大麦をモルトにする話を詳しく

いやーすごい本を見つけてしまいました。発酵の技法 ―世界の発酵食品と発酵文化の探求という本です。

なぜ、コンピュータ関係の本ばかり出しているオライリージャパンからこのような本が出版されたのかと思いました。500ページくらいの本です。

農大の小泉先生の本も面白いのがたくさんありますが、この本も、ものすごく面白いです。

大麦

レシピもたくさん出ていますが、それ以前の準備にあたる工程も詳しく説明されています。例えば、大麦のモルト処理なんて出ているのですよ。

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大麦の発芽

酒造会社の方が書かれたビール造りの本でも、モルトについてはメーカーのノウハウになるのかあまり書かれていませんでした。

ビールは発芽させた大麦(モルト)ホップを加えて発酵させてつくります。苦み成分のホップは香りづけと保存性をよくするために添加されます。

大麦を発芽させると、胚乳のデンプンを糖化してエネルギーとするためにアミラーゼが作られます。モルトは糖化したデンプンを得ることです。

日本酒でいうと麹と酛をつくるようなものなのですが、モルトをつくるのはたいてい専門業者がいて、醸造から切り離されてモルトをブルワリーに供給するようになっているそうです。

1998年の調査によれば、米国とカナダでは8つの企業がモルト製造の97パーセントを支配しているそうです。

発芽は低い温度で

大麦をモルト処理するには、外皮の残った大麦を使うように注意することだそうです。大麦のモルト処理には、13℃~16℃の程度の低い温度が最適です。

発芽させるときは温度が低い方がよいのでしょうか。発芽するときは種の温度が上がります。

大麦は、収穫したてでないものの方がよく、発芽させる前に6週間保存しておくのがよいそうです。こういうのは何か必ず意味があります。

水に浸けて空気にさらす

次に、大麦を水に浸してかき混ぜる。

もみ殻が表面に浮いてくるので、水ごと流し出して取り除く。大麦が浸るように必要に応じて水を足し、約8時間水に浸す。こうして浸したあと、水を切ってから換気のよい場所に大麦をさらに8時間置く。

それから再び水に8時間浸す。これは「間欠水浸法」といわれ、空気にさらすことをはさみながら水に浸すことによって、発芽中の穀物に酸素が与えられます。

2度目に大麦を水に浸してから水を切ると、大麦の粒に白いふくらみが見えてきます。これは幼根です。幼根が芽より先に出て来ます。

大麦をもう一度、今度は長めに12~16時間空気にさらしてから、また8時間水に浸します。

浸す時間は、品種、粒の大きさ、タンパク質の含有量、穀物の生理的状態によって変えるようです。

伝統的に水に浸された大麦は長く天井の低い建物の床の上で10cm程度の深さになるように広げられ、10日程度発芽させられます。

また、その際に、発芽中の大麦の温度を下げる必要があるか、それとも上げる必要があるかに応じて作業者は、熊手を使って穀物を広げたり積み上げたりします。

小規模の手作りの人たちは、排水と通気のために底に穴をあけた20リットルのバケツや、床に置いた桶の中でモルト処理をしている人もいるそうです。

重要なことは、大麦に酸素を与えることで、同時に大麦が乾燥せず、湿った状態を保たなくてはいけないのです。そして大麦を頻繁に天地返しして、多くの粒が空気にふれるようにして、発芽を均一なものにする必要があります。

カルキ抜きした水を軽く吹きかけると大麦の乾燥を防ぐことができます。

芽の長さがポイント

発芽が進んでくると、幼根と共に芽も伸びてきますが、このプロセスのほとんどの期間で芽は外皮に隠れています。

重要なのは、幼根でなく、芽鞘という単子葉植物の発芽時に、幼葉を外部から保護する外側の円筒部分が、大麦の長さの3/4から同じ長さになった時に発芽を停止させることです。

これがよいモルトの条件です。最初に水に浸してからここまで約1週間かかります。もちろん、条件はいつも変化します。

こういうことが発酵マニアとしては知りたいところです。

モルトが十分に発芽したら、熱を加えて乾燥させて発芽のプロセスを止めます。これには通常、低温のオーブンか窯が使われます。もし、発芽が続いたとしたら、大麦の中の胚乳のデンプンがせっかく糖化されたのに、成長を続ける胚(芽)によって消費されてしまいます。

窯での加熱にはもう一つ意味があります。窯で加熱するのは、発芽を止めるだけでなく、風味を変化させる働きもあります。窯で加熱することによって、未熟なモルトの望ましくない生の風味を消し去り、心地よいモルトの風味を作り出します。

モルトって、単純にいうと「もやし」です。緑豆もやしも大豆もやしも青臭いようなにおいがします。そのにおいを飛ばしてしまうのです。

窯での加熱温度によってモルトの性質が変わります。例えば、酵素が豊富な糖化性のモルトを作るには、熱による酵素の破壊を避けるために通常は55℃以下の温度で加熱されます。一般的に、窯での加熱は、50℃程度から始めて、ゆっくりと温度を上げていきます。

案外と糖化酵素アミラーゼの活動に適した温度は高いのです。

少量の場合、オーブンを使ってランプを点灯させるか、非常に低い温度でオンオフさせることも出来ます。

まとめ

このような本がオライリージャパンから出版されているのも、大麦をモルトにする方法が書かれているのも、水原文さんによる訳者あとがきを読むと、その理由が分かります。

最近、Maker(メイカー)ムーブメントと呼ばれる活動が世界的に活発になってきています。

これは、あまりにも複雑化しブラックボックスになってしまった現代の工業製品から距離を置き、自分の手でものを作り上げる喜びを取り戻そうという運動であり、それに参加して自分の手でものを作り上げる人たちをMakerと呼ぶのだと私は理解しています。

そして、そのMakerムーブメントとオライリー・ジャパンという会社とは、切っても切れない関係にあるのです。

なるほど。Makerムーブメントが根底にあるのですね。さらに確実にMakerムーブメントの一部になっているのが、料理なのだそうです。

私はタイトルしか知りませんが、「Cooking for Geeks」という本も同じ主旨で出版されたようです。Geeksとはいわゆるオタクのことだとか。

この本もオタクテイストなのかどうかわかりませんが、著者の興味によってところどころで深く掘られている話題が面白いです。

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