「どぶろく」「濁り酒」は、日本酒を発酵させた後、濾さないものを指します。全国に210ヶ所どぶろくを造って販売できるどぶろく特区があります。「どぶろく」「濁り酒」は、純米酒であり、殺菌しないことにその神髄があるようです。
どはどぶろくのど 失われた酒を訪ねてを読みました。
著者の本郷明美さんは、本当にお酒やどぶろくがお好きなんだろうなあと思います。読んでいると分かります。
どうも、どぶろくに興味を持ち、飲みたいと思っている人は私の回りではあまりいません。私がどぶろくに興味を持った経緯は、後ろの方に書いておきますが、もし、少しでもどぶろくや濁り酒にご興味があれば、読んでみるとよいと思います。面白い本です。
この本は、どぶろく特区、椎名誠さんへのインタビュー、酒蔵(酒造会社)の「どぶろく」、自家醸造について、の4つの部分から構成されています。
私が一番興味深く読んだのは、酒蔵の「どぶろく」でした。
まず最初に、どぶろくと濁り酒、同じもののようにも違うもののようにも感じる言葉です。このことについて書いておきましょう。
どぶろくと濁り酒
どぶろくは何となく素人がつくるとか、密造の感じがしていましたが、この本ではどぶろくと濁り酒の違いは、このように説明されていました。
「どぶろく」と「濁り酒」という名称について。
もともとは通称なので、「どぶろく=濁り酒」として特に区別なく使われていたと思われる。
地域やその家々によって濾す、濾さない、というちがいはあっても、白く濁っていれば「濁り酒」であり、「どぶろく」であった。
ただし、現在の酒税法上は濾したものは「清酒」、濾さないものが「どぶろく」と分けられている。
自家醸造禁止以後、「どぶろく」には農家が造る「密造」のニュアンスが含まれるようになった。
知りませんでしたが、全国に200ヶ所以上、どぶろくを造って販売できるどぶろく特区というものがあるそうです。
どぶろく特区がある
どぶろく特区というのは、正式には構造改革特別区域というのだそうです。2002(平成14)年、小泉内閣の時代にできた制度です。
これは、経済の活性化のために考えられた制度です。それまで酒税法で規制されていたどぶろくなどの酒作りとその販売を決められた地域内で許可し、また、農家民宿などとともに観光事業を活性化しようとする試みです。
どぶろくには決まりがあります。
認定を受けた特別区域内の飲食店や民宿が、免許を取って「どぶろく」を製造、販売することができる。
どぶろく特区では、もろみを「濾してはいけない」ことになっている。
濾さないことで、濾して透明になる清酒と区別しているのです。
全国に210箇所
この本は2011年発行で7年経過しているので、どぶろく特区が現在どうなっているのか調べてみました。
国税庁が構造改革特別区域法による酒税法の特例措置の認定状況一覧(平成29年5月認定分まで)という文書を公開していました。リンクを貼ってありますので、ご興味のある方はご覧下さい。
果実酒を含め全国で210ヶ所ありました。しかし、残念なことに東京、神奈川など思いつきで電車に乗ってすぐに行けるところにはありませんでした。
酒蔵の「どぶろく」
酒蔵の「どぶろく」では、増田徳兵衛商店、タカハシ酒造、森喜酒造場、有賀酒造などが登場しますが、私にとって一番印象に残ったのは、神亀酒造の話でした。
神亀酒造の純米活性にごり酒
神亀酒造の酒は、こだわった酒屋さんならまず置いてあります。残念ながら、私は純米酒神亀を数えるほどしか飲んだことはありません。神亀酒造が純米活性にごり酒を出していたことは、もちろん知りませんでした。
著者はこのように書かれています。
後に、「神亀酒造」は日本酒党に尊敬される酒蔵だと知る。現在のように純米酒が日本酒本来の姿だという認識が広まる以前から、「醸す酒はすべて純米」という姿勢を貫いてきたのだった。
神亀酒造のサイトです。
活性にごり酒を造るきっかけについて、こんなインタビューをされています。
「『ほんもの』を造りたかったんです。私が中学・高校の頃、濁り酒を配達していたんですよ。急いで自転車をガタガタ言わせると、栓が飛んでしまう酒でした。
発酵し続けているからです。それが本当の『おり酒』『濁り酒』だと、私は体でおぼえていました」
七代目であり専務の小川原良征さんは、穏やかな口調でこう語り出した。
「ところが、私が東京農大を卒業して帰って来てみると、『濁り酒』と称する、まったく別ものが大量に出回っていました。酵母を殺して、ひどいものだと酒粕を冷凍しておいて溶かして『濁り酒』と称するんです。
殺菌して酵母を殺してしまうと、そのときから酵母が自己消化していくんですね。
酵母が自分の酵素で溶けていくから、アミノ酸の重たい酒になるんです。つまり、べたべたの甘い濁りになっちゃう。そういう酒が酒屋の棚取り競争をしている。
これじゃ、本当の濁り酒ファンは逃げちゃうな、と思いました」
これが1968年頃の話だそうです。
酵母は30%がタンパク質なので、それが自己消化するとアミノ酸がたくさんできます。さらに、現在流通している濁りや活性濁りについてもなかなか厳しいです。
純米である理由
「正直、まだまだ首をかしげる『濁り』や『発泡』も多いですよ。本当は、純米でないとダメです。
アルコールを添加すると酵母が死んでしまいますから、加熱殺菌したのと同じ状態になるんです」
このように説明されると納得できます。発酵を止めることは酵母を殺すことになり、酵母が自己消化を始めるということです。この話をよく覚えておいて、酒屋さんに行ったときに濁り酒のラベルをひっくり返して見ることにします。
どぶろくを飲みたいと思うようになった
私は日本酒が好きですが、どぶろく、濁りはほとんど飲んだことがありませんでした。
2016年の9月に醍醐のしずくを飲みました。このことは菩提酛仕込み醍醐のしずくを飲んだ(寺田本家)に書きましたが、菩提酛とは、どぶろくの作り方なのです。
香りこそよくないですが、口に入れた瞬間に、うまく表現できませんが体がよろこぶおいしさを感じました。きっと体によい酒だろうなと思いました。

その後、福山の酒、天寶一を宣伝してもよいですか?で書きましたが、特別純米八反錦おりがらみ本生を飲み、おりがらみの酒のうまさに目覚めました。

その後、高千代酒造蔵びらき限定生酒は実にうまかったで書きましたが、蔵びらき限定純米酒生酒という、やはりおりがらみの酒を飲み、濁りがある酒こそ飲みたいと思うようになりました。

さらに、これは酒ではなく、麹の話ですが、麹の体への効果を知ると、麹が入っているもろみに近いもので殺菌(火入れ)していないものを飲みたいと思うようになりました。

そんなことを考えている時に、「どはどぶろくのど」を読んだのです。
まとめ
どぶろく、濁り酒は、自然な甘みがあり、酸味もあり、発酵が続いていると二酸化炭素が溶けていて発泡していて飲みやすいと思います。
どぶろく、濁り酒は、殺菌しないことが味を変質させないために必要なことのようですが、しかし、その分発酵が進んでしまうので品質管理はとてもむずかしいものだと思います。
どぶろく、濁り酒は、飲み過ぎなければ体にとてもよいものではないかと思っています。酒好きにとって、飲み過ぎないことは本当に大切なことです。
美味しくて体によくて元気がでる。気分もリラックスできる。いま、知らない銘柄の日本酒を飲むことにしているのですが、さらに、どぶろく、濁り酒も少しずつ探索してみます。楽しみです。
日本酒について他にも記事を書いています。日本酒についての記事をお読み下さい。