今は酵素のCMがよく流れるので、乳酸菌と酵素とどう違うのかとご質問が来ました。
この質問をされた方は、「発酵」食品からヨーグルトと酵素(サプリ・ドリンク)をイメージされて質問されたのだと思います。CMで流れている酵素は、果物や野菜を中心とした原材料が出たり、樽をかき回している画がでてきます。
質問がヨーグルトと酵素の違いなら簡単なのです。それぞれ発酵菌によってできあがった発酵食品の比較になるので。
しかし、乳酸菌と酵素の違いというと、比較する対象の意味が違っています。何でこんな質問になるのか私は何となく分かります。
乳酸菌は、お腹の調子を整えることが分かっています。一方、酵素は、酵素サプリや酵素ドリンクのことを意味していて、これらが、体の中で何かを変化させて特有の効果を持っていると考えられたのでしょう。
酵素サプリや酵素ドリンクって単なる発酵食品なんですけれどね。
このあたり、きちんと説明しましょう。
発酵食品の酵素は商品名
まず最初に、たいていの酵素サプリ、酵素ドリンクの酵素とは商品名のことだと思ってください。高校の生物や化学で習った化学的な意味の酵素とは別物です。
酵素サプリ、酵素ドリンクの本質は、発酵物です。味噌や醤油と変わりありません。材料に種菌を植え付けて一定期間発酵させたものです。
健康食品としての果物や野菜を中心とした原材料を発酵させた、いわゆる発酵食品の酵素の歴史は、だいたい昭和初期からなので80年くらいの歴史があります。その最初から酵素と商品名がつけられていました。それが現在まで続く伝統になっています。
酵素の歴史はこちらにまとめました。かなり長いです。

ヨーグルトも、酵素サプリ、酵素ドリンクも材料の違いはありますが、発酵物、発酵食品としての本質は同じものです。
種菌を接種すると、化学的な意味での酵素を分泌し、原材料を消化(分解)し始めます。
乳酸菌は発酵する時に働く菌
ヨーグルトをつくるときに乳酸菌が働くのを知らない方はまずいないと思います。しかし、酵素サプリ、酵素ドリンクをつくる時にも乳酸菌の力を借りるというと意外に思いますか?
ヨーグルトと乳酸菌
以前、ヨーグルトの種菌はブルガリアからという説明を書きました。

ヨーグルトには国際食品規格があり、ヨーグルトと呼ばれる製品は、いずれの場合も、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の二つの乳酸菌の発酵によって乳または粉乳などからつくられる乳製品であり、最終製品中の菌は生きているもの、とされています。
最初に接種した菌が最後までずっといるわけではないのですが、発酵を始めるためには必要です。
酵素と乳酸菌
これも以前、植物酵素の発酵中の変化は長い時間をかけて進むという記事を書きました。2年以上かけてつくるいわゆる発酵食品の酵素(酵素サプリ・酵素ドリンク)の製造方法について文献が見つかったので、私が発酵過程について疑問に思っていたことが解決できたという内容です。

ところで、この発酵食品の酵素をつくる時に、発酵を始めるためのスターターとして乳酸菌を15種類加えていました。酵素サプリ、酵素ドリンクをつくる時にも乳酸菌を使うことができます。ヨーグルトだけではありません。
また、発酵食品の酵素(酵素サプリ・酵素ドリンク)メーカーは、種菌をとても大切に考えているようで、たいてい企業秘密で教えてくれません。麹を加えたり、酵母を加えたり、酵母だけだったり研究しているようです。
酵素は乳酸菌が出すもの
ヨーグルトも発酵食品の酵素(酵素サプリ・酵素ドリンク)も、発酵し始めると、接種した乳酸菌がまず増えます。乳酸菌は、主にエネルギー源として糖を分解して、乳酸、もしくは乳酸とアルコールをつくります。
このとき、最初に原材料を分解するために消化酵素を分泌します。
発酵というと人の役に立つものをつくってくれる働きだと思いますが、視点を、乳酸菌の立場に変えてみてください。乳酸菌は、自分が生きるために、必死に材料を分解して自分の中に取り込んでいるのです。
われわれが、ご飯を食べるようなものです。食べたごはんは消化酵素でブドウ糖まで分解され、エネルギー源になります。乳酸菌も同じことをやっています。
今までの話の流れで、見出しを酵素は乳酸菌が出すものとしましたが、種菌が酵母でも麹でもみな同じように、材料を自分が利用するために酵素を出して分解します。
ヨーグルトの効果は乳酸菌による
ヨーグルトの効果は乳酸菌によるところが大きいのは間違いありません。
テレビでは生きた乳酸菌のCMが流れ、ビオフェルミンのCMもよく見かけます。生きた乳酸菌は腸まで届かないとか届くとか、植物乳酸菌なら腸まで届くとか外から来た乳酸菌は腸内に定着しないとかさまざまな議論があります。
以前、死んだ乳酸菌でも効果があるという話を書きました。

乳酸菌に関しては、生きているか死んでいるかはともかく、菌数の多さが効果に関係があるのは間違いないと思います。ヨーグルトには、栄養豊富な牛乳を分解して牛乳を飲むと下痢を起こす乳糖不耐症にも大丈夫だとか利点があるのですが、どちらかというと乳酸菌を摂取するために食べているような感じですね。
それもこれも腸内に乳酸菌がたくさん棲んでいるからです。
ヨーグルトのことを考えると、発酵菌が腸内環境を整えてくれるものだと思いますが、発酵食品の酵素(酵素サプリ・酵素ドリンク)はどうでしょう?
発酵食品の酵素は、発酵食品のよさを味わうもの
上でもリンクを貼りましたが植物酵素の発酵中の変化は長い時間をかけて進むでは、発酵食品の酵素(酵素サプリ・酵素ドリンク)の発酵過程が、お酒やヨーグルトや納豆など短期間で発酵を終えてしまうものと違って、かなり時間をかけて進むことが分かりました。
商品によって多少の違いがあるかもしれませんが、基本的に糖蔵食品(砂糖漬け)としての性質があるので、発酵菌の活動はかなり穏やかです。
このような食品は、発酵菌について考えてもあまり意味がないと思います。活動的ではなく、菌数が少ないのです。
しかし、果物野菜を中心にゆっくりと発酵させたものは、たくさんの原材料が消化されやすい状態になっています。実際、飲んで一晩寝れば疲れがとれて元気が出ます。
発酵食品の酵素(酵素サプリ・酵素ドリンク)は、何かを変化させる酵素の働きがあるのではなく、消化吸収されやすいエネルギー源だと考えた方がよいと思います。
まとめ
冒頭に書いた乳酸菌と酵素の違いをまとめておきましょう。
まず化学的な視点から。
- 乳酸菌は生き物で、酵素は物質です。
- 酵素は乳酸菌やその他微生物がエサになるものを分解するために分泌するもの。
もう一つ、商品から効果の違いを考えると。
- 乳酸菌は、腸の働きに影響を与える細菌で、たくさんとるとお腹の調子がよくなります。
- 酵素(酵素サプリ・酵素ドリンク)は、発酵食品です。消化吸収されやすい特徴があり、飲めば元気が出る、エネルギー源になるものです。
植物酵素について詳しくお知りになりたい方は、まず、酵素について知りたいならまず最初にこのページから読んでほしいをお読みください。