死んだ乳酸菌でも効果があるという話

人の健康は腸内細菌で決まるを読みました。この本は腸内細菌の研究の第一人者、光岡知足先生の本の中で、現在、一番新しい本だと思います。この技術評論社の知りたいサイエンスシリーズは、よい本が多いです。ページ数の割に内容に広がりがあり、さらに興味があれば別の本を探そうという気になります。

この本も細菌の発見からスタートし、腸内細菌学、腸内フローラを改善する食事、食物繊維のことなどかなり広範囲のことが書かれています。

しかし、私が知りたいと思ったのは、ヨーグルトのことです。

ヨーグルト論議は、生きている菌がよい、死んでいる菌でもよい、植物乳酸菌なら腸まで届くからよい、植物乳酸菌は動物乳酸菌よりもよいなどなど・・・いろいろな話があります。

私は、生きた菌を飲んだ方ががよいというイメージを持っています。ヨーグルトを日常的に作っているので余計そう思うのかもしれません。そして、ヨーグルトを食べるのと食べないのでは明らかにお腹の調子が違います。

この記事では、光岡先生の実験によって分かった死んだ乳酸菌でもお腹の健康に効果があるという話を書きたいと思います。

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日本人と乳酸菌

腸が免疫にとってとても大切な場所であり、お腹の調子を整えることが健康維持に大切だといわれ始めたのは、1990年代の終わり頃でしたか?免疫が話題になり始めてからのことです。

現在では、乳酸菌飲料、乳酸菌サプリメントやヨーグルトを食べる人がとても多くなり、スーパーに行くとヨーグルトや乳酸菌飲料の種類は昔では考えられないほどあります。

ところで、日本人と乳酸菌、発酵乳のつき合いが始まったのは意外と古かったのです。

1894年(明治27年)には日本で初めてのヨーグルトが製造販売されるようになりました。

1917年(大正6年)京都の医師正垣角太郎がヨーグルト「エリー」の販売を開始。
1917年(大正6年)山本治郎平が乳酸菌製剤「ビオフェルミン」を開発。
1919年(大正8年)三島海雲が「カルピス」を開発。

1935年(昭和10年)代田稔が「ラクトバチルス・アシドフィルス・シロタ株」の分離培養に成功し、「ヤクルト」を開発。
1950年(昭和25年)明治乳業がヨーグルトの工場生産を開始。

もともと牛乳をのむ習慣がなかった日本人ですが、大正時代にビオフェルミンやカルピスが発売されていたとは知りませんでした。

メチニコフと乳酸菌

メチニコフは1907年に出版された著書「長寿の研究」の中で、ヨーグルトに含まれる乳酸菌に腸内の腐敗菌の増殖を抑える働きがあることに言及しています。

「ヨーグルト不老長寿説」のおかげで乳酸菌、ヨーグルトブームが起こるのですが、この著書の中には、多分(今でも)あまり知られていないことも書かれていました。それは、死んだ乳酸菌のことです。

メチニコフは、乳酸菌を加熱殺菌してマウスに与えても生菌と同じように生育し、中には生育状態がさらに向上し、糞便中の菌数が低いケースもあることを発見していました。そして、「腸内腐敗を抑えるのは乳酸菌そのものではなく、乳酸菌によって生成された別の物質である」と論じています。

その後、人の腸内に繁殖している乳酸菌は、ヨーグルトに入っているラクトバチルス属のブルガリア菌ではなく、同じラクトバチルス属のアシドフィルス菌であるという説が広がり、ヨーグルトの乳酸菌は腸内に棲みつかないと考えられるようになり、メチニコフの説は、しぼんで行ってしまいました。

光岡先生の殺菌酸乳を使った実験

光岡先生は、ドイツに留学されていたときに毎日プレーンヨーグルトを500ml(結構多いですね)食べていて、お腹の調子がよくなり、便の色がきれいになりあまりにおわなくなることを経験されました。ヨーグルトの乳酸菌は、腸内に残らないが、

光岡先生の行った「マウスの寿命に及ぼす殺菌酸乳投与の影響」実験の概要は次の通りです。

90匹のマウスを1つのグループとし、各グループに

①通常の飼料
②牛乳を14%添加した飼料
③殺菌酸乳を14%添加した飼料

を離乳期から生涯にわたり投与、その寿命を比較しました。③でわざわざ殺菌した酸乳(ヨーグルト)を与えたのは、ヨーグルトの乳酸菌であるラクトバチルス属のブルガリア菌が腸内で定着しないことが分かっていたからです。

あらかじめ殺菌しておくと、生きた菌からの影響が100%排除できますから、生きた菌以外のヨーグルトの効果が分かります。

この実験の結果は、

①のグループは平均寿命84.9週
②のグループは84.4週
③のグループは91.8週

と、③の殺菌したヨーグルトを添加した飼料を食べたグループの寿命が7週間延びました。この結果から、ヨーグルトには寿命を延ばす効果があることが分かりました。しかも、死んだ菌でも関係ありませんでした。

さらに、③のグループの腸内フローラは、ビフィズス菌の菌数が、①②のグループより約10倍高いことが分かりました。

光岡先生の考察は、死んだ乳酸菌に含まれる菌体成分が腸内フローラに何らかの影響を与えているということでした。

菌体成分とは、菌それ自体を構成する成分という意味で、細胞壁、細胞質の中味、DNAその他まるごとを指しています。

もしくは、乳酸菌がヨーグルトの中に分泌した発酵生成物が関与しているかもしれないとも考えられたようです。はっきりとこの物質と特定されたわけではないですが、少なくとも(わざわざ)殺菌したヨーグルトでも効果があるということが分かりました。

さらに、殺菌酸乳の実験はがん細胞の移植についても行われ、殺菌酸乳を与えたマウスにガン細胞を移植すると、その増殖が有意に抑えられることが分かりました。酸乳を発酵させる乳酸菌の培養菌体を与えたグループでもガン細胞増殖を抑制する効果が見られました。このとき、与える菌数が多いほど抑制効果が高まることが分かりました。

これらの実験から、光岡先生は、生きた菌、死んだ菌は関係ない。菌体成分が腸管免疫を刺激すると結論づけられています。

乳酸菌に期待

今は乳酸菌がブームなのか、いろいろな本も出ているので、発酵食品マニアとしてはかなり楽しめます。

ネットではあれは効かないこれは効くというような話がいろいろでていますが、ヨーグルトの銘柄を比べたり、サプリメントの効果を云々するよりも、発酵食品のよさである、割といい加減にやってもそこそこのものが自分でつくることができるという特性を生かして、自作すると面白いと思います。

ビオフェルミンでヨーグルトを作る人もいます。錠剤でない細粒の方を種菌にしているようです。やるなあ!と思いました。自作するようになると、メーカーのヨーグルトはなかなかよい品質だと分かるようになりますよ。

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