お酢にはいろいろな種類がありますが、例えば、普段使っている米酢もりんご酢もぶどう酢も酸っぱい成分は酢酸だとご存知でしたか?私は知りませんでした。少なくとも果実酢はクエン酸など果汁由来の酸が主成分なのかなと思っていました。粕酢、麦芽酢といった少し変わったお酢や果実酢を、作り方と一緒にご紹介しましょう。
農大の小泉先生の醤油・味噌・酢はすごい – 三大発酵調味料と日本人を読んでいます。
醸造酢にはJAS規格がある
酢は3~5%の酢酸を含む酸味のある液体調味料です。米や麦などの穀物、果実などを原料として酢酸菌で発酵させてつくります。果実酢も醸造酢に含まれ、酢酸が酸っぱさの成分です。
醸造酢にはJAS規格(日本農林規格)があります。この分類では、醸造酢が一番工業的に造っている感じがします。
用語 | 定義 |
醸造酢 | 次に掲げるものをいう。
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穀物酢 | 醸造酢のうち、原材料として1種又は2種以上の穀類を使用したもの(穀類及び果実 以外の農産物並びにはちみつを使用していないものに限る。)で、その使用総量が醸 造酢1Lにつき40g以上であるものをいう。 |
果実酢 | 醸造酢のうち、原材料として1種又は2種以上の果実を使用したもの(穀類及び果実 以外の農産物並びにはちみつを使用していないものに限る。)で、その使用総量が醸 造酢1Lにつき果実の搾汁として300g以上であるものをいう。 |
米酢 | 穀物酢のうち、米の使用量が穀物酢1Lにつき40g以上のもの(米黒酢を除く。)をい う。 |
米黒酢 | 穀物酢のうち、原材料として米(玄米のぬか層の全部を取り除いて精白したものを除 く。以下この項において同じ。)又はこれに小麦若しくは大麦を加えたもののみを使 用したもので、米の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上であつて、かつ、発酵及び熟 成によつて褐色又は黒褐色に着色したものをいう。 |
りんご酢 | 果実酢のうち、りんごの搾汁の使用量が果実酢1Lにつき300g以上のものをいう。 |
ぶどう酢 | 果実酢のうち、ぶどうの搾汁の使用量が果実酢1Lにつき300g以上のものをいう。 |
酢酸発酵はエチルアルコールを酢酸にする反応です。次の反応をします。酸素(O2)を使っているのがよく分かります。
2C2H5OH+O2→2CH3CHO+2H2O(エチルアルコールからアセトアルデヒド)
2CH3CHO+O2→2CH3COOH(アセトアルデヒドから酢酸)
醸造酢の中には粕酢があるのですが、ご存知ですか?
粕酢(かすず)
日本酒をしぼった後の酒粕は8%程度のアルコールを含んでいます。酒粕からアルコールを蒸留したものが粕とり(カストリ)焼酎です。
さらに、お酢も造られていたようです。粕酢とは、初めて知りました。小泉先生の本によれば、江戸時代中期の文化元年(1804年)には、今の愛知県半田市で初代中埜又左衞門によって酒粕を原料とした画期的な酒粕酢が考案されたとあります。
半田市で中埜さんといえば・・・、ミツカン酢です。ウイキペディアで中野又左衛門を調べると、ミツカングループの創業家・経営者である中野又左衛門家の当主が受け継ぐ名であるとありました。
酒粕酢は現在でも造られています。お寿司屋さんが使うお酢のようです。
さらにアマゾンで調べたらありました。レビューもなかなかよいのがついています。
ミツカン 三ツ判山吹 900ml
粕酢は次のようにつくられるようです。
粕酢は原料として日本酒製造時に副生する酒粕を利用する。まず酒造期の秋から冬にかけて副生する新粕を、大きな木桶やほうろうタンクに空気を遮断して踏み込み、二~三年貯蔵すると色も茶褐色に変色する。
その間に粕中に含まれる炭水化物やタンパク質(細菌や酵母菌体など)は粕中の酵素による分解や菌の自己消化により、アルコール分、糖分や有機酸、うま味の主体となる窒素成分などが増える。
その長期熟成した酒粕に水を加えて粥状にして室温におく。一日に一~二回櫂入れ(かいいれ)をして静置すれば、夏季で二~三日、冬季で四~五日で発酵が盛んになり、七~一〇日で発酵が終わる。
その間に酵母や細菌の働きでアルコールと酸が増える。発酵の終わったものは濾過し、液と酢粕に分ける。
濾液を澄汁(すまし)という。この汁に種酢を汁と同等か三分の一ほど加え、酢酸発酵を行う。発酵が終わったら常温まで温度を下げ、熟成貯蔵する。熟成期間は三~六ヶ月である。
麦芽酢
ビールやウイスキーを造る時は、麦芽(モルト)を使います。大麦を発芽させたものです。これらから造ったアルコールを酢酸菌で発酵させたら酢になりますが、麦芽酢とは初めて知りました。どんな味がするのでしょうか?ハインツからでていました。
ハインツ ビネガーモルト 355ml
アマゾンのレビューを読むと、「イギリスの伝統料理のフィッシュアンドチップスには欠かしません。」といくつも書かれていたので、フライにかけて食べるような使い方をするようです。
作り方は本当にビールのもとをつくって酢酸菌を足すようなものです。ビールみたいなにおいがするのでしょうか?ビール好きな私は気になります。
麦芽酢では大麦、小麦、トウモロコシなどの穀類デンプンを麦芽で糖化する。麦芽は一般に大麦を原料としてつくるが、自家製造を行っている工場はなく、麦芽製造業者から乾燥麦芽を購入している。
麦芽汁は乾燥麦芽に摂氏六五度前後の水を四倍量加え、四~八時間糖化させ抽出を行う。糖化が終わったら濾過し、濾液と粕に分け、麦汁を得る。これに酵母を加え、摂氏二六~三六度でアルコール発酵を行う。
だいたい五日くらいでアルコール発酵が終わる。この発酵麦汁に種酢を添加し、酢酸菌での発酵を行い、麦芽酢とする。
果実酢
果実酢の基本は、果実を原料としてアルコール発酵を行い、できたお酒に酢酸菌を加えてエチルアルコールから酢を造ることです。
上の表にわざわざ別に書かれていた、りんご酢とぶどう酢について書きます。
りんご酢
りんご酢は1980年代に少し流行りました。その頃、学生だった私も買って飲んでいました。ハチミツを入れて割って飲むと体によいとかCMでやっていたのだったか。
しかし、すぐに飽きてしまってまたいつものミツカン酢にもどりました。味はお酢ですが、確かにりんごの香りがしました。
アマゾンで調べてみると岐阜県にある内堀醸造のフルーツビネガー純りんご酢 1Lがダントツの人気で、高評価のレビューが200個近くついていました。1Lで 1,498円はお酢としては少し高いですか。
レビューを読むと、ほとんどの方が飲むために買っていて、原材料が有機りんご果汁だけなのに、甘い飲み口なのだそうです。
りんご酢はこのようにつくります。
リンゴ酢の原料はなるべく完熟した糖分含量の多いものがよい。世界的には渋みや酸味の強いリンゴが加工原料となる。
日本ではデザートアップルと称される生食用のリンゴを原料とする。また未熟な果汁中にはペクチン質が多く含まれ、製品となってから清澄が困難であるので、酵素剤として市販のペクチナーゼを用いペクチンを分解する。
果実は選別し、十分に水洗いしたのち、(中略)圧搾搾汁する。
外国では細砕したまま酵母を加えて短期間(二~三日)で発酵を終える場合があるが、一般には得られた搾汁はあらかじめ摂氏九五~九八度で殺菌する。
殺菌果汁を使用することによりリンゴ酸やコハク酸が増え、酢酸発酵中も比較的安定し、不揮発酵の多い良質のリンゴ酸が得られる。
糖分含量の少ない果汁にはブドウ糖などを補糖してアルコール発酵を行う。
ぶどう酢
ぶどう酢は、もちろんワインビネガーのことです。外で食事をしたときは使っているのかもしれませんが、私はワインビネガーを買ったことがありません。ワインをほとんど飲まないことが原因かもしれません。白と赤があるようです。
白のワインビネガーは、ミツカン 白ワインビネガー 1Lが人気があるようです。価格が安いです。
赤のワインビネガーは、あまり種類が多くありません。MAILLE(マイユ) 赤ワインビネガー 500mlがレビューが数個ついていました。酸味が強いようです。
白酢と赤酢の二種類がある。白酢の原料は白ブドウで、破砕し、搾汁したものを使う。赤酢の場合は赤ワイン用のブドウを破砕し、色素を抽出させるため果皮と果汁をともにアルコール発酵させて造る。
果汁は摂氏六〇~七〇度に加熱して酢酸発酵の妨害となる細菌類や酵母類およびタンパク質やその他のコロイド質を凝固沈殿させて除去する。
果汁中のペクチン質が濁りや滓の原因となるので、アルコール発酵前に市販の酵素剤であるペクチナーゼで処理する方が望ましい。
このようにしてつくったブドウ果汁をアルコール発酵させた後、酢酸発酵を行いブドウ酢を造る。赤酢は色が赤くてタンニンも多く、白酢と同様やや苦味と渋味を有している。
NOTE
粕酢って面白いですね。粕とり焼酎があるのだから粕酢があってもおかしくないですが、今回初めて知りました。
麦芽酢はとても興味があります。ビール風味なら嬉しいですね。ためしに買ってみます。あちこちにある成城石井でも扱っているようです。
お酢についていくつか記事を書いています。他の記事は、お酢についての記事をご覧下さい。