小泉武夫「食いしん坊発明家」はとても面白かった

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小泉先生の「食いしん坊発明家」はタイトルだけ見ると、子ども時代の話かと思いましたが、東京農大を卒業した頃からの発明の話が、7つ、実に面白おかしく紹介されています。小説形式で書かないと面白さが伝わらないと思われたのでしょう。

電球

小泉先生は発明家でもあった

(もと)農大の小泉先生の食いしん坊発明家を読みました。

この本は小説仕立てになっていますが、小泉先生が若い頃から発明してきたものの話が7つ書かれています。発明のきっかけや苦労話は面白いものですが、何しろ小説仕立てなので、マンガを読んでいるかのように物語に自由度があり、とても面白いのです。

出てきた発明の話をさらっとご紹介します。本を読むともっと楽しめます。

穀物チーズの製造法

穀類チーズは、牛乳に白米を浸けて吸収させ、それを(セイロで)蒸して、冷ましてからブルガリアヨーグルトの乳酸菌を混ぜて発酵させたものです。40度で3日間時間をかけていました。

もともとは、当時、余っていたお米と牛乳の有効利用を考えたことがきっかけです。

チーズとヨーグルトは似ているような気がしますが、一番の違いは、チーズは水分を抜くところです。(食べたらわかりますね)

日本乳業協会のサイトにあったチーズの製造方法によると、スターターとして乳酸菌を加え、乳を酸性にし、凝乳酵素を加え凝固させます。ヨーグルトでは凝乳酵素は使いません。できたものから水分を抜きます。

穀類チーズは、お米があることで、凝乳酵素が不要になり、水切りをする必要もなくなりました。

この発明は、「穀類チ-ズの製造法」として実際に出願されていました。

この特許は北海道の菓子メーカーに譲渡され、チーズ風味の米あられとトウモロコシのスナック菓子として商品化されたそうです。

カボチャ及び多糖類を多含するウリ科植物及び芋類を原料とする甘味料の製造法

カボチャを蒸して米麹を加え、お湯を足して55℃に保温するとカボチャの甘酒ができます。これを煮詰めてシロップに濃縮し、さらに結晶化させて黄色い砂糖としたものです。

発明のきっかけは、小泉先生が北海道旅行した時に、カボチャができすぎて大量廃棄していることを知ったことでした。

この話も、小説で読むと実に面白いです。長くなるのでとてもここでは紹介できません。是非、本を読んでみて下さい。甘酒を作ったことがある方なら、ご飯に米麹とお湯を加えて60℃程度で保存すると数時間でできることはよくおわかりになるでしょう。お米の代わりにカボチャを使ったのです。

この発明も「カボチャジュース、カボチャシロップおよびカボチャシュガー並びにそれらの製造方法」として出願されていました。

この発明は、北海道に製菓工場を持つ食品会社に譲渡され、カボチャ糖蜜と結晶化された黄色い砂糖が商品化されたそうです。

野菜醤油

キャベツ、ブロッコリ、ニンジン、トマト、サンドマメ、ジャガイモのぶつ切りを沸騰した湯に入れて二時間煮てから、煮熟大豆の潰したものと煮汁を加え、さらに、大豆麹を加え、全体の15%ほどの塩を加え、さらに発酵中の味噌を少し加えて4ヵ月ほど発酵させたもの。上品な甘さがある醤油になりました。

この発明のきっかけは、メモに残していた、大宝律令に書かれていた「草醤」(くさびしお)がヒントになりました。草醤は、野菜を主原料として、そこに大豆と麹と塩を加えて造った醤のことです。

この特許は、愛知県の食品会社に譲渡され、野菜醤油ドレッシングや焼肉のたれを開発したそうです。

ドロリ醤油

醤油に、寒天の主成分を抽出したカラギーナンを主として片栗粉と葛粉を加えた独自の粘稠剤を加えたもの。ドロリとした醤油です。

この発明のきっかけは、新聞から若者の醤油離れを知り、なぜなのか理由を考えた時に、若者が好む調味料にはドロドロとした粘着性があることに気がつき、ドロリとした醤油だと支持されると考えたのです。

この特許は、大阪にある調味料製造会社に譲渡され、「トンカツ醤油」「コロッケ醤油」「カキフライ醤油」などが商品化されたそうです。

エビラード

エビを剥いて肉身と殻に分け、頭付きの殻と身から外した殻だけをラードで揚げ、殻が真っ赤になりそこからやや黒ずみはじめたところですくい上げ、ラードを急冷します。エビの香りが移ったラードができ上がります。

なじみの中華料理屋でテストしたところ、当時はめずらしいエビラーメン、エビチャーハンができました。身が少なくてもエビの香りがちゃんとするところがポイントです。コストパフォーマンスがとてもよい。

この発明、もともとは実家で作っていたニンニク揚げがヒントになりました。エビの殻は廃棄されるものなので、有効利用になり、特許出願しました。

この特許は、製菓会社からオファーが来て、エビラードをエビ煎餅やエビをスナック菓子に使いたいということだったそうです。私などは、子供の頃に大人気だったかっぱえびせんか!?と思いましたが、残念ながら会社名は書かれていませんでした。

液体納豆

液体納豆とは、豆腐のおからを原料にし、納豆菌を液体で培養し、固体の納豆と同じ栄養成分をもった液体を得て、納豆のヌラヌラと匂いを灰汁(あく)で除き、さらにレモン汁を加えて香りをつけたものです。

この発明は、栄養価が高くまた健康にもよい納豆を食べられない人が結構いることを知ったことがきっかけで生まれました。納豆を食べられない人は、ヌラヌラすることと、匂いが嫌いだと知り、ヌラヌラと匂いを取り除いた納豆を作れないものかと工夫されたのです。

この発明は、「液体納豆の製造法」として実際に出願されていました。

この特許は、納豆をあまり食べない関西の飲料会社に譲渡され、『ナットク』という商品名で販売されたそうです。ネット検索では残念ながらわかりませんでした。

液体松茸

松茸などきのこは菌類です。傘をつけた松茸は子実体といいますが、もともとは菌です。松茸菌を培養して増やすのがこの発明です。

培養液は、水と、米ぬか、麬(ふすま)、ぶどう糖、ジャガ芋、酒粕からなり、そこに松茸菌を植えつけ、20日の時間をかけて培養します。子実体は形成されないけれど、液体中での培養でも松茸の芳香とうまみが集積できることができました。

この特許は、大手の調味料会社に譲渡され、「松茸の汁(つゆ)」をつくったそうです。あれか!

NOTE

調べてみると、小泉先生が発明者に名を連ねている特許出願は70件ほどありました。食べることが大好きで発酵食品を研究する大学の先生だ(った)と思っていたのですが、小泉先生は、発明家でもありました。本に出てくる発明の名称が微妙に変えてあるのは、譲渡したものなので何か事情があるのかもしれません。

すべての話に共通するのは、先生の興味の広さと東京農大の面倒見のよさです。以前、東京農業大学「食と農」の博物館に行った時、2Fには卒業生の酒蔵の日本酒が並び、1Fには卒業生の会社と商品を紹介するコーナーがありました。

東京農業大学「食と農」の博物館 世田谷区
東京農大から少し先、馬事公苑の手前に「食と農」の博物館がある。入場料は無料で、館内にはレストランもある。吹き抜けで天井がすごく高く、近所の奥さま方のアシスト自転車がたくさん並んでいた。この記事は長いので、先に基本情報を書いておく。「食と農」

この本について、【著者に訊け】小泉武夫氏 「発酵仮面」の自伝的青春小説というインタビュー記事がありました。

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