ウイスキーとビールの発酵は途中まで似ているが、乳酸菌が出てくるのは?

ウイスキーの科学を読みました。とてもよい本です。本当に面白くてためになる本でした。食品について勉強している農学部の学生が読むと、とても楽しく読めると思います。

私はビールが一番好きで、次が日本酒、その次にウイスキーです。ウイスキーは普段飲みませんが、山が好きなので山に酒を持っていくならアルコール度数が高いウイスキーが重さに対しての酩酊効果が高いのでよいです。

このところ、熟成について本を探しています。一番知りたいのは味噌の熟成についてなのですが、なかなか本が見つかりません。まずは、探しやすいウイスキーの本を1冊と思ってこの本を読み始めたのですが、実に面白くて、熟成に行く前に、ウイスキーの発酵について書いておきたいと思いました。

この記事では、モルトの製造と、その発酵、ビールの発酵との違い、活躍する微生物について書きます。ウイスキーには乳酸菌も登場します。

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モルトの製造

モルトは、発芽した大麦のことです。大麦には、「二条種」「四条種」「六条種」がありますが、ビールやウイスキーに使われるのは、「二条種」で一番粒が大きく、デンプンの含有量が一番多い品種です。

大麦の種子は、発芽するときにデンプンを分解するアミラーゼをつくります。それはもちろん、芽や根を伸ばすエネルギー源であり、ブドウ糖や麦芽糖に分解して使われます。

モルトをつくるには、種子の重さの30%くらいの水を吸わせます。温水に浸したあと、適量の空気を送風します。これは種子に呼吸させるためです。発芽には酸素が必要です。

ちなみに、私は玄米について少し似たようなことをやったことがあります。呼吸させると真冬の寒い時でも玄米の温度が上がってくるのです。穀物は種だなと思ったものでした。

その後発芽し始めた大麦種子を乾燥させて発芽をストップさせます。この時水分量は5%くらいになるまで、なるべく速く、温度をあまり上げずに乾燥させます。

こうするとデンプンとデンプンを分解するアミラーゼが準備された状態で保存されます。

水分量5%とは相当な乾燥です。私は毎日玄米を炊いて食べていますが、室内に置いた玄米の水分量は20%近く、17、8%はあります。もし5%まで乾燥させたら、多分、お米は割れてしまいます。

大麦種子は一度発芽すると当然のことながら水を要求しますから、一気に乾かして生長を止めてしまうのでしょう。

デンプンの糖化

乾燥されたモルトは、粉砕され、4倍量の温水に懸濁されます。よくかき混ぜられるわけです。温度は60℃~65℃に保たれます。これはかなり熱いですね。

するとアミラーゼが働いて、デンプンがマルトース(麦芽糖)やグルコース(ブドウ糖)に分解されます。マルトースは二糖類で、グルコースは単糖類です。マルトースの方が大きいです。

さらに十分にこのアミラーゼを働かせるために75℃の温水を加えてよく混ぜられます。アミラーゼはずいぶん高い温度で働くのです。沸騰はしていないけれど、手を入れられない温度です。

こうして、できた麦汁の中には、マルトースを主成分とした糖分が約13%含まれています。

ここまでは、ビールの製造と変わりません。ビールの原料も発芽した大麦であるモルトです。

ビールにはホップを加える

デンプンを糖化させる工程で、ビールの場合はホップを入れます。ホップにはいろいろな種類があり、また、初期の段階で投入すれば苦みを与え、終了間際または直後に入れれば香りをつけることができます。

ホップを入れてないビールを飲んだことがないので、ホップが入らないとどんな味になるのか分かりませんが、ホップを入れるようになったのは、苦みや香りのためではなく、ホップを入れて煮た麦汁から作ると腐りにくく長持ちするということからだったようです。

ホップ

ホップ

ウイスキーは蒸留しますが、ビールは発酵させて終わりなので持ちをよくすることは大切です。ホップには抗菌活性があります。

また、保存性を上げるためでしょう、ビールの場合は、糖化行程の最後の方だと思いますが、100℃近くで煮沸するようです。こうすれば余分な雑菌のいない麦汁ができます。

発酵させる

マルトースを主成分とした糖分が約13%含まれた麦汁は、次に発酵工程に入ります。

アルコール発酵をするのは酵母ですが、酵母は、二糖類であるマルトースでも単糖類であるブドウ糖でもアルコールにします。糖分が13%の麦汁は、アルコール分6~7%の発酵モロミになります。

発酵工程で、ビールとウイスキーを比べると、ウイスキーの方が一見、ややアバウトな感じがします。

ビール醸造は、発酵温度は10℃くらいに保たれますが、ウイスキーでは、酵母が増殖するのに適した27℃(20℃~35℃)に設定されます。さらに、最初に加える酵母の量も、ウイスキーの方がはるかに多いのです。酵母が多いと発酵がどんどん進みます。

そのため、発酵期間は、ビール醸造の場合は、10日以上かかるのに比べ、ウイスキーの場合は、わずか1日~2日でアルコール発酵が終わってしまいます。

何でこんなに差があるのだろうと調べたら、これはビールの製造法に理由がありました。

ビールの下面発酵と上面発酵

サンクトガーレンさんのサイトにあるサンクトガーレンの特徴で説明されていました。ビールにはラガービールとエールビールがあり、私が普段飲んでいるのは、ラガービールです。そして上で説明されていたのもラガービールです。低温で発酵させるのは下面発酵といって、ビール酵母は液面の下で活動し、「すっきりとシンプルな味わいのビール」になるそうです。確かにそうです。

一方、エールビールは、20度前後の高温で4日程度の短期間で発酵を終えてしまう方法です。こちらは上面発酵といって、ビール酵母は液面の上で活動し、アルコールと酸がエステルをつくって、果実のような香りがつくのが特徴です。酸は酢酸でしょうか。

ウイスキーに香りをつける

ウイスキーの発酵には、ウイスキー酵母と呼ばれるアルコール生産能力が高い酵母と、エールビールの醸造に使われる、エール酵母の仲間を使い、混合発酵させるそうです。香りが複雑になり、味に厚みが増すのだとか。

ウイスキーのモロミでは、エチルアルコールより大きい高級アルコールができたり、香りの成分となるエステルも、エチルアルコール由来の酢酸(炭素数2)エステルだけでなく、脂肪を構成する脂肪酸由来の、カプリル酸(炭素数8)、カプロン酸(炭素数6)、ラウリン酸(炭素数12)、パルミチン酸(炭素数16)とエチルアルコールからなるエステルもつくられます。エステルは、香り成分になりますからね。

まるで吟醸酒の話みたいですね。

ウイスキーでは最後に乳酸菌が働く

酵母によってアルコールがつくられ、そろそろ終わりになると、酵母と入れ違いに活躍しはじめるのは、ラクトバチルス属の乳酸菌です。

わが家でできるこだわり清酒で書きましたが、日本酒の醸造の場合は、乳酸菌が先に出て来て酵母が働く環境を整えていたのですが、今度は逆です。

本当に酵母と乳酸菌はセットになって活躍します。

乳酸菌ですから、酵母が利用できなかった糖を分解して、乳酸をつくります。さらに香り成分のエステルを増やすようです。

また、出来上がったアルコールは、乳酸ができて酸性になりますから、アルコール+酸で雑菌が繁殖にくい環境になります。

乳酸菌の種類は、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)が活躍し、後半は、ラクトバチルス・ガゼイ(Lactobacillus casei )が交代します。ラクトバチルス・ガゼイって、乳酸菌飲料でとても有名な乳酸菌ですね。

すると、あの乳酸菌飲料は、酒飲みにやさしいのかなと思ってしまいました。

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