昔、納豆は朝食に食べるものでした。しかし、納豆の効果が分かるようになると、朝よりも夜に食べた方がよいことが分かってきました。特に、血圧が高いとか動脈硬化のことを気にしている方は、夜に納豆を食べた方がよいですよ。納豆の効果と合わせてまとめてみました。
血栓症になりやすい人は線溶系酵素の量と活性が低い
転んでヒザをすりむき、血が出るとやがてかさぶたができます。これは傷を治すために必要な仕組みです。血管の中も同じで、中が傷つくと、すぐに傷をふさぐために血小板が集まってきて、さらに「凝固因子」が働き、最終的に「フィブリン」という糊(のり)のようなものをつくって固めます。これが血栓です。下の記事で詳しく書きました。

膝にできたかさぶたはやがて自然に取れてしまいますが、血栓が自然に取れて血液に乗って流れていくとやっかいなことになります。どこか血管の細いところで血栓が止まって詰まってしまい、血栓症になります。
それを防ぐための仕組みがあります。
血栓を溶かす仕組み
血栓を溶かす酵素があります。血栓を溶かす酵素群は、まとめて「線溶系」とよばれます。
例えば血圧を測定する時、腕を強く締め上げます。(これを駆血といいます)このときに、血栓を溶かす酵素をつくるための酵素が血管壁(内皮細胞)から産生されます。ちょっとややこしいですが。
血液の流れが止まったから(血栓ができたと)内皮細胞が反応するようです。
血栓のフィブリンは、プラスミンという酵素によって溶かされます。プラスミンは、プラスミノーゲンから作られますが、その時に、プラスミノーゲンアクチベーター(プラスミノーゲン活性化因子)と呼ばれる酵素が関与します。
このプラスミノーゲンアクチベーターが先ほどの血管壁(内皮細胞)から産生される酵素です。t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)とプロ-ウロキナーゼ(Pro-UK)の2種類あります。
プロ-ウロキナーゼ(Pro-UK)は、血しょう中では、線溶活性を示しませんが、プラスミンによってウロキナーゼ(u-PA)に変換され、ウロキナーゼ(u-PA)がプラスミノーゲンをプラスミンに変換することで線溶性を持ちます。(出典)

血栓溶解
ところが、納豆は効く!―解明された納豆パワーの秘密によると、t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)とプロ-ウロキナーゼ(Pro-UK)は、いつも少しずつ血液の中に放出されているそうです。
この二つの物質は、血栓に大変くっつきやすい性質を持っているので、もし血管内に血栓ができるとすぐにその表面にくっつく。そうすると、そのt-PAとかPro-UKが血栓の表面でプラスミノーゲンをプラスミンに変身させ、それが血栓を直接分解するわけである。
血栓症になりやすい人は、t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)とプロ-ウロキナーゼ(Pro-UK)の量が少なく、また、活性が低すぎるということのようです。
血栓ができやすいということより、できた血栓が溶けにくいことが問題なのだと思います。残念ながら、年齢とともにこの血栓を溶かす能力は落ちてしまうそうです。
血栓予防と納豆
そこで、納豆を食べると、どのくらい血栓に対して効果があるのか知りたいところです。納豆が食品としてはほぼ唯一の血栓溶解作用があるということは知られていますが、食べたらどうなるのかというのが大切なところです。
納豆は効く!―解明された納豆パワーの秘密には、こんな実験が行われたことが書かれていました。
健康な人を二つのグループに分け、一つのグループには煮た大豆を食べてもらった。その後、全員から血液を採取して、それぞれの血栓溶解酵素をシャーレの中の人工血栓にのせ、その溶け具合を比較した。その結果、煮た大豆を食べたグループの血液中には血栓溶解酵素はほとんどなかったのに対し、納豆を食べたグループでは八時間もの間、血栓を溶かす働きが持続したのである。
納豆が血栓を溶かす効果は長時間続く
血栓を溶かす薬が効果を示すのはわずかな時間だそうですが、納豆を食べると8時間も効果が持つというのがすごいですね。個人差はあると思いますが、長くもつということはいえるのでしょう。
夜、食事の時に一緒に納豆を食べると、場合によっては翌朝までその効果が持ちます。
それで、納豆を食べるなら夜がよいという話なのです。さらに、夜食べたから朝食べてはいけない決まりはないですから、朝も食べるともっとよいでしょう。納豆好きの方にとってはとてもよい話です。
まとめ
納豆を食べているとよいことがたくさんあります。しかし、血栓を溶かす本体であるナットウキナーゼを取り出して、それだけを使う場合は、使用量の安全性を確かめたり、作用する仕組みを明らかにしないとならないと思います。
しかし、われわれ一般人は、納豆が安くてこんなに優れた食品だと分かるのが一番嬉しいです。
今晩も納豆を食べましょう。
納豆について記事をいくつか書いています。他の記事は、納豆についてをご参照下さい。