食品添加物の酵素について調べてみた

食品添加物の中に酵素があるのです。知りませんでした。どんな酵素があり、どんな役割で使われているのでしょう。調べてみました。

食品添加物というと、保存料や甘味料、うま味成分のアミノ酸のことだとばかり思っていました。

実験室

食品添加物とは

食品添加物という用語は、第二次世界大戦後(1945年以降)使われるようになりました。食品添加物とは|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局によると、次のように定義されています。

<食品添加物の定義>
食品衛生法第4条第2項では、「添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するものをいう。」と定義しています。

<食品添加物の役割>
食品の製造や加工のために必要な製造用剤
食品の風味や外観を良くするための甘味料、着色料、香料など
食品の保存性を良くする保存料、酸化防止剤など
食品の栄養成分を強化する栄養強化剤

現在、指定されている添加物は448品目、既存添加物名簿に収載されているもの365品目、天然香料612品目があります。この中に酵素が含まれています。

食品添加物の酵素

早速、既存添加物名簿を調べてみました。酵素が68個ありました。全部は載せきれないので、上から20個取り出しました。酵素の名前とどのようにつくられたのかを調べました。

食品添加物の酵素は、特定の食品の製造や加工の際になくてはならないものと定義されているようです。

酵素の名称と製法

名称基原・製法・本質
アガラーゼ担子菌 ( Coliolus )又は細菌(Bacillus,Pseudomonas)の培養液より、水で抽
出して得られたものである。
アクチニジンマタタビ科キウイ( Actinidia chinensis PLANCH)の果肉より、搾汁して得られ
たもの、又はこれを、冷時~室温時水で抽出して得られたもの、若しくは膜で濃縮
して得られたものである。
アシラーゼ糸状菌 ( Aspergillus ochraceus, Aspergillus melleus)の培養液より、水で抽
出して得られたもの、冷時~室温時除菌したもの、又はこれより、冷時エタノール
で処理して得られたものである。
アスコルビン酸オキシダーゼウリ、カボチャ、キャベツ、キュウリ若しくはホウレンソウより、搾汁して得られ
たもの、冷時~室温時水で抽出して得られたもの、冷時アセトンで処理して得られ
たもの、又は糸状菌( Trichoderma lignorum )若しくは放線菌(Eupenicillium
brefeldianum)の培養液より、除菌後、濃縮して得られたものである。
α-アセトラクタートデカルボキシ
ラーゼ
細菌(Bacillus subtilis, Serratia)の培養液
より、室温時水で抽出して得られたものである。
アミノペプチダーゼ細菌(Aeromonas caviae, Lactobacillus casei,Lactococcus lactis)の培養液よ
り、分離して得られたものである。
α-アミラーゼ糸状菌 ( Aspergillus aureus, Aspergillusniger, Aspergillus oryzae ) 、細菌(
Alcaligenes latus, Arthrobacter, Bacillus amyloliquefaciens, Bacillus
licheniformis,Bacillus stearothermophilus, Bacillus subtilis, Sulfolobus
solfataricus)若しくは放線菌(Thermomonospora viridis)の培養液より、又は
麦芽より、冷時~室温時水で抽出して得られたもの、除菌したもの若しくは濃縮し
たもの、冷時エタノール、含水エタノール若しくはアセトンで処理して得られたも
の、又は硫酸アンモニウム等で分画した後、脱塩処理して得られたものである。
β-アミラーゼ糸状菌( Aspergillus oryzae )、放線菌( Streptomyces )若しくは細菌(
Bacillus amyloliquefaciens, Bacillus polymyxa, Bacillus subtilis)の培養液よ
り、又は麦芽若しくは穀類の種子より、冷時~室温時水で抽出して得られたもの若
しくは濃縮して得られたもの、又は冷時エタノールで処理して得られたものであ
る。
アルギン酸リアーゼ細菌 ( Alteromonas macleodii, Flavobacterium maltivolum,Pseudomonas,
Xanthomonas)の培養液より、室温時水で抽出して得られたものである。
アントシアナーゼ糸状菌 ( Aspergillus oryzae, Aspergillus niger, Penicillium decumbens)の培
養液より、又は麦芽若しくは穀類の種子より、冷時~室温時水で抽出して得られた
もの又はこれを冷時エタノール又は含水エタノールで処理して得られたものであ
る。
イソアミラーゼ細 菌 ( Bacillus, Flavobacterium odoratum,
Pseudomonas amyloderamosa)の培養液より、冷時~室温時除菌後、冷時~室
温時濃縮して得られたものである。
イソマルトデキストラナーゼ細菌(Arthrobacter)の培養液より、水で抽出して得られたものである。
イヌリナーゼ糸状菌 ( Aspergillus aculeatus, Aspergillus niger, Aspergillus phoenicis,
Penicillium purpurogenum, Trichoderma)の培養液より、室温時水で抽出して
得られたものである。
インベルターゼ糸状菌 ( Aspergillus aculeatus, Aspergillus awamori, Aspergillus niger ) 、
細菌( Arthrobacter, Bacillus )又は酵母( Kluyveromyces lactis,
Saccharomyces cerevisiae)の培養液より、冷時~室温時菌体を回収して得られ
たもの、冷時~室温時水若しくはアルカリ性水溶液で抽出して得られたもの、冷時
~室温時濃縮して得られたもの、又はアセトン若しくはアルコールで処理し、イオ
ン交換処理後、アセトン若しくはアルコールで処理及び透析除去したものである。
ウレアーゼ乳酸菌( Lactobacillus fermentum )又は細菌(Arthrobacter)の培養液を、室
温時水で抽出し、冷時エタノールで処理して得られたもの、又は濃縮し、微温時エ
タノールで処理して得られたものである。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼ細菌(Pseudomonas stutzeri)の培養液より、室温時除菌し、膜で濃縮して得られ
たもの、又はこれをエタノールで処理して得られたものである。
エステラーゼ動物の肝臓、魚類、糸状菌(Aspergillus)、細菌 ( Pseudomonas )若しくは酵
母( Candida,Torulopsis)の培養液より、冷時~室温時水で抽出して得られたも
の、除菌したもの若しくは濃縮したもの、又は冷時~室温時エタノール若しくは含
水エタノールで処理して得られたものである。
カタラーゼブタの肝臓より、水で抽出して得られたもの、又は糸状菌(Aspergillus
aculeatus, Aspergillus awamori, Aspergillus foetidus, Aspergillus niger,
Aspergillus phoenicis,Penicillium amagasakiense )細菌( Micrococcus
lyzodeikticus)若しくは酵母(Saccharomyces)の培養液より、冷時~室温時水
で抽出して得られたもの、温時溶菌後、除菌し、冷時~室温時濃縮して得られたも
の、又はこれを冷時エタノールで処理して得られたものである。
α-ガラクトシダーゼ糸状菌 ( Aspergillus aculeatus, Aspergillus awamori, Aspergillus niger,
Aspergillus phoenicis, Mortierella ) 又は細菌 ( Bacillus
stearothermophilus)の培養液より、室温時~微温時水、酸性水溶液若しくはア
ルカリ性水溶液で抽出して得られたもの、冷時含水エタノールで処理したもの、又
は除菌後、濃縮して得られたものである。

ほとんど名前を見たことがない酵素ばかりです。

酵素の食品加工での使われ方

酵素の製造方法や由来は分かりましたが、肝心なのは用途です。どんな用途に使われるのか調べてみました。

酵素の用途

名称用途
アガラーゼ寒天の主成分であるアガロースの加水分解によ
寒天オリゴ糖の製造には、酸加水分解法と酵
素加水分解法が用いられてきました。酵素加水
分解法の場合にはアガロースを分解する酵素と
して、α-1,3結合を切断するα-アガラーゼ、
ならびにβ-1,4結合を切断するβ-アガラーゼの
2種が知られています。(出典)
アクチニジ
プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)の一種。
主にマタタビ属の果実に含まれる。緑色のキウ
イフルーツやサルナシに含まれるタンパク質の
50%程度を占める。消化管内での食物由来タン
パク質の分解促進作用があるが、キウイフルー
ツアレルギーのアレルゲンのひとつでもある。
食肉軟化酵素として利用する際は、pH6 で作用
させると、筋原繊維の基本構造を維持したまま
筋内膜を分解することが出来るが、pH3 で作用
させると食肉タンパク質が加水分解される。
出典
アシラーゼL一アミノ酸の製造に現在固定化酵素が実際に工
業的に使用されてい る。メチオニンフェニル
アラニン
バリンなどの光学活性アミノ酸を工
業的に生産している。(出典)アミノ酸にはD
型、L型の光学異性体があるが、生体を構成する
タンパク質は、基本的にL型。
アスコルビ
ン酸オキシ
ダーゼ
この酵素はL-アスコルビン酸(ビタミンC)と酸
素(O2)から、デヒドロアスコルビン酸とH2O
を得る反応を進める。穀物蛋白質部分分解物
と、アスコルビン酸オキシダーゼと、ヘミセル
ラーゼとを含むパン用品質改良剤をパン製造原
料に配合することにより、適度な粘度のパン生
地が得られる。(出典
α-アセトラ
クタートデ
カルボキシ
ラーゼ
 油脂の製造時に使われるらしい・・・。
アミノペプ
チダーゼ
タンパク質のアミノ末端から、順次ペプチド結
合を切断してアミノ酸を遊離させる酵素。(
醸造食品の製造工程短縮化に役に立つ。
出典
α-アミラー
アミラーゼ (amylase)とはジ(ヂ)アスターゼと
も称される。α-アミラーゼは別名を1,4-α-D-グ
ルカングルカノヒドロラーゼ、グリコゲナーゼ
といい、デンプンやグリコーゲンのα-1,4-結合
を不規則に切断し、多糖ないしマルトース、オ
リゴ糖を生み出す酵素である。(出典水飴製
製パンクッキー・ビスケット・クラッカ
の品質改良、炊飯飼料などが挙げられる。
出典
β-アミラー
β-アミラーゼは別名を1,4-α-D-グルカングルカ
ノマルトヒドロラーゼ、グリコゲナーゼあるい
はサッカロゲンアミラーゼといい、デンプンや
グリコーゲンをマルトース(麦芽糖)に分解する。
植物や微生物ではよく見られるが、動物からは
見つかっていない。(出典水飴餅菓子
子の老化防止
醸造製パン出典
アルギン酸
リアーゼ
アルギン酸を効率よく分解することができま
す。アルギン酸はコンブ等の褐藻類に多く含ま
れる粘性の高い多糖類です。(出典)リアーゼ
とは分解酵素の意味です。褐藻類から抽出され
たアルギン酸はそのまま食品としてだけでな
く、食品添加物、化粧品、医薬品、工業用品な
ど様々な用途で活用されている。一方、アルギ
ン酸は水に溶解すると極めて高粘性を示すた
め、食品、食品添加物、化粧品、医薬品、工業
用品など様々な用途に適用するためには、アル
ギン酸リアーゼによりアルギン酸を分解するこ
とにより、アルギン酸水溶液の粘度を低下させ
ることが有効である。(出典
アントシア
ナーゼ
これは赤ワインの色のもとであるアントシアニ
ン系色素を分解して、色を薄くしてくれる酵素
です。この酵素を使えば、濃い原料ブドウの色
をほどよい色に変えて、見栄えのよい赤ワイン
の色
をつくれるのです。(出典
イソアミラ
ーゼ
イソアミラーゼ(Isoamylase、EC 3.2.1.68)
は、グリコーゲンやアミロペクチン、デキスト
リンの側鎖の(1->6)-α-D-グリコシド結合を加
水分解する反応を触媒する酵素である。
出典)デンプンを分解する酵素。
イソマルト
デキストラ
ナーゼ
サトウキビより砂糖を製造する過程において、
時としてLeuconostocやStreptococcusなどの乳
酸菌が生育して砂糖からデキストランを生成す
る。デキストランは砂糖の結晶化を妨げる作用
がある。この場合にデキストラナーゼを添加
し、デキストランを加水分解して砂糖の製造
容易にすることができる。デキストランを加水
分解する酵素である。α-1,3-結合の側鎖を加水
分解するイソマルトデキストラナーゼがある。
イヌリナー
イヌリンを加水分解してフルクトースにする酵
素。(出典)イヌリン (inulin) は自然界におい
てさまざまな植物によって作られる多糖類の一
群である。栄養成分表示では糖質ではなく食物
繊維に属する。キク科の植物は肥大した根や地
下茎、それに由来する塊茎などに栄養源を貯蔵
するための手段として利用している。(出典
フルクトースは果糖
インベルタ
ーゼ
インベルターゼは、砂糖(ショ糖)を、構成す
るブドウ糖と果糖に分解(転化)することによ
り、転化糖を作る酵母由来の酵素です。転化糖
は、はちみつに代表されるような上品な甘味と
まろやかな風味が特長で、食品にしっとり感・
やわらかさを与え、色つや・舌ざわりを改善さ
せるはたらきがあります。(出典
ウレアーゼ尿素を加水分解してアンモニアと二酸化炭素に
する酵素。微生物、高等動植物の組織などに広
く分布する。ヒトには存在しない。(出典
類保存
のため酒類に混和することができる。
出典)たとえば、日本酒には酵母由来の尿素
(ウレア)が含まれている。(出典
エキソマル
トテトラオ
ヒドロラーゼ
パン製造時に使用することで、パンの「ボリュ
ームアップ」と「柔らかさの持続」に効果を発
揮します。(出典
エステラー
エステラーゼ(Esterase)は、エステルを水と
の化学反応で酸とアルコールに分解する加水分
解酵素である。(出典)水溶性ペクチン含量が
高い果実を加工する時に、工程中に果汁が固形
化するという問題点があり、それを解決するた
めに加える。(出典)
カタラーゼカタラーゼ(catalase)は、過酸化水素を不均化し
て酸素と水に変える反応を触媒する酵素。
出典)食品の加工中には、変色すること、求
められていない色が着くことなどがある。この
ようなときには、色抜きすることがある。この
色抜きに使われるものが漂白剤である。過酸化
水素は漂白剤であった。過酸化水素は、長い
間、漂白処理後、酵素カタラーゼで分解する方
法でカズノコの処理に限って使われてきた。
出典
α-ガラクト
シダーゼ
ガラクトースどうしもしくはガラクトースと他
の糖とのグリコシド結合を加水分解する酵素。
広く生物界に存在する。加水分解する、ガラク
トースの1の位置のヒドロキシル基の配置によっ
て、α-ガラクトシダーゼ[EC3.2.1.22]
(α-D-galactoside galactohydrolase,
melibiase) とβ-ガラクトシダーゼ
[EC3.2.1.23](β-D-galactoside
galactohydrolase, lactase)がある。(出典
ガラクトースは、単糖類の一つ。無色の結晶
で、水によく溶ける。生物界に広く分布し、エ
ネルギー源になるほか、糖脂質や乳糖分の構成
成分として重要。(出典)ラフィノース(ピー
トオリゴ糖)は、ショ糖(フルクトース+グル
コース)にガラクトースが結合した構造のオリ
ゴ糖(三糖類)です。てん菜に含まれ、てん菜
糖の副産物である糖みつから分離精製されま
す。てん菜のほか、大豆、ユーカリ樹液など植
物界に広く存在しています。ラフィノースはα-
ガラクトシダーゼ (α-GAL) によってD-ガラクト
ースとスクロース(ショ糖)に加水分解されま
す。(出典

まとめ

普段、私は買ったものをひっくり返して成分をよく見る方なのですが、酵素という表記を見たことがないです。食品添加物の表示方法を読むと、酵素は、一括名「酵素」で表示できるそうです。

調べてみた印象では、糖分、甘味の需要が多いのか酵素が使われてる場合が多いのと、あとは、製パンの材料に使われてることが多いなと思いました。

食パンは、町のパン屋さんなら200円から300円が普通の値段ですが、スーパーで安いのを買おうと思えば、100円程度のものもあります。安い原料を使って、上手にボリューム感があり、柔らかさを維持できるようにつくるためには、酵素の力を借りているのですね。

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