夏になると、素麺や、トコロテンが食べたくなります。そういえば、ぷるんとした食感のものに、くず餅があります。冷やしたくず餅に黒蜜かけて食べたらおいしかったなと思いました。しかし、くず餅は小麦粉から作る発酵食品でした。
私はたまに川崎大師に行ったり、池上本門寺に行きます。お寺の周辺にはくず餅屋さんがあります。川崎大師は、仲見世通りに出店が多いので、何軒もあります。しかし、私が一番好きなのは、池上本門寺の参道にある相模屋さんです。
本門寺参道の入口には葛粉を使ったくず餅屋さんもあります。しかし、関東のくず餅は、葛粉ではなく小麦粉を発酵させたものなのだそうです。葛粉は高級品で、漢方薬の葛根湯にも関係があります。もちろん葛粉のくず餅は高いですよ。
小麦粉とグルテン
小麦粉にはグリアジンとグルテニンが入っていて、小麦粉を水で捏ねるとグルテンができます。麺でもパンでも水でこねるのは、グルテンを作って生地に粘りと弾性を出すためです。
私は以前蕎麦学校に通ったことがありますが、蕎麦の食感をチュルチュルにするにはグルテンを少しだけ足すのです。のどごしがとてもよくなります。
しかし、グルテンはジョコビッチの生まれ変わる食事という本が売れてからあまり評判がよくありません。
くず餅にもグルテンがたくさん入っているのかなと思ったら、その逆でした。小麦粉からグルテンを抜いてデンプンを乳酸発酵させたものから作っているのだそうです。
くず餅の作り方
東京でいう久寿餅(たしかにこんな字でした)は、小麦粉からグルテンを分離させたあとの浮き粉を発酵させたもので作っているそうです。
くず餅の原料と製造工程という記事で詳しく説明されていました。
簡単に説明すると、塩水の中で強力粉(タンパク質が多い)を攪拌しグルテンを作ります。グルテンができると、残りはデンプンなので、分離します。
できたグルテンは、「麩」(ふ)の材料になるとか。なるほど。
デンプンを乳酸菌で発酵
デンプンは水の中に入れたまま1年くらい置かれます。このときに乳酸発酵するそうです。できたものはヨーグルトみたいなにおいがするらしいですよ。
しかし、デンプンが乳酸に急に変わるわけはありません。まず、糖化され、それが乳酸になります。
乳酸菌は、どこにでもいるたくましい菌なので、糖を乳酸に分解するだけでなく、デンプンを糖に分解するアミラーゼや、タンパク質を分解するプロテアーゼを持つものもいます。
1年ぐらいおかれても、もちろんすべてが乳酸になるわけではありません。(それでは餅ができなくなってしまいます)
発酵後、酸味や発酵臭を取り除くため、水を入れ替えながらデンプンを何度も洗います。
この発酵デンプンに湯を入れて糊(のり)状にします。それを薄いセイロに流し込んで蒸す。それを冷やしてできあがりです。
なぜ、デンプンを発酵させるの?
なぜデンプンを水に入れて1年も発酵させるのか?かなり調べたのですが、出て来ませんでした。しかし、この工程抜きでは、くず餅のプルンという食感は出ないのだそうです。
ヨーグルトは、乳酸菌のおかげで牛乳から豆腐のような食感のものに変わりますが、あれは、乳酸のおかげです。酸がタンパク質を固めるのです。
しかし、くず餅の場合、最初にグルテンを抜いているのでほとんどがデンプンです。デンプンならわざわざ発酵させなくても、糊を作るのは簡単です。デンプンから糊を作るのは、子供の頃、母親が障子を貼り替える時に作っていました。
デンプンを水に入れて1年も発酵させるという手間を考えた人は、一体どんなところからそのアイディアを得たのでしょうね。
今のところ謎です。