ブルガリアヨーグルトからヨーグルトの作り方を学ぶ

私は、ヨーグルトと納豆は自家製造しています。今は豆乳ヨーグルトを作っていますが、以前は牛乳でヨーグルトを作っていました。いろいろなヨーグルトを買ってきては種菌として使いましたが、種菌として安定していたのはなんといっても明治ブルガリアヨーグルトです。

ヨーグルト

6年くらい前からTANICA ヨーグルティアを使っています。ヨーグルティアはとても性能がよく人気が出て、一時品薄になるほどでした。

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豆乳ヨーグルトは、40℃で8時間。納豆は45℃で24時間発酵させています。発酵条件にはとても興味があります。

この記事では、ヨーグルトの温故知新を読ませていただいて知った、ブルガリアヨーグルトの発酵条件について書きましょう。

ブルガリアヨーグルト

ノーベル賞を受賞したロシアのメチニコフが、ヨーグルトを常食しているブルガリア人が長寿であることを発見し、ブルガリアのヨーグルトを「不老長寿の妙薬」として広めた。これをきっかけとして、ヨーグルトが全世界に広がったことは有名な話です。

ブルガリアは、私にとってヨーグルトと、小節の利いた美しい地声のコーラス、ブルガリアン・ヴォイスの国です。

ヨーグルトのような発酵乳が、いつどこで初めて食べられるようになったのかは、歴史を詳しく調べてみないと分かりませんが、ブルガリアでヨーグルトが長く食べられてきたのは間違いありません。

ブルガリアでも、工場でヨーグルトが大量生産される時代になり、自分で作る人は減っているようですが、現在でも、田舎の村に行くと、羊乳を使った昔ながらの自家製のヨーグルト作りが行われているところがあります。

ヨーグルトを作る日

ブルガリアの伝統では、一年で最初にヨーグルトを作る日が決められています。それが、5月6日「聖ゲオルギの日」です。この日は、キリスト教の殉教者であり、羊飼いと家畜の守護神とされた聖ゲオルギをたたえる祝日です。

ブルガリアでは聖ゲオルギの日から家畜の放牧を始めるため、様々な儀礼が行われますが、その一つとしてヨーグルト作りがあり、この日の食卓には必ず新しいヨーグルトを載せなくてはいけないとされているのだそうです。

ブルガリアの伝統では、5月6日の「聖ゲオルギの日」から夏の終わりを告げる10月26日の「聖ディミタルの日」までが放牧と搾乳の期間であり、10月26日以降は、翌年の聖ゲオルギの日まで作り置いたヨーグルトを食べる。これが、ブルガリアにおけるヨーグルト作りの一年のサイクルとされています。

これを読んで、放牧をずいぶん長い間休むのだなということと、10月末に仕込んだヨーグルトは翌年の5月初めまでの長い間保存できるんだと思いました。

放牧を休むのは草が枯れてなくなるからで考えてみれば当たり前のことです。飼料を与えて1年中搾乳している方がおかしいのかもしれません。羊も休めます。

ヨーグルトを自分で作っているので、半年以上保存できるというのがすごいなと思います。普段、ヨーグルトは冷蔵庫に入れていてもだんだん味やにおいや色が変わっていきます。食べながら保存しているので、容器の中に空間が増え、空気に触れるようになるのが原因ですが。それにしても、半年以上とは。

聖ゲオルギの日のヨーグルト作り

初夏の到来を告げる聖ゲオルギの日に初めて乳を搾り、新しい乳を新しい乳酸菌で発酵させてヨーグルトを作ります。

この時使われる乳酸菌の起源として、ドリャン(和名:セイヨウサンシュユ)などの植物の葉にたまった朝露が使われることが多いそうです。朝露の中に含まれる葉に付着していた乳酸菌がスターター(種菌)として使われます。5月6日の朝露こそが最もおいしいヨーグルトを作り出すというのが、昔からの言い伝えだそうです。

セイヨウサンシュユの実はジャムやソース、ジュース、ドライフルーツに使われるようです。

このように記事を書くようになる前だったら、乳酸菌はこんな植物に付いているのかときっと思ったのですが、今まであれこれ読みながら書いてきたおかげでいえます。「乳酸菌はあらゆるところにいます」

ヨーグルトの種菌はブルガリアから

以前この記事に書きましたが、

ヨーグルトの成分や乳酸菌の種類と効果について調べてみた
ヨーグルトについて、国際食品規格と日本の発酵乳の規格に違いがあります。日本の方が自由度が高いです。普通に手に入るヨーグルトに使われている乳酸菌と、期待できる効果について調べてみました。

ヨーグルトには国際食品規格があり、ヨーグルトと呼ばれる製品は、いずれの場合も、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の二つの菌の発酵によって乳または粉乳などからつくられる乳製品であり、最終製品中の菌は生きているもの、とされています。

しかし、これら二つの菌の起源は明確ではなかったそうです。

この論文では、ブルガリアで伝統的に使われてきたセイヨウサンシュユなどの植物の葉に付着していた乳酸菌がどんな菌なのか調べて同定し、ヨーグルト製造業で使われている種菌と比較されました。

その結果、個々の植物によってついている菌株が変わるのではなく、地域によって菌株が変化すること。

そして、これら植物に付いているラクトバチルス・ブルガリカスとストレプトコッカス・サーモフィルスは、市販ヨーグルトに使用されている乳酸菌株と差がないこと。

以上から、今日のヨーグルトの起源の1 つとして、ブルガリアの伝統的なヨーグルトが各国に伝わっていったことが考えられますが、それらに使用される乳酸菌がブルガリアにある原生の植物由来である可能性があると考えられるそうです。

酸素不要で低温で発酵させる

ブルガリアでは、素焼きの壺で作る昔ながらのヨーグルトの作りかたがあります。

絞りたての牛乳(または羊乳)を一度煮立てて人肌くらいに冷ましてから、素焼きの壺に入れ、作っておいたヨーグルトを種菌(スターター)として加えます。その壺を布で包んで保温して放置すると、発酵してヨーグルトになります。

ヨーグルト用の素焼きの壺は中味が濃くなって温度が下がる

素焼きの壺を使うと、発酵中に素焼きの壺が牛乳から水分を吸収します。すると、牛乳は濃縮されます。

さらに、壺の表面から牛乳から吸収した水分が蒸発しますが、蒸発する時に、気化熱を奪うため「低温発酵」になります。夏の暑い日に地面に水をまくと少し涼しくなることと理屈は同じです。

こうして作られたヨーグルトは、なめらかでコクがあり、非常においしいそうです。

ヨーグルトの発酵は、乳酸菌の乳酸生成が最も活発な40 ~ 45℃に設定されるそうです。私はタニカの説明書の通り、40℃にしていました。

素焼きの壺を使った実験では、43℃の培養庫で培養しても気化熱でヨーグルトができあがった温度が37℃になっていたそうです。成分は、1.2倍に濃縮されていました。

温度を下げて37℃では発酵時間が長くなります。メーカーならコストに影響しますが、個人でやるなら関係ありません。温度を下げるとなめらかな組織のヨーグルトができるそうです。今度やってみようと思います。

タニカの容器を使わないで、ちょうどよい大きさの素焼きヨーグルトメーカーみたいなの探して買ってくると似たような条件で作れるかもしれません。

酸素はいらない

さらに、この論文では、酸素条件についても調べられていました。

実験では、乳酸菌を添加する前の乳中の溶存酸素濃度は43℃で6~7ppm程度であったそうですが、発酵開始後、まず乳中の溶存酸素濃度が低下し、0ppm程度に下がった後に乳酸の生成が活発になることが分かったそうです。

乳酸菌は、通性嫌気性菌で、酸素があっても生きて行けますが、酸素がない方が活発に活動するようです。

しかし、これは家庭ではちょっと再現できないですね。

ヨーグルトについて他にも記事を書いています。ヨーグルトについて書いた記事をご覧下さい。

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