス菌と一緒です。
そして、これら菌を外から与えてやると、肥満体質は治るそうです。
肥満体質が改善できるヨーグルトなんてあると面白いなと思って探してみましたが、ありませんでした。
ヨーグルトは食べていてお腹によいのは明らかですが、ヨーグルトの乳酸菌が腸内フローラを変化させるほど影響をもつという話は今まで聞いたことがありません。
それで思い出したのが、ニュースで見た時に、正直、あまり気分がよい感じがしなかった便移植という療法です。他人の便を自分の腸の中に入れて腸内環境を改善するという療法です。
冒頭の無菌マウスを使った実験のようなことから考案されたのでしょう。
便にはヨーグルトとは比べものにならない大量の菌がいること、腸内細菌にとって培養基として便は最高です。そして、便をお尻から入れれば胃の中を通らないので、菌がそのまま入ります。2000年頃から腸が大切だとずっといわれているので、便移植も一般化するかもしれないですね。
ところで、バクテロイデス属の菌は、何をしてくれるのかというと、短鎖脂肪酸をつくってくれます。短鎖脂肪酸が、肥満にならないようにしてくれるのです。
短鎖脂肪酸とは
短鎖脂肪酸とは、炭素数6以下脂肪酸のことです。脂肪酸とは、脂肪(油)を構成する炭化水素の鎖にカルボキシル基(-COOH)がついたものです。
オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸など聞いたことがあると思います。オレイン酸は、オリーブ油の主成分、リノール酸は穀物油の主成分、α-リノレン酸は、えごま油や亜麻仁油の主成分です。こちらは炭素数が18の長鎖脂肪酸と呼ばれます。
短鎖脂肪酸は、酢酸、酪酸、プロピオン酸、カプロン酸などが知られています。酢酸は、お酢の成分です。酪酸は、バターのにおいです。短鎖脂肪酸はくさいのが特徴です。反芻胃をもつ草食動物では、短鎖脂肪酸は重要なエネルギー源になります。
短鎖脂肪酸についてはこちらもご覧下さい。
加齢臭や足のにおいも短鎖脂肪酸の仕業です。
短鎖脂肪酸は脂肪細胞に作用する
短鎖脂肪酸は、腸から血液中取り込まれ、体の中を回って脂肪細胞のところまで行くと、脂肪細胞のセンサーに触れます。脂肪細胞とは、脂肪を貯蔵する脂肪滴を持っている細胞です。センサーから信号を受け取った脂肪細胞は脂肪の取り込みをやめます。
短鎖脂肪酸は交感神経を刺激する
また、短鎖脂肪酸は、交感神経を刺激し、全身の代謝が活性化します。心拍数が上がり、体温も上がります。つまり、食べたものを燃やして消費する方に体を方向づけてくれるのです。
ところで、短鎖脂肪酸の中に酢酸がありました。酢酸はお酢の成分です。お酢は毎日のように使うものだし、お酢を飲む健康法は昔からあります。
お酢を飲んだらやせるのでしょうか?
お酢を飲んでも同じ働きがあるそうです。しかし、お酢を飲んで酢酸が血中に入るとすぐに分解され、作用が長く続きません。
これに対して、腸内細菌の助けを借りると、腸内に食物がある間は、短鎖脂肪酸がつくられるので、短鎖脂肪酸がずっと供給されることになります。
短鎖脂肪酸になるのは食物繊維
バクテロイデス菌は食物繊維を分解して、短鎖脂肪酸をつくります。食物繊維を分解して短鎖脂肪酸をつくるのは、バクテロイデス菌に限ったことではありません。
たとえば、ビフィズス菌はオリゴ糖を分解して酢酸をつくります。
上で書いた便移植は、腸内細菌を直接、変更する方法ですが、食べ物を変えることで、腸内フローラを変えることができます。
ゴードン教授の研究グループは、12人の肥満者を対象に1年間にわたって食事療法を行い、肥満者特有の腸内フローラが、やせている人の腸内フローラに近づいていくことを確かめました。
腸内で短鎖脂肪酸をつくってもらうためには、ヨーグルトをたくさん食べるよりも、食物繊維を毎日食べていた方が効果的かもしれません。もちろん、ヨーグルトを食べるとお腹の調子はよくなりますが、短鎖脂肪酸とヨーグルトはあまり関係がないように思います。
食物繊維ベスト10
食物繊維総量について、ベスト10を調べてみました。(出典)
食品名 | 100gあたりの成分量g |
あらげきくらげ/乾 | 80.0 |
こんにゃく/精粉 | 80.0 |
てんぐさ/粉寒天 | 79.0 |
てんぐさ/角寒天 | 74.0 |
凍みこんにゃく/乾 | 71.0 |
しろきくらげ/乾 | 69.0 |
干しわらび、乾 | 58.0 |
きくらげ/乾 | 57.0 |
えごのり/素干し | 53.0 |
ほしひじき/乾 | 52.0 |
ご参考まで。