誰でもできる手づくりワイン

誰でもできる手づくりワイン―仕込み2時間2か月で飲みごろを読みました。永田十蔵さんの本です。私が買ったのは5刷だったので、なかなか人気がありますね。

私は酒を飲むのは好きですが、ほとんどワインは飲みません。ワインしかなければ飲みますが、ビールか日本酒の方が好きです。しかし、永田十蔵さんの本はとても面白くて、読むと何か発見があるので買っています。わが家でつくるこだわり麹―米・豆・麦から雑穀までが入手不可になっているので、農文協が増刷してくれるとよいのですが。

さて、この本もやはり面白い本です。

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不味なブドウは美味なワインになる

ワインはブドウを原料にしていますが、原料のブドウはおいしくない方がよいのだそうです。季節になると食べる甘い巨峰は、ワインにするとおいしくないのだとか。緑色のマスカット(マスカット・オブ・アレキサンドリア)は香りがよいブドウですが、ワインにするとよくない香りになってしまうそうです。

素人考えでは、アルコール発酵は、ブドウ糖を酵母が分解してエチルアルコールをつくるのですから甘みが強い方が向いているのではないかと思ったのです。

代わりに永田さんがすすめているのは、ヤマブドウ、エビヅル、シトウエビヅルなど日本の各地に自生する野生ブドウです。

ヤマブドウは、木曽の山の中だったか、南アルプスのどこかを歩いていた時に大群落に出遭ったことがあります。本能的に摘みに走ったのですが、食べてもそれほどおいしいものではありませんでした。一言でいうと甘くないのです。渋かったかもしれません。

ところが、野生ブドウでワインをつくると驚くほどおいしいのができるのだそうです。

しかし、甘くないヤマブドウを使ってうまく発酵させられるのでしょうか?

アルコールは糖の半量になる

ブドウの糖度は糖度計で測ります。普通のブドウの糖度は16~18%。相当高いもので22%程度だそうです。

ところで、ブドウ糖が酵母によってアルコールに分解されるのは、次のような反応をします。ちょっとした化学の復習です。

C6H12O6(ブドウ糖)→2C2H5OH(エチルアルコール)+2CO2(二酸化炭素)

1分子のブドウ糖から2分子のエチルアルコールと2分子の二酸化炭素に分解されます。炭素(C)は12、水素(H)は1、酸素(O)は16で計算すると、

ブドウ糖:12×6+1×12+16×6=180
エチルアルコール:12×2+1×5+16×1+1×1=46

つまり、180グラムのブドウ糖から92グラムのエチルアルコールができることになります。

次に濃度を考えます。

水溶液の濃度(%)=溶質の重さ/溶液の重さ(水+溶質の重さ)ですから、今180グラムのブドウ糖が820グラムの水に溶けているとします。すると、その濃度は、

180/1000×100=18%になります。

さらに、ブドウ糖からエチルアルコールができたとして、水の重さが820グラムとすると、

92/(92+820)×100=10.08・・・となり、ほぼ10%になります。

これは、濃度18%のブドウ糖が完全に発酵してエチルアルコールになると、アルコール度数は10%になるということです。つまり、糖度の半分がアルコール度数になります。

すると、普通のブドウなら糖度は16~18%ですから、アルコール度数は、8~9%。相当高いもので22%程度でしたからアルコール度数は11%程度になります。

お店に並んでいるワインのアルコール度数は15%くらいあります。アルコール度数が低いと保存性が悪くなりますが、どうやってアルコール度数をあげているのでしょう?

補糖

ワインのアルコール度数は、糖を補うことで調整されています。アルコール度数を上げるのは飲んで楽しくなるためではなく、アルコール度数を上げないと長く保存できなくなるからでしょう。よいとか悪いとかでなく、必要なことです。

わが家でできるこだわり清酒では日本酒の醸造は、麹と酵母の共同作業でお米のデンプンからアルコール度数が20%近くまで上げられる話を書きましたが、ワインと比べるとなかなかすごいですね。

ヤマブドウはあんまり甘くないのですが、補糖することで他のワインと同じようにアルコール度数15%程度までいけます。

果醪発酵と果汁発酵

ワインの発酵には、ブドウを破砕(つぶす)して果皮、果肉とも漬け込んで発酵させる方法と、果汁だけを発酵させる方法があります。

前者は果醪発酵といって赤ワインをつくるときの方法です。後者は果汁発酵といって白ワインをつくるときの方法です。赤ワインは、果皮と果肉から色素が出るので色がつきます。色素はポリフェノールといわれるもので、抗酸化作用があると知られています。

フレンチパラドックスが広く知られているので赤ワインを好む人が多いです。フレンチパラドックスとは、フランス人が喫煙率が高く、飽和脂肪酸(肉ですね)が豊富に含まれる食事を摂取しているのに、心臓病になる人が少ないという話で、その理由が赤ワインだったのです。1990年頃から広まりました。

しかし、昨年ぐらいからフレンチパラドックスに根拠はないという話も出て来ました。日経ウーマンオンラインに「赤ワインは体に良い」は本当?~フレンチ・パラドックスに異議あり!という記事がありました。

それはともかくとして、赤ワインに色素が溶け込んでくるのは間違いないことなので、永田さんは白ワインをつくる時も果醪発酵をすすめています。

赤ワインの発酵には一次発酵と二次発酵があります。一次発酵は、果皮、果肉とも漬け込んで発酵させる工程で、二次発酵は、それを搾って酸素に触れないような容器に移して二酸化炭素を排出させながらさらに残った糖分をアルコールにする工程です。

通常、白ワインをつくるには、果汁をしぼって赤ワインの二次発酵からスタートさせるのですが、永田さんは、短期間の低温状態にした一次発酵と、二次発酵でおいしい白ワインができるのを確かめられたようです。

ヤマブドウワイン

永田さんはヤマブドウワインに特にこだわっているようです。第3章全てをヤマブドウワインのために割り当てています。ヤマブドウワイン、私もどこかで飲んだことがあるのかもしれないけれど、記憶に残っていません。

永田さんが紹介されていた「五箇山人形山天然葡萄果実酒」は富山県の医師、藤井宗清先生が醸造されていたものだそうです。早速、藤井酒造場を検索してみましたが見つかりません。多分廃業されたのだと思います。

ヤマブドウは酸味が強く、色素が濃いのが特徴で、ヨーロッパのワイン専用種やその他の品種でもこれほどのものはないそうです。ヤマブドウは果房を水洗いしただけで、洗い水が薄い青色になるほどだとか。これはアントシアニンという色素によるものです。ヤマブドウはアントシアニンの含有量が多いそうです。アントシアニンは、目によいポリフェノールとしてサプリメントにもなっていて、よく知られています。

ヤマブドウ100%でワインをつくっているのは、調べてみると白山ワイナリーが福井県にありました。

こうやって本を読むと改めてヤマブドウワインを飲んでみたくなりますね。

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