紅茶は発酵させてつくる

紅茶は発酵食品だといわれます。しかし、どのように発酵させているのか知りませんでした。微生物の力を借りているのでしょうか?発酵させると緑茶とはまったく違うよい香りがするものですね。また、紅茶にはどんな効果があるのか調べました。

茶畑

紅茶も緑茶も同じ葉っぱからできる

今回調べ物をするのに本を探しましたが、紅茶を楽しむ本はたくさんあっても、成分や製法について詳しく解説されているような本はあまり出て来ません。

紅茶事典には広く書かれていました。成分や化学については、緑茶・紅茶・烏龍茶の化学と機能という本がありましたが、2冊とも図書館で探した方が早いと思います。

お茶の原産地は、福建省武夷山の山岳地と中国東南部の産地である雲南省周辺だといわれています。

ここから製法や発酵の異なるたくさんのお茶が生まれました。緑茶、黄茶、紅茶、ウーロン茶は、同じお茶の葉が元になっています。

黄茶は初めて知りましたが、加熱処理をゆっくり行い、酵素を作用させて酸化発酵をさせたお茶だそうです。

お茶は、学名でカメリア・シネンシス(Camelia Cinensis L.O. Kuntee)といわれるツバキ科の植物です。カメリアだからツバキですね。

平地だけでなく、標高2000メートルの高地でも栽培でき、インドやスリランカなど温暖で雨の多い地域を中心に栽培されています。日本でもお茶の産地は雨が多いところです。

紅茶は完全に発酵させたお茶

同じ茶葉がどのように、紅茶、ウーロン茶、緑茶になっていくのでしょう。

紅茶の茶葉は葉っぱの原型が残っておらず、ねじれるようにしおれて茶色に変型しています。これは酸化発酵によるもので、発酵が進むと、茶葉は緑からこげ茶、黒褐色に変化していきます。

発酵の度合いによって緑茶、ウーロン茶、紅茶の特徴が出て来ます。

生葉を完全に発酵させた茶葉(完全発酵茶)が紅茶に、一定の時間だけ発酵させた中間的な茶葉(半発酵茶)がウーロン茶や鉄観音に、発酵しないように蒸したり、炒ったりする茶葉(不完全発酵茶)が日本茶や清茶になります。清茶は、緑茶に近い味わいの発酵の浅い台湾産烏龍茶のことです。

時間をかけてじっくり発酵させた紅茶は、特有の香りが出て来ます。

紅茶の発酵には菌を使わない

発酵について書く時に、いつも種菌はどんなのを使っているのかなと興味があります。しかし、紅茶は乳酸菌や酵母を使って発酵させているのではありません。

茶葉から出た葉汁が酸素に触れて酵素酸化が起こります。そして、アルデヒドのような刺激臭が生じて変色が始まります。発酵によって茶葉は新鮮な銅色になり、乾燥時の高温で酵素が失活するまで、さらに酸化が進んで黒褐色になります。

紅茶の製造

紅茶の製造方法は、オーソドックス製法とCTC製法があります。こちらは紅茶事典に分かりやすく説明されていました。

オーソドックス製法

製造工程は、葉をしおらせる萎凋(いちょう)から始まります。幅3メートル×長さ30メートルの金網の上に、約30センチの厚さに広げられた茶葉は、温風を下に通して10~15時間放置されます。この工程で、40~50%の水分が飛ばされます。

萎凋(いちょう)は紅茶の香り形成に大きな影響を及ぼし、終了時に茶葉は青臭を失い、果実香を生じて柔軟になります。

葉の水分が約半分になったら、ローリングマシーンにかけて葉汁を出します。これは手のひらに葉をのせて両手でこするような作業で、揉捻(じゅうねん)と呼びます。次に、茶葉をねじ切るローターパンにかけ、細かくし、発酵しやすい状態にしたら、自然発酵、あるいは強制発酵させます。

自然発酵は、タイル張りの床や発酵棚に茶葉を並べて放置するだけ。反対に強制発酵は、専用の部屋で人工的に熱や水分を加えて発酵させます。

茶は酵母などを添加することなく、茶葉からでた葉汁が酸素にふれることで酸化発酵します。

最後に乾燥させて紅茶は完成します。

ある程度乾かして水分調整をしてから、傷つけ、出て来た葉汁で発酵させ、乾燥させて完成というのが流れです。

CTC製法

CTCの名称は「CRUSH, TEAR, CURL」の頭文字をとったものです。「押しつぶす、引きちぎる、丸める」という意味で、この工程をCTC機という加工機で行います。

2本のローラーの間に茶葉を挟み込んで、ローラーについている突起やナイフで茶葉の細胞組織を切断します。

その後斜めに切り込みのある溝で形を丸く整えます。

最後にオーソドックス製法と同じように、発酵、乾燥させれば、このCTC製法特有の1~2ミリの粒状茶葉ができあがります。

茶葉を引きちぎることで、表面積が大きくなり、発酵や乾燥などに必要な時間が短時間で済みます。

こちらの方が少し乱暴な感じがしますが、最初に小さくちぎってしまうので、空気とふれる面積が増えるので乾燥させて水分調整しないでも、傷みにくいのでしょう。

紅茶の効能

緑茶・紅茶・烏龍茶の化学と機能には、茶の保健成分として、紅茶というわけではなく、お茶一般の保健成分について解説がありました。

最初に書かれていたことが興味深かったです。鎌倉時代、栄西は、宋留学から持ち帰った茶について「喫茶養生記」で冒頭、次のように書いているそうです。

「茶なるものは、末代養生の仙薬なり、茶の飲用は人倫延齢の妙術なり。・・・・・人倫これを採れば、その人長命なり。」と述べ、「養生の秘訣は、五臓を安んずべし・・・・・心臓を健全にしておく方法は、茶を飲むことが最もよい。心臓病のある時は苦味のある茶を喫めば心臓病にかかることも無く長命である。」と著し、その効用は利尿、興奮作用、脚気、心臓病その他体力の増強に効があるとしている。

かなり効果を期待された飲み物だったようです。

紅茶事典には紅茶の効能は、主にポリフェノールによるものとしてまとめて説明されていました。ポリフェノールには、ご存知、抗酸化作用があります。紅茶にはその一つであるタンニンが多いのです。タンニンは渋み成分です。

イギリスで紅茶が広まったのには、理由がありました。

19世紀半ばジンやビールの一種であるエール(エールは最初のビールです)を大量に飲み、痛風に苦しんでいたイギリス人に紅茶は特効薬としても広まった。「東洋の神秘薬」として流行した理由は、疲労回復、食欲増進など多くの効能が伝えられたからだそうです。

紅茶の効能はだいたいこのようにまとめられます。

  • タンニンが皮下脂肪をエネルギーに変えるので肥満を防止する。
  • タンニンが風邪のウイルスの働きを抑制する。
  • カフェインやタンニンが胃液の分泌をうながす。腸炎を軽くする。
  • 赤痢菌、コレラ菌、腸炎ビブリオなどの病原菌を撃退する。
  • カフェインは新陳代謝をよくして、利尿作用を促す。
  • 紅茶に含まれているフッ素が虫歯菌を撃退し、予防してくれる。

チャイ

まとめ

お茶は食後に飲んだり、口の中をさっぱりさせたい時に飲んでいるような気がします。コーヒーは頭がすっきりするので、そのために飲みます。

しかし、侮るなかれ、お茶はなかなかすぐれものです。きっと、もっと気持ちを込めてていねいに紅茶をいれると好きになるのだろうと思います。

私は紅茶で思い出すのはチャイです。山小屋で働いていた時、雪の日先輩がいれてくれたチャイ。クローブとカルダモンがビシビシ効いていて、もちろん、シナモンやクミンシードも入っていたけど、刺激的でとても温まるチャイでした。

紅茶
スポンサーリンク
kuniをフォローする
スポンサーリンク
発酵食品を読む
タイトルとURLをコピーしました