かつお節は、かつおをおろして煮て乾燥させかびをつけます。かびが自分で生きるために水分を身から吸い上げるのでカチカチに乾燥します。かつお節は70%以上がたんぱく質です。原料のかつおは脂の少ないものを使います。袋入りの花かつおはかつお節ではなく、カビつけをしていない荒節を削ったもの。かびつけしないものはかつお節と名乗れないのです。
かつお節のつくりかた
かつお節のつくり方は、農大の小泉先生が書かれた江戸の健康食: 日本人の知恵と工夫を再発見に書かれていました。
煮て乾燥させカビをつける
まず原料のかつおを三枚におろし、その身を煮カゴに入れて、1時間半ほど煮た後冷やす。
そして、骨抜きしてから底を簀の子張りした木の箱に4、5枚を重ねて入れ、焙乾室でかたい薪材を燃やしていぶし、乾燥する。
この焙乾のやり方は、まず85℃で約1時間、5日間続ける。このあと火を弱めて、さらに数回くり返す。そして、最後に3~4日間、日光で乾燥すると荒節(あらぶし)が得られる。
荒節を舟形に整形削りをし(これを裸節という)、これを4~5日間ほど日光に乾かしてから、つねに使用している黴づけ用の樽、または箱に入れて密閉する。
この容器内には、麹黴(こうじかび)の一種、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)の胞子が多数生息しているから、その中に裸節を2週間も入れておくと表面には黴が密生する。(一番黴)
これを取り出して白乾し、黴を刷毛でこすりとり、ふたたび黴づけ容器に詰める。2週間ほどして、また黴が密生する(二番黴)から、前と同様の操作を繰り返し、こうして、三番黴、四番黴をつけ、最後に十分に乾燥して製品ができあがる。
なかなか手間がかかる作業です。
カビが水分を吸収してかつお節が硬く乾燥する
かつお節はできあがると石のように硬くなります。これは身から水分が徹底的に抜けているからです。そして、水分が抜けると、保存性が高くなります。鰹節は極めて保存性が高い食品です。
小泉先生の本ではこう書かれています。
たんに焙乾しただけでは、生節の表面は乾燥するものの、内部までは硬くはならない。また、焙乾だけした鰹節では、乾燥にムラが出て、削っているうちに表面からボロボロと崩れてしまう。
だが、ここに黴をつけてやると、節の表面に生息しようとする黴は、その繁殖にかなりの量の水分を必要とするから、節の内部から表面に水分を吸い上げ、その水を生きる糧として利用することになる。
すごい仕組みですね。いったいどんな人がどんな現象を見て再現性のある技術として考えたのでしょうね。
かつおとかつお節の栄養成分を比較
かつおとかつお節の栄養成分を比較してみましょう。
かつお節はたんぱく質が多い
乾燥させた身から水分が抜けた分、かつお節は100gあたり、たんぱく質が80g近くあります。たんぱく質=アミノ酸ですから、ダシがよく出るわけです。
かつお節にするには脂が少ない方がよい
かつおには、春獲りと秋獲りがあり、もちろん、秋獲りの方が脂が乗っています。食べるなら脂が乗っていた方がうまいですが、かつお節には脂はジャマになります。
にんべんの鰹節ができるまでにはこのように書かれています。
脂肪分が多いカツオは鰹節には不向きで、生肉中の脂肪含有率が1〜3%前後のものが最適とされます。
ナイアシンとビタミンDが多い
もともとかつおにはナイアシンが多いのですが、水分が抜けたことで含有量が増えています。成人男女で1日11~15mg程度が推奨量なので、とても多いことがわかります。
また、成人男女に1日5.5µg必要とされているビタミンDも比較的多いですね。
そうだがつおは、下で宗田節について書いたので参考まで載せておきました。
食品成分 | かつお/ 春獲り生 |
かつお/ 秋獲り生 |
そうだが つお/生 |
かつお節 |
エネルギー | 114kcal | 165kcal | 136kcal | 356kcal |
水分 | 72.2g | 67.3g | 69.9g | 15.2g |
たんぱく質 | 25.8g | 25.0g | 25.7g | 77.1g |
脂質 | 0.5g | 6.2g | 2.8g | 2.9g |
炭水化物 | 0.1g | 0.2g | 0.3g | 0.8g |
灰分 | 1.4g | 1.3g | 1.3g | 4.0g |
食塩相当量 | 0.1g | 0.1g | 0.2g | 0.3g |
ナトリウム | 43mg | 38mg | 81mg | 130mg |
カリウム | 430mg | 380mg | 350mg | 940mg |
カルシウム | 11mg | 8mg | 23mg | 28mg |
マグネシウム | 42mg | 38mg | 33mg | 70mg |
リン | 280mg | 260mg | 230mg | 790mg |
鉄 | 1.9mg | 1.9mg | 2.6mg | 5.5mg |
亜鉛 | 0.8mg | 0.9mg | 1.2mg | 2.8mg |
銅 | 0.11mg | 0.10mg | 0.15mg | 0.27mg |
マンガン | 0.01mg | 0.01mg | 0.02mg | – |
ヨウ素 | 11µg | 25µg | – | 45µg |
セレン | 43µg | 100µg | – | 320µg |
クロム | 0 | Tr | – | 1µg |
モリブデン | 0 | Tr | – | 1µg |
レチノール | 5µg | 20µg | 9µg | Tr |
αーカロテン | 0 | 0 | 0 | – |
βーカロテン | 0 | 0 | 0 | – |
βークリプトキサンチン | 0 | 0 | – | – |
βーカロテン当量 | 0 | 0 | 0 | ‘(0) |
レチノール活性当量 | 5µg | 20µg | 9µg | ‘(Tr) |
ビタミンD | 4µg | 9µg | 22µg | 6µg |
αートコフェロール | 0.3mg | 0.1mg | 1.2mg | 1.2mg |
βートコフェロール | 0 | 0 | 0 | 0.3mg |
γートコフェロール | 0 | 0 | 0 | 0.1mg |
δートコフェロール | 0 | 0 | 0 | 0.2mg |
ビタミンK | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) |
ビタミンB1 | 0.13mg | 0.10mg | 0.17mg | 0.55mg |
ビタミンB2 | 0.17mg | 0.16mg | 0.29mg | 0.35mg |
ナイアシン | 19.0mg | 18.0mg | 16.2mg | 45.0mg |
ナイアシン当量 | 24.2mg | 23.0mg | ‘(21.2) | 60.9mg |
ビタミンB6 | 0.76mg | 0.76mg | 0.54mg | 0.53mg |
ビタミンB12 | 8.4µg | 8.6µg | 12.4µg | 14.8µg |
葉酸 | 6µg | 4µg | 14µg | 11µg |
パントテン酸 | 0.70mg | 0.61mg | 1.29mg | 0.82mg |
ビオチン | 2.6µg | 5.7µg | – | 14.9µg |
ビタミンC | Tr | Tr | Tr | ‘(0) |
水溶性食物繊維 | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) |
不溶性食物繊維 | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) |
食物繊維総量 | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) | ‘(0) |
※日本食品標準成分表2015年版(七訂) |
ビタミンDについては、こちらの記事をお読み下さい。

ナイアシンについては、こちらの記事をお読み下さい。



蕎麦だしに使うかつお節
以前、蕎麦学校に通ったことがあります。蕎麦を打ってみたいということと、蕎麦だしにとても興味がありました。
というのも、私、毎日、立ち食い蕎麦を始め一食は蕎麦を食べていた時期があります。その最初のきっかけは、冬のある日、市川の一茶庵で食べた鴨南蛮でした。
お客さんの会社に訪問し、では昼飯でも一緒にと行った市川の一茶庵は、その方の行きつけのお店だったのです。蕎麦もおいしかったですが、なにより蕎麦だしがおいしくて、恥ずかしながら全部飲んでしまいました。
寒い日に体が温まる、少し濃いめで甘みも少し感じるだしでした。
蕎麦だしは、関西では、かつお節と昆布を使いますが、関東の蕎麦だしは、かつお節とさば節だけを使います。やぶそばとか一茶庵とか有名なお店がありますが、みんなそうだと思います。
枯本節、荒亀節、宗田節
枯本節、荒亀節、宗田節、さば節を使うのですが、深くてよいダシがでます。自分でやってみても「これは有名店の蕎麦だしだ!」といえるものができます。
蕎麦学校のレシピは公開してはいけないらしいのでここには書きませんが、そばうどん2020 (柴田書店MOOK) のようなプロ向けの本を読むと、蕎麦だしのつくり方は書いてあります。
返し(しょう油と味醂)を作り、白だし(いわゆるダシ)を取る、2工程あるのが少々めんどくさいですが、レシピ通りに正確に作ると、スーパーで売っている濃縮つゆではとても出せない味に仕上がります。さば節以外を調べました。
枯本節とは
枯本節を検索すると、グーグルの検索結果では、マルサヤさんの本枯本節二年物が先頭に出てきました。それを読ませていただくと、上で小泉先生が書かれていたつくり方でできあがったかつお節が、枯本節です。
少しつけ加えると、かつおを三枚におろした後、それぞれの身をそれぞれ血合いを境に切り分けます。血合いを取る一手間がかけられています。
つまり1尾のかつおから4本の節がとれます。この時背側でできた節を雄節、腹側でできた節を雌節と言い、あるいは背と腹からできていることからそれぞれ背節、腹節と呼ぶことがあります。
こんなことが書かれていました。
しかし、じつのところ、この枯本節は、鰹節の全体生産量の数%にも満たない希少品なのです。
世の中に多く出回っている鰹節のほとんどは、カビ付けを施さない「荒節」であり、皆さまがイメージする枯本節を召し上がっていない場合がほとんどであるという現実がございます。
それくらい、現代では枯本節が希少な存在となっております。
サイトから引用させていただいたので、マルサヤさんの鹿児島産本枯本節二年物 -雄節・雌節 各1本セットへのリンクを貼っておきます。
荒亀節とは
日本鰹節協会のサイトの鰹節とその仲間たちに説明がありました。
亀節は3枚におろしただけの身からつくる節のことでつまり1尾のカツオから2本の節がとれます。亀節の名は完成した節の形が亀の甲羅に似ていることに由来しています。
こちらは、おろした身から血合いを取り除かないことと、荒節なので、カビつけをしていないものです。値段もだいぶ安くなりますね。
宗田節とは
宗田節は、マルソウダガツオから作られたかつお節のことをいいます。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑で画像と詳しい説明を読むことができます。



そうだ節でとっただしは味が濃厚で色がつくのが特徴です。そば店でそうだ節を主体にして使うのが関東です。
かつお削り節とかつおぶし削り節はちがうもの
普段、まったく気にしていませんでしたが、かつお削り節とかつお節削り節は違うものでした。ご存知でしたか?
鰹節ができるまでにで詳しく説明されていました。
かびづけをしていなければかつお節ではない
かつお削り節は、カビつけをしていない荒節を削ったもの。かつおぶし削り節は、カビつけをした枯本節を削ったものです。
かつお削り節は香りが強くやや魚臭い感じがしますが、かつおぶし削り節は、カビをつけて何度も発酵させているので、まろやかな香りで比較約あっさりしているのが特徴です。
値段はかつおぶし削り節の方が高いに決まっていますね。
どうやら、カビつけをしたものは、かつお節と名前がつくようです。これは覚えておきましょう。
スーパーに行くと、花かつおという商品名で販売されていて、私が買っているのもそれでした。原料名を見ると、かつおのふしと書かれていました。
花かつおの「花」は削り方のこと
もし、削っているのがかつお節だったら、花かつお節と書かれるのでしょう。花かつおは、もちろんカビつけをしていない荒節を削ったものです。
冒頭、私はかつお節を使っているなんて書きましたが、花かつおなのでかつお節ではありませんでした。
花かつおの「花」は削り方を示していて、かつお節の削り方の種類と使い方によると、血合いを除いた正肉だけを花びら状に削ることだそうです。
ここまで書いてきて、アマゾンでかつお節の値段を調べても、自分でかつお節を1本買って削った方が割安だなと分かりました。
かつお節削り器はオカカくんがよいらしいです
前から料理好きの若い友人にすすめられていた愛工業 かつおぶし削り オカカ。まだ、買ってないです。ずっと、かつお節を買って来て自分で削るのが面倒な気がしていました。
なんでも三重県尾鷲市ではみんな持っていて、とてもポピュラーなんだとか。昔の鉛筆削りみたいな雰囲気があるかつお節削り器です。
替え刃式で使い心地はとてもよいそうです。おひたしなどにいつも削りたてのかつお節を使っている友人は絶賛していました。
アマゾンのレビューでは、簡単に大量に削れるところが魅力だと書かれているので、ハンドルを回せばじゃんじゃん削れるのだと思います。うーん、どうしようかな。
NOTE
うちではいつもかつお節じゃなくて、花かつおでダシをとってみそ汁を作っています。
いつも同じメーカーのを買っているのですが、今使っているのが、ロットの関係なのでしょうが、あまり美味しくないのです。この記事を書いたのは、それがきっかけです。
以前から思っていたのですが、かつお節を1本買って、毎回削った方がきっと安いし美味しいに決まっています。そろそろ、そういう生活にしたいと思います。
かびをつけないものは、かつお節とは名乗れない。今回は勉強になりました。
また、伊藤明子先生の「医師がすすめる抗酸化ごま生活」には、ごまとかつお節パウダーを混ぜて「抗酸化ごま」として食べる方法が説明されています。