お酢の抗菌作用ってどのように働くのか

お酢(酢酸)は、雑菌の細胞膜に浸透しやすく、雑菌の中で解離してプロトン(H+)が生じます。菌体内のpHが下がり、酵素が変性して不活性化してしまい、雑菌は死滅します。

これが、お酢の抗菌作用です。

酢

人を助けるへんな細菌すごい細菌―ココまで進んだ細菌利用を読みました。この本は実に刺激的な本で、いろんなことを考えさせてくれます。

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酢酸が雑菌の細胞膜に浸透しやすくて殺菌する?

本の中でお酢の保存性について少し触れられていました。黄色にマーキングしておきました。

食酢の発酵生産の樽の中に生息している細菌は、この菌だけではありません。酒粕、米、清酒などを原料として醸造を行うと、グルコン酸と呼ばれる成分がわずかに混入します。

その割合は0.2パーセントと微量ですが、食酢のよい風味は、このわずかなグルコン酸が紡ぎ出しています。

あまりに高純度できれいな食酢は、かえっておいしくないのです。このグルコン酸を作るのが、グルコノバクター(Gluconobacter)と呼ばれる細菌です。

グルコン酸は、食酢をおいしくするだけでなく、腸内の善玉菌のビフィズス菌の増殖を助け、健康増進に寄与する作用があります。

ところで、飲める酸性の液体はこの世にたくさんあるにも係わらず、それらの中で、なぜ酢が食品添加物として選ばれたのかご存知でしょうか?

それは、酢は他の酸よりも雑菌の細胞膜に透過しやすいからです。雑菌の細胞膜に透過すれば雑菌の働きを抑制できるので、食物の保存性は飛躍的に向上します。

しかも酢は風味もよいので、食品添加物として古くから利用されてきたのです。

これを読んで、少し考えてしまったのです。pHが下がり酸性になると雑菌が繁殖しにくくなるのは常識です。普段、その後のことは考えません。もちろん、今まで考えたこともありませんでした。

しかし、「雑菌の細胞膜に透過しやすい」「透過すれば雑菌の働きを抑制できる」と書かれると、改めて疑問に思い始めました。

一体、お酢を使うとどのように雑菌が殺菌されるのでしょう?

ネットで探して回ると、参考になるページが出てきました。

pHが低下し有機酸の非解離分子が増えると、細胞膜透過性が大きくなり抗菌力が強くなる

(一財)食品分析開発センターSUNATECのサイトに食品工場の微生物制御への有機酸の利用技術という記事がありました。

pHが下がり酸性が強くなると、有機酸が解離しなくなって細胞膜を透過しやすくなり、強い抗菌力を示すと書かれています。

2. 有機酸の抗菌性

酢酸、乳酸、クエン酸を初めとする有機酸には食品の変敗を防止する作用のあることが古くから知られてきた。

有機酸の抗菌性はpH低下によるものと、解離していない有機酸の比率(非解離型が殺菌力が強い)、有機酸自身の有する抗菌力とによるものとがある。

pH低下は酸性保存料であるソルビン酸のように、酸の非解離型分子の比率が増加して細胞膜を通過し易くなり、抗菌力が高まる。

細胞内での代謝による水素イオン濃度の増加に伴う、細胞液の酸性化による核タンパク質の変性に起因する。

脂肪族有機酸の抗菌性をpH変化による非解離分子の影響を除去して比較するために各有機酸を0~0.5%の範囲に添加後、pHを全て5.0に調整して検討した結果、B.megaterium に対する抗菌効果は酢酸>乳酸・コハク酸>リンゴ酸>酒石酸・クエン酸> 塩酸の順で、酢酸が著しく強いのに対しリンゴ酸以下は微弱であり、塩酸はほとんど認められない。

この抗菌力の強さはpH5.0における各有機酸の非解離型分子の濃度比率の大小とよく一致しており、解離恒数の小さいものほど抗菌性が強い。

有機酸は炭素化合物の酸

有機酸とは有機物、炭素化合物の酸のことです。カルボキシ基(-COOH)を持つカルボン酸です。

文中に出てきた、ソルビン酸はこんな構造式です。炭素数6で二重結合が2個ある不飽和脂肪酸です。

ソルビン酸

酢酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸とも構造式を見ると、皆、有機酸だと分かりますね。

有機酸有機酸の非解離型分子

酸の非解離型分子なんていわれるとむずかしく感じてしまいますが、説明しましょう。

下の酢酸を見ていただきたいのですが、酢酸は、カルボキシ基から水素イオン(H+)が外れて解離します。水素イオン(H+)が多くなると、pHが下がり(数値が小さくなる)ます。酸性が強くなります。

他の有機酸も同じようにカルボキシ基から水素イオン(H+)がそれぞれ外れて解離します。

非解離型分子というのは、下図では、電離していない酢酸のことをいいます。その他の有機酸も同じです。

酢酸解離

一般に有機酸は弱酸であり水中でも解離しにくいのが特徴です。水素イオン(H+)が多い酸性溶液の中では、さらに解離しにくくなります。

解離していない有機酸は、細胞膜を透過しやすいというのが特徴です。
そして、有機酸では、pHを5.0に揃えると、酢酸>乳酸・コハク酸>リンゴ酸>酒石酸・クエン酸> 塩酸(塩酸は有機酸でない)で一番抗菌効果が高いことが分かりました。
ちなみに、塩酸(HCl)はよく知られているように強酸で、ほぼ解離している酸です。
また、B.megateriumBacillus megaterium(バチルス・メガテリウム)のことです。巨大菌と呼ばれているそうです。(出典
細胞膜を透過した有機酸がどのように働くのかさらに詳しい説明がありました。

非解離状態の有機酸は菌体内で解離し、pHを低下させて菌の酵素が障害されて死滅する

まず、読んでみましょう。重要なところにマーカーでラインを引いておきました。

3.有機酸の抗菌機構
非解離状態で微生物の菌体内部に侵入した有機酸が菌体内のpHにより解離され菌体内のpHを低下させ酵素等が障害を受けて修復不可能な状態によって起こる。
この機構はそれぞれの有機酸の微生物菌体への付着性、細胞膜透過性、有機酸の親水性、有機酸の疎水性によって影響を受ける。有機酸は解離した状態ではイオンの形となり微生物菌体の表面に吸着する
非解離状態では細胞膜を透過して菌体内に容易に侵入する。つまり解離している酸は菌体内に侵入せず(アルカリ側)非解離の有機酸は菌体内に侵入(酸性側)する。
菌体内に侵入した非解離型有機酸は解離してプロトンが生成する。菌体内のpHが低下し、酵素が不活化し、死滅する。細胞内のプロトンを排除するのにエネルギー消費し増殖が遅れる。
有機酸はそれぞれ固有の解離定数を有し、解離定数により非解離状態が予測できる。弱酸は強酸より非解離分子が多いので抗菌作用は強い。
有機酸の解離状態はpHにより影響され、弱酸は高いpHでよく解離し、強酸は低いpHでよく解離する。
まとめると次のようになります。
  • 解離した有機酸は、菌体の表面に吸着して、内部に入れない。
  • 非解離の有機酸は、細胞膜を透過して菌体内に侵入する。
  • 菌体内で有機酸は解離し、プロトン(H+)が生じる。
  • 菌体内のpHが下がり、酵素(タンパク質)が変性、形が保てなくなり、不活性化する。
  • そのため菌は生存できなくなる。
  • もしくは、菌体内からプロトン(H+)を排除するのにエネルギーが使われるため、菌の増殖が遅れる。

お酢(酢酸)はからだの細胞には害はないのかな

有機酸で一番抗菌作用が強いのは、酢酸でした。食品の保存のため雑菌は殺菌したいですが、雑菌も細胞です。そして、ヒトのからだも細胞からできていて、基本構造はそれほど変わりません。

糖を分解してエネルギーを得る仕組みもほぼ共通しています。

しかし、酢酸が雑菌の細胞の中で酵素を不活性化し、殺してしまう毒として働くなら、ヒトの細胞の中でも同じ働きをするのではないかと思ってしまいます。

しかも、疲労回復のためにお酢を飲んだり、酸っぱいものを食べる機会は毎日のようにあります。なぜ平気なんでしょうね?

考えてみました。

血液や体液は弱アルカリ

まず、消化管の粘膜は粘液で覆われているのが酸の刺激を和らげます。

そして、ヒトの血液や体液が弱アルカリ性だから、酢酸は細胞に侵入する以前に解離してしまいます。 血液の場合、pHが 7.35~7.45の間に保たれているそうです。(出典

胃の中はpH2程度の強酸の環境ですが、それ以外は弱アルカリに保たれています。

そのため、雑菌のようにはならないのでしょう。もちろん、実験室でヒトの細胞だけを取り出して酢酸の中に入れたらどうなるのかは分かりませんけれども。

まとめ

酢酸は、ミトコンドリアの中ではアセチルCoAになりエネルギー源となります。またコレステロールを作る材料にもなります。

からだの中ではとても役に立つ存在です。

今回、酢酸の抗菌作用の仕組みを知ることができました。独特のにおいがあるので嫌いな人が意外と多いですが、実に役に立ってありがたい存在です。

私は、いつも一升ずつ買っています。

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