以前、大豆イソフラボンが女性ホルモンに似ていて代わりになるといわれてちょっとしたブームになった時代がありました。
その後、ブームは去りましたが、大豆が体によいのは昔からよく知られていることです。
その後、大豆イソフラボンを腸内細菌が分解して、エクオールという物質ができることが分かり、大塚製薬から2014年4月、大豆由来のエクオール含有食品が発売されました。
エクオールは、やせる! 若返る! 病気を防ぐ! 腸内フローラ10の真実という本で知りました。腸内細菌が関係しているなら調べたくなります。
この記事では、エクオールについて書きます。
腸内細菌がつくるエクオールとは
女性ホルモンと形が似ていると同じように働く
下の図を見てください。この記事で中心となるエクオールは、2段目にあります。ダイゼイン、ゲニステインはあとで説明しますがまず、これら3つをよく見比べてください。
このような化学式は構造式といいますが、意味を考える必要はありません。形が似ているかどうかそれが重要です。
エクオールには、あまり出っ張りがなく、割りとツルッとしている印象です。
もし、これら3つから一番下のエストラジオールと一番似ている形のものを選べといわれたら、どうしますか?エクオールとダイゼインで迷うところです。
ダイゼインとエクオールを比べてみると、ダイゼインについていた=O(酸素)が、エクオールではなくなっています。わずかな差ですが、エクオールの方が、よりエストラジオールに近づいています。
腸内細菌が作り出す大豆イソフラボン代謝産物の有用性と安全性によると、エクオールは、ダイゼインに比べ、エストロゲン活性がより強いのだそうです。つまり、エストロゲンのように作用する力がダイゼインより強いということです。
構造が似ていると、同じような働きをすることはよくあります。もちろん、エクオールのように、より形がエストラジオールに似ていれば、エストラジオールと似た働きをします。
エストラジオールは、卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)の主成分のことです。女性ホルモンの主成分です。
エクオールは、腸内細菌によってダイゼインからつくられています。ヒトがダイゼインを含むものを食べると、腸内細菌が分解してくれてできたものがエクオールです。
エクオールは日本人の約半分しか作れない
味噌や醤油など大豆発酵食品には、ダイゼインが含まれています。なんだ、それなら、エクオールはヒトの腸内で普通につくられるのだなと思ったら、そうでもないのです。
この論文を読むと、日本人の30%~50%の人しかエクオール産生菌を腸内にもっていません。全員ではないのです。ちなみに、エクオールは、ヒト以外の動物では個体差なく産生されるそうです。
もし、腸内にこのエクオール産生菌を持たない人は、大豆を食べてもダイゼインのままからだに吸収されるだけです。
エクオール産生菌は乳酸菌
エクオール産生菌は、1997年以降いくつも見つけられていますが、ほとんどがヒト由来です。ヒト由来とは、糞便から発見されたものです。
中でも乳酸菌に属する ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)は、エクオールを作る能力が高く、ラクトコッカス20-92菌として使われるようになりました。
エクオールの期待される効果
更年期障害の改善
エクオールは、機能性が高く、高機能イソフラボン代謝物として注目されています。上で書いたように女性ホルモンに形が似ている物質なので、女性ホルモンと似た働きをします。
閉経後の女性は、いわゆる更年期障害のさまざまな症状に悩まされるものですが、それらを緩和することが期待されています。 また閉経後の骨粗鬆症予防効果も期待されています。
がん予防
また、エクオールのガン予防効果が期待されています。乳ガンリスクの低さとエクオール産生量の多さに相関があるという報告やエクオール濃度の高い男性は、前立腺ガンのリスクが低いといった報告があります。(出典)
血中コレステロールと中性脂肪の改善
脂質代謝に関係があり、大豆加工食品を食べ、エクオール濃度が高い人ほど血中コレステロールと血中トリグリセリド(TG:中性脂肪)が低下する効果が報告されています。
エクオール検査
自分がエクオールを作ることができるのかどうか調べるには、病院で検査する方法と、検査キットを買って試料を送る方法があります。
病院で検査してくれるようです。ちょっと検索すると出て来ます。料金は¥4,860~
また、エクオール検査キットがアマゾンで販売されています。
女性の健康を応援する / エクオール検査「ソイチェック」が販売されていました。¥4,104でした。自分でエクオールが作れるかどうか、検査するキットです。自宅で尿を採取して送ると10日ほどで結果が返送されてくるようです。この会社は名古屋大学発のベンチャーのようです。
レビューが90ついていて、☆5つと☆4つが大半なので、評判はなかなかなようです。
さて、次に以前、2000年頃でしょうか女性向けに流行っていた大豆イソフラボンとは何だったのか説明しましょう。
大豆イソフラボンとは何か
大豆イソフラボンは、女性ホルモン(エストロゲン)のような作用があり、乳ガンや骨粗鬆症の予防効果が期待されるといわれていました。女性は閉経後、急激に女性ホルモンの分泌量が減り、いわゆる更年期障害に悩まされる方が多いです。
大豆に含まれるイソフラボン類の主成分は、「ダイジン」(ダイズから名づけられたのでしょうね)であり、副成分として、「ゲニスチン」が含まれます。
これらは配糖体と呼ばれ、イソフラボン類の基本骨格にブドウ糖が結合している構造をしています。
ところが、大豆加工食品をつくる時に、大豆中に存在するβ-グルコシダーゼという酵素によって、結合しているブドウ糖が外れて、ダイゼインやゲニステインになります。
もう一度同じ図を載せます。
これらが、女性ホルモンエストロゲンの一つエストラジオールに構造が似ているので、植物エストロゲンと呼ばれ、使われるようになったのです。
下図のダイゼインとゲニステインを見てエストラジオールと比べてみてください。化学式が分からなくてもよいのです。-Oは酸素、-Hは水素、-OHは酸素と水素からなる水酸基です。形とついているものの場所を比較してみてください。
形が似ているかどうかが重要です。
ゲニステインより、ダイゼインの方が余分なものが少ないので、よりエストラジオールに似ているのが分かると思います。
似ているものは「同じ作用をする」という原則があり、女性ホルモンに似た働きをしてくれるものとして使われました。
大豆イソフラボンはなぜ使われなくなったか
しかし、大豆イソフラボンブームは終わってしまいました。もし、それなりの効果が出ていたら、長く続いていたと思います。
つまり、日本人女性にとって、大豆イソフラボンはあまり効果的ではなかったようなのです。なぜなのでしょう?
やせる! 若返る! 病気を防ぐ! 腸内フローラ10の真実には、このように書かれていました。
もともと日本人が大豆をよく食べていることがあったと考えられます。味噌、醤油、豆腐、納豆・・・ふだんの食生活のなかで大豆を口にしないことはありません。つまり、ほとんどの日本人はすでに大豆イソフラボンの恩恵を受けていました。そこに、健康食品として大豆イソフラボンをプラスしても、大きな効果は出なかったのです。
この本は、NHKの番組をベースに作られた本なので、書かれてはいませんでしたが、取材したメーカーの見解ではないかと思います。
エクオールによれば、味噌や醤油にはダイゼインとゲニステインの含まれる割合が豆腐より多いと書かれていました。やはり、発酵させるとより小さく分解されるのです。
まずは大豆を食べよう
日本人の2~3人に1人が自分でエクオールをつくることができます。もし、自分でエクオールをつくることができるなら、サプリメントはまったく必要がありません。
しかし、世代でみると年齢が下がるにつれてこの比率が下がるようです。 中高年女性は約5割の人がつくることができますが、若い女性はその比率が下がります。 なぜ、世代によって比率が変わるのか詳しいことはまだわかっていないようですが、食生活の変化が一因としてあるのではないかと考えられています。
もちろん、大豆を普段よく食べる人には、エクオールをつくることができる人が多いようです。普段食べるものによってお腹の中に棲む菌が変わるのは、十分に考えられることです。
ヒトのからだが刺激に適応していくように、腸内細菌も入ってくる食べ物に合わせて少なくともバランスを変えるでしょう。まずは、大豆からできた、豆腐、納豆、味噌、醤油などを毎日食べるようにするとよいと思います。
私が小学生の頃は、よく大豆は畑のお肉といわれたものです。大豆は良質なタンパク源です。肉と同じくらいの割合でたんぱく質を含みます。
納豆についてたくさん記事を書いています。納豆は栄養としても、お腹の健康のためにも、そして血管を守るためにも役に立ちます。


