木曽のすんき漬けが人気らしい

木曽のすんき漬けは、貴重な塩を使わないで漬けた漬け物です。温度を上げて保温して乳酸菌を増やすのが特徴です。その乳酸菌がアトピー性皮膚炎や花粉症の原因とされるIgE抗体を抑えると発見され、人気が出ました。すんき漬けから見つかった別な乳酸菌の一つを使った豆乳ヨーグルトは、豆乳グルトとして販売されています。

(画像はイメージです。すんき漬けの画像がないので)

木曽のすんき漬け

木曽の開田高原は、木曽馬と蕎麦が昔から有名ですが、今はすんき漬けが人気だそうです。私は少しだけ木曽に住んだことがあるのですが、知らなかったです。

なぜ人気が出たのかというと、アトピー性皮膚炎や花粉症の原因とされるIgE抗体を、すんき漬けの乳酸菌が抑えることが発見されたからです。

私も毎日花粉症で目がかゆくて困っています。興味を持ったのは、この漬け物が「塩を使わない」ところです。すんき漬けの乳酸菌が塩を使わないで培養できるなら、豆乳ヨーグルトの種にならないかなと思いました。しかし、すでに商品化されていました。あとでご紹介します。

すんき漬けはどのように漬けられるか

すんき漬けは、300年前にはその名前が記録に残っているので、なかなか歴史がある漬物です。なぜ、漬け物の定番である塩を使わないのかというと、答えは簡単で、塩が手に入りにくかったからに決まっています。

JA長野県のサイトにローカルフードは心も満たす「すんき漬け」という記事があり、詳しく説明されています。

赤カブを漬けた後、残った茎葉を材料に塩を使わずに漬ける

ローカルフードは心も満たす「すんき漬け」|地域情報|長野県のおいしい食べ方
なるほど日本全国に「漬物」はたくさんありますが、信州の伝統が生んだ、信州ならではのお漬物を、ひとつご紹介いたしましょう! と聞いて、いま「野沢菜漬け」を頭に描いた方、いいですね〜♪ こたつで、野沢菜つつきながら、熱々の日本茶飲む、信州の冬がすぐそこまでやってきてますからね。しかし、残念ながら今回は違います。

昔からカブはこぬかと塩で漬ける「赤カブ漬け」に、茎葉は、塩を使わずに漬ける「すんき漬け」にされて、余すことなく一物全体が食べられてきました。

木曽路は今でこそ自動車で快適に行くことができますが、その昔は山の道は険しく(今もですが^^;)塩は入手困難なものでした。

これを表す言葉に先人は「米は貸しても塩は貸すな」と言い残しています。そこで、貴重な塩を使わずに「カブの葉を植物性乳酸菌で発酵させる」という先人の知恵が生み出した無塩の漬物が出来たのです。

赤カブは塩とぬかを使って漬物にされて、すんき漬けは残った茎と葉を塩を使わずに漬けていたとあります。すんき漬けは、少しランクの落ちた漬物だったのでしょう。

塩を使わない漬け物は、腐る心配があるのではないかと思いますが、漬け方に特徴がありました。まるでヨーグルトを作る時のようなことをするのです。

空気を抜いて保温する。ヨーグルトみたいだね

発酵のスターターとなる種には、前年のできのよいすんき漬けを使います。そして、漬ける時が面白い。

温めて空気を抜いて保温します。空気を抜くのは乳酸菌が通性嫌気性菌で、酸素を嫌うからです。ある程度の温度で保温するなんて、ヨーグルトみたいな作り方だなと思います。

まずはカブ菜をよく洗い、これを2cmくらいに刻んで、サッと(3〜5秒間)あたためるために湯通しします。つぎに湯通ししたカブ菜を、発泡スチロールの箱にしいた漬物用のビニール袋へ移します。

熱を保つために発泡スチロールの箱を使用します。カブ菜を少しさましてから、すんきの種を入れて、力強く上から押します。60℃以上だと、乳酸菌が死んでしまううので注意します。極力空気を出しきって、袋の口をしばり、密封状態にします。

そのまま24時間から48時間は、乳酸菌の繁殖を促すために、発泡スチロールのふたをきちんと閉じて、温度が下がらないようにします(すんきの種と漬けるカブの葉の量によっても違う)。このときの保温状態がすんきの出来を左右するといわれます(名人の技と勘が生きるのがここのところ)。

保温すると雑菌も喜んで繁殖すると思いますが、空気を抜くところがミソなんでしょう。

約1週間から10日ほどで完成するようです。味は、塩気がないので酸っぱいそうです。酸っぱくないと保存性が悪くなりますね。

この記事には、乳酸菌についても少し書かれていました。

すんきの漬け汁には1ミリリットル当たりではなんと「約1億個」もの乳酸菌が生息しているということが判明しました。

この乳酸菌が抗体を抑制すると考えられています。現在この木曽の「すんき」から抽出した植物性乳酸菌と豆乳を混ぜ合わせたヨーグルトが初めて完成し、健康食品として注目を集めていたりします。

さて、この乳酸菌はどんなものなのか。

すんき漬けの乳酸菌

すでに豆乳ヨーグルトができていたとは、好都合です。でも、もう少しすんき漬けの乳酸菌について調べてみましょう。

Pediococcus pentosaceus Sn26株のアレルギー性下痢症抑制作用及びその作用機序解析という論文を読むと詳しくでていました。もちろん、すぐき漬けの乳酸菌についての論文です。

冒頭の乳酸菌の名称は、ペディオコッカス(Pediococcus)属のペントサセウス(pentosaceus)種でSn26株という順番で細かく分類されているということのようです。

菌株までよく見て区別する

Sn26株というのは、菌株(きんかぶ)といわれ、こんな説明がありました。

細菌の最小単位は「菌株」であり, 1匹の細胞から分化し原則的に親細胞と同じ遺伝形質を備えた子孫の集団を純粋に養い育て, 保存した状態を言います。

菌株には表示 (保存番号や由来の表現などで他の培養物と区別できるもの) が必要であり, 表示のないものは菌株と言いません。(出典

すんき漬けの漬け汁から分離・同定された乳酸菌は、この論文によると59種類あります。その中には、Pediococcus pentosaceusのがもう一つあり、Sn84株と名づけられていました。Sn84株もSn26株と同じ性質がありましたが、表を見るとSn26株の方が強かったです。

すんき漬けの乳酸菌Sn26株はⅠ型アレルギーを抑制する

論文の要約には、このように書かれていました。

 すんき漬から分離された乳酸菌の中に IgE 産生を抑制する菌株が多数存在した。その中の 1 菌株(Pediococcus pentosaceus Sn26 株(Sn26))は、経口投与により血中の卵白アルブミン(OVA)特異的IgE を減少させ、 OVA で誘導されるアレルギー性下痢症を有意に抑制した。

IgEとはIgE抗体のことです。IgE抗体は、Ⅰ型アレルギーといわれる食物アレルギー性下痢症、花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、気管支喘息などに関係しています。

IgE抗体は免疫反応に必要なものですが、Ⅰ型アレルギーといわれる上に書いた症状が出るのは、IgE抗体が過剰につくられることが原因とされています。

この実験では、卵白アルブミンを与えるとアレルギー反応で下痢を起こすように準備されたマウスに、卵白アルブミンを投与します。その時に、乳酸菌Sn26株を飲ませると、つくられるIgE抗体が減り、下痢の症状が出にくくなるという結果が得られたのです。

59種類の乳酸菌のすべてをテストして、57種類にIgE産生抑制作用があることがわかりました。その中でもPediococcus pentosaceus Sn26株が、IgE産生抑制作用が強いことが分かりました。

つまり、IgE抗体が過剰につくられることを抑制し、Ⅰ型アレルギーの症状が出るのを軽減させる働きがあるのです。

SN26株のヨーグルト

検索してみると、開田高原セレクトショップに、乳酸菌発酵豆乳【SN26】がありました。100g入り6個で2,100 円だそうです。

開田高原ウェブストア

また、このサイトでは、すんき漬けも買えます。10℃以下の要冷蔵な漬け物です。

木曽の伝統食 すんき(無塩乳酸発酵漬物) | 開田高原ウェブストア
感染症予防や抗アレルギー作用が期待されると話題の乳酸発酵漬物「すんき」は、赤かぶの茎と葉を塩を一切使わずに乳酸発酵させた信州・木曽の伝統食です。

TUA4408L株(SNC33株)のヨーグルト

もう一つ、マルサンアイの発酵豆乳が出て来ました。Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii TUA4408L株(SNC33株)を使用しているそうです。発酵豆乳のお話に詳しい説明があります。東京農大の先生が発見されたようです。

商品名は、豆乳グルトだそうです。このリンクは通販専用ですが、普通のスーパーでも買えます。

この続きは、豆乳グルトの成分や効果や作り方など調べてみたに書きましたので、是非、そちらをお読みください。

豆乳グルトの成分や効果や作り方など調べてみた。
マルサンの豆乳グルト を買って来ました。豆乳ヨーグルトはあまり売っていません。しかも、このようなプレーンタイプで400g入りは見たことがありません。 そして、この豆乳グルトは、漬け物由来の乳酸菌を使っているこだわりを感じるヨーグルトです。ど...

NOTE

食品の保存性をよくするには、塩を入れるほか、砂糖を入れる、乾燥させるという方法もあります。しかし、塩も砂糖も昔は貴重なものでした。

塩を入れない代わりに、温めて空気を遮断して保温、乳酸菌を増やすというのがすんき漬けの原理です。塩をケチるためにできた発酵食品は、他にくさやがあります。くさやは干し魚に使う塩を倹約することから生まれたとかという記事で紹介しました。

くさやは干し魚に使う塩を倹約する工夫から生まれた
初めてくさやを焼いているにおいを嗅いだ時は、何かの間違いかと思いました。くさやは、干物を作る時に塩をケチるために、海水に浸けて乾かすことを繰り返して塩分を濃くする工夫をしたことから生まれました。くさや汁がくさいのは短鎖脂肪酸によるものです。...

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