カルピスはどのように作られるのか

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カルピスは脱脂乳を原料として乳酸発酵させ、砂糖を加えてさらに酵母によって二次発酵させて作られたものです。なぜ脱脂乳なのかと思いましたが、搾りたての牛乳を置いておくと表面に脂肪が浮いてきます。その部分を乳酸発酵させた商品がもともとあり、残った脱脂乳の利用方法を試行錯誤するうちにできたのが、カルピスでした。

カルピス

カルピスをつくった男 三島海雲を読みました。カルピスは誕生して100年になるのだそうです。この本は、カルピスをつくった三島海雲の評伝です。三島海雲氏の生涯、カルピスを開発したきっかけ、またカルピスという会社について知ることができます。

カルピスを知るには一番よい本です。

腰巻きにありますが、カルピス誕生100年というきっかけがなければ、本の売れない時代に、なかなかこのような本が出版されることはなかっただろうなと思います。

カルピスの原料は脱脂乳

カルピスは脱脂乳を乳酸菌で発酵させてつくります。

私は、いつも「もの」がどのようなきっかけでできたのかに一番興味があります。この本でも早速、開発の経緯を探して読み始めたのですが、「あれっ?」と思ってしまいました。カルピスの原料が脱脂乳だったからです。

「なぜわざわざ脱脂乳を使うのだろう?」

「醍醐味」が一番の商品だった

カルピスは「醍醐味」を製造後に出る脱脂乳を利用するために生まれたのです。

カルピスが生まれる経緯が書かれた部分を少しずつ抜き書きします。

三島は醍醐味の生産後に出る脱脂乳を利用して、商品化できないかと考えていた。(中略)

脱脂乳の有効利用―それが三島と龍治郎の共通したテーマだった。そして、脱脂乳利用の試行錯誤からカルピスのプロトタイプが生まれるのだ。(中略)

ある日、脱脂乳に砂糖を混ぜて一昼夜おいた。すると意外にもうまい。もう一日置いてみるとうまみがさらに増す。(中略)

東京帝国大学の衛生学研究所で高木八郎という大学院生と乳酸菌を研究していた。その乳酸菌を商品化しようと試行錯誤するなかで、偶然にカルピスが誕生したのである。

「醍醐味」が一番の商品で、製造すると副産物として脱脂乳が出る。それを商品化するために試行錯誤していると、砂糖を混ぜて乳酸菌を加えてカルピスが生まれたということみたいです。※「醍醐味」については後述します。

カルピスの風味は市販のヨーグルトとは違います。ヨーグルトの方がもっと乳臭いです。ドリンクタイプのヨーグルトとも違います。風味の軽さは脱脂乳を使うからでしょうか?

少し興味を持ってネットで調べていくと、カルピスの生い立ちが出てきました。

カルピスの風味には酵母も関係している

本では脱脂乳に砂糖を混ぜて一昼夜置くと意外にもうまくなったと書かれていましたが、それがカルピスの生い立ちでは酵母が混入したからだとより詳しく説明されています。

「……海雲以下工場の全員が知恵を集めて乳酸菌飲料の研究をしていたある日,当時の工場責任者だった片岡吉蔵が,ふとした思いつきから,醍醐素に砂糖を混ぜて放置しておいた.1~2日たって飲んでみると非常に美味なものになっていた.おそらく,空気中の酵母が自然に混入し,程よく自然発酵していたのであろう.」

乳酸発酵後の酵母発酵というのがカルピスのキーポイントである.カルピス社ではこれを二次発酵と呼んでいるが,これがなければカルピスの味は出せない.

記録にはないが,おそらく研究開発段階で,酸乳に砂糖を混ぜる実験は何回も繰り返されただろう.それだけでは当時すでに発売されていたヨーグルトを超えることは出来なかったに違いない.

偶然の酵母発酵を直ちに受け入れて製品化出来た裏には,何回にも及ぶ試行錯誤の実験という受入素地があったからである.

醍醐素は、脱脂乳を乳酸発酵させた酸乳のことです。

カルピスについてまとめておきましょう。

カルピスは、「脱脂乳を原料として乳酸発酵させ、砂糖を加えてさらに酵母によって二次発酵させて作られたもの」です。

さて、一方、そもそも一番の商品だった醍醐味とはどんなものだったのでしょう?

醍醐味はジョウヒ

もともと最初に商品化されていたのは、醍醐味という商品でした。これはモンゴルのジョウヒを真似て作ったものです。カルピスの生い立ちからです。

70年史によると,「海雲が製造しようとしたのは,蒙古で言うところのジョウヒである.ジョウヒは酸っぱいクリームからつくったもので,かめの中に2~3日貯蔵して乳酸発酵させたものである.」とある.

この記述が正確だとすると,機械的な遠心分離機(セパレーター)のない頃だろうから,静置した酸乳の上部を掬い取り,別のかめに入れて更に乳酸発酵を行ったのではあるまいか.ジョウヒは酸を和らげるために砂糖を入れたといい,蒙古で貴重な砂糖を入れるために,この食品は上流家庭の食卓でしか見られなかったという.

この部分だけ読むと、乳酸菌によって発酵させるとクリームができてそれがジョウヒなのかな?と思います。

私はかなりの回数ヨーグルトを自作しているので、クリームができるのはちょっと信じられないなと思いました。

ジョウヒはしぼった牛乳を置いておくだけでできる

一方、「カルピスをつくった男 三島海雲」には、著者の山川徹氏がジョウヒを作るところを実際に見学した話が書かれています。牛乳の表面に張る膜のことがジョウヒと呼ばれています。

私もドルナーに乳製品作りを見せてもらった。

ドルナーがプラスチックタンクのふたを開けると牛乳の表面に膜がはっている。牛乳を温めると表面に浮き出るタンパク質の膜に似ていた。

朝に絞ったばかりの牛乳をタンクに入れて、パオのなかに置いておくだけで翌日にはジョウヒができている。二日目のジョウヒらしいが、とろりとしたクリーム状になっていた。

「牛乳の質がいいほど、厚いジョウヒができます。牛乳から作る乳製品のすべての基本がジョウヒなんです」

彼女はオタマで牛乳の表面をなでるようにして掬ってみせた。

上でも書いたように、私はヨーグルトを何度もつくっていますが、市販のヨーグルトを種にヨーグルトをつくっても、表面に膜がはったことはありません。

ジョウヒは脂肪分がとても多い

では、このジョウヒ(醍醐味)はどんな成分からできているのか。「カルピスの生い立ち」には表が載せられていました。

含窒素有機物(蛋白質として)3.28%
脂肪34.36%
糖分(乳糖として)3.26%
酸(乳酸として)0.28%
鉱質物0.47%
水分58.35%

これだけでは牛乳との違いがわからないので、一般の牛乳はどんな成分なのか、日本食品標準成分表2015年版(七訂)から調べました(下表)。

こちらの表はg(グラム)表示ですが、全体の重量が100gなので、それぞれの数字を%(パーセント)に置き換えて読んで下さい。

市販の牛乳は多少成分を調整されていると思いますが、成分無調整と書かれたパッケージの牛乳もあります。表の数字とそれほど大きく変わることはないでしょう。

食品成分普通牛乳
エネルギー67kcal
水分87.4g
たんぱく質3.3g
脂質3.8g
炭水化物4.8g
灰分0.7g
重量100g

ジョウヒと牛乳を比べると、脂肪(脂質)の割合が大きく違っています。これはなぜなのでしょう?「カルピスの生い立ち」にはこのように書かれていました。

搾ったままの牛乳は静置しておくと脂肪が上に浮いてくる

どうやら、搾っただけの牛乳は、水と油が混ざらないように脂肪が上に浮いてくる現象が起きるようです。

寒冷地で育つ牛や羊の乳は,われわれの知っているホルシュタイン種よりも,かなり乳脂肪率が高いだろう.牛乳は脂肪分が3%ぐらいでも,ホモジナイズしなければ容器にクリームラインが着くくらいだから,棒でかき混ぜるとはいえ,酸乳の上部を薄く掬い取れば発酵クリームになったと思われる.

しかし、市販の牛乳では冷蔵庫に入れておいても分離しません。なぜなのか?その原因がホモジナイズです。

市販の牛乳はホモジナイズされている

ホモジナイズとは、脂肪球を細かくして水と混ざりやすくするのです。

ホモジナイズについて調べてみると、東毛酪農業協同組合のサイトのパスチャライズド牛乳に詳しくありました。

ホモジナイズは、牛乳(生乳に含まれている脂肪球)に圧力をかけて、乳中の脂肪球を砕いて小さく均質化することです。

これは、均一に短時間で超高温殺菌する工程で必要であると共に、超高温殺菌中に配管の中で乳脂肪が固まらないようにするための過程です。

つまり、モンゴルのジョウヒをモデルに作られた醍醐味は、搾った牛乳を置いておくと表面にできる脂肪分の多い層を乳酸菌によって乳酸発酵させたものだと分かります。

ジョウヒを取り除かれ、残った牛乳は、当然、脱脂されています。それがカルピスの原料になっていたのです。

原材料名にある大豆多糖類とは?

ところでカルピスのボトルをひっくり返して原材料名を見ると、大豆多糖類がありました。これは何でしょう?

カルピス

タンパク質を固まらせないようにする

検索してみると、不二製油株式会社の水溶性大豆多糖類の食品への利用というページが出て来ました。該当するのはここです。

酸性での蛋白質の分散能酸性乳飲料・酸性冷菓・酸性デザート・耐酸性クリーム

カルピスは酸性乳飲料なので、タンパク質を固める働きがあります。それを防ぐために使われているということです。

NOTE

なぜ最近、カルピスのことを思い出したか、少し書いておきましょう。今年の夏もひどく暑く、アイスクリームを買うことが多くなりました。しかし、糖分が多くカロリーが高いので私には余りよくありません。

そんな時、ふと、以前カルピス寒天をつくる話をネットで読んだことを思い出しました。寒天を冷やして食べると体の中が冷えて都合がよいです。それで、久しぶりにカルピスのことを思い出しました。

私が子供の頃のカルピスは、遮光のガラスびんが白地に青い水玉模様の紙に包まれていて、その包装紙をはがして栓を抜く時に、なんとも贅沢な気持ちがしたものです。

さらに思い出してネットで調べましたが、TBS木曜8時枠の連続ドラマの合間にオズモンドブラザーズのカルピスCMが流れていました。

Calpis (カルピス) CM 1972 – Osmonds

「カルピス」みらいのミュージアム

群馬県館林市に「カルピス」みらいのミュージアムができ、2019年10月1日から一般公開だそうです。行ってみたい。

“「カルピス」みらいのミュージアム”誕生、試飲・工場見学・シアターなどで“カルピスの世界観”を体験
〈群馬県館林市内に竣工、2019年10月1日から一般公開(予約制)〉アサヒ飲料は、「カルピス」ブランド100周年..

そうそう、忘れるところでした。カルピスのサイトです。

ピースはここにある。「カルピス」
「ピースはここにある。『カルピス』」ブランドサイトです。「カルピス」ブランドの新商品情報、キャンペーン情報、レシピなどをご紹介します。
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