「誰でもできる手づくり味噌」は、オンデマンドでまた入手できるようになりました。味噌作りはネットでたくさん公開されていますが、この本は、麹の作り方から教えてくれて、全国の特徴的な味噌を作ることができる本です。米味噌、麦味噌、豆味噌、白いのから赤いの、甘いのから辛いのまで網羅されています。味噌の作り方に興味がある方は、1冊持っているとよいですよ。
「誰でもできる手づくり味噌」を読んだ
誰でもできる手づくり味噌―はじめてでもできる極上の味を読みました。もと麹屋さん永田十蔵さんの本です。この方の本は実に面白い。しかし、この本しばらく古本以外入手不可になっていました。
その後、オンデマンドでまた入手できるようになったようです。私は、以前、神保町にある農文協の農業書センターに行って買いました。
今の時代、ネットで調べれば画像つきで味噌の作り方が出てきます。しかし、この本はとても内容が深いのです。特徴は2つあります。
麹の作り方から教えてくれて全国の特徴的な味噌を作ることができる
味噌を作るときは、大豆、米麹(麦麹)、塩、水が必要です。麹は、米麹ならたいていのスーパーに並んでいますが、この本では、自分で作ることをすすめられます。
米麹、麦麹、小麦粉麹に友麹法を教えてくれる
みそ用米麹、みそ用麦麹、そして初めて知りましたが小麦粉麹なんてのもありました。
小麦麹みそは、北海道十勝地方や関東の武蔵野、大阪の河内地方など、限られた地域でつくられていたことがあるという。小麦にはタンパク質が米より多く含まれているので、コクのあるみそになる。
友麹法も紹介されています。これは、市販の米麹を種にして蒸米に混ぜて米麹を作る方法です。市販の米麹50gを蒸米1キロに混ぜるので、かなり効率がよいですね。
全国の特徴的な味噌を作ることができる
標準的な米麹味噌と麦麹味噌の作り方を紹介してから、全国の個性的な味噌の作り方を教えてくれます。
標準的な味噌は米麹味噌、麦麹味噌ともに塩分12%で、米対大豆=1:1、麦対大豆=1:1で作ります。いわゆる10割麹味噌ですね。
これらを基準に、個性派タイプの味噌が紹介されます。全国の味噌は、豆味噌以外は、麹が米か麦(ほぼ大麦)か、大豆と麹の比率で特徴づけられるようです。
甘口麦麹みそ
九州風の味噌と書かれています。
九州風麦麹みそは、麹割合を高くし、塩分は低くする。麦麹の割合が多いために、デンプンの分解による糖が多くなると同時に、塩分が少ないために塩辛さも低減する。結果的に甘口のみそとなる。
麦麹みそは麦味噌と言い換えてよいと思います。私は北国の人間で、もともと赤味噌で育ってきました。それで、口に合わないだろうと先入観があり、つい数年前まで麦みそを買ったことがありませんでした。しかし、買って味噌汁を作ってみると、こくがあり、とてもおいしいものだと知りました。
甘口米麹みそ
関西風・西国風の味噌と書かれていました。
甘口米麹みそは、近畿以西、中国、四国、九州の西日本一帯で広く好まれている。ところが、中部、北陸以北では姿をみない(江戸甘みそ、東海の相白みそは除く)。
辛口米麹みそ
北国風と書かれていました。私にとって一番なじみがある味噌です。
「辛口米麹みそ」とは、標準米麹みそに比べて塩分が高めのみそをいう。(中略)仙台みそ、津軽みそ、越後みそなどは、北国の辛口みそとして有名である。(中略)塩分が高めのみそは「みそのセオリー」によって、麹割合は小さくなる。
大豆麹みそ
これは八丁みそのことです。大豆に麹を接種して大豆麹にして塩と水で仕込みます。大豆だけが原料の味噌です。
「大豆麹みそ」は文字どおり大豆の麹を原料にしたみそである。大豆のほかは塩と種水だけで、米や麦などの穀物原料は使わない。一般には豆みそという。
甘みそ
甘味噌はほとんど食べたことがなかったのですが、少し前から江戸甘みそである(?)丸の内タニタ食堂の減塩みそをよく買うようになりました。おいしいなと思います。
人気があるので、どこのスーパーでも買えます。
甘みそは、塩分が五~六%の米麹みそをいう。甘口味噌より塩分が低いので、甘味をより強く感じる。甘みそは、京都の「白みそ」がよく知られているが、京都以外でも、広島の「府中味噌」、香川の「讃岐味噌」なども歴史と伝統のある甘みそである。
一方、江戸(東京)にも甘みそがある。「江戸甘みそ」である。仕込み割合は「白みそ」とほぼ同じだが、「江戸甘みそ」は「赤みそ」である。赤い甘みそは、江戸甘みそ以外に類をみない。
江戸甘みそは、白味噌ではありません。赤味噌です。大豆を蒸したことがある方なら分かると思いますが、色が濃くなります。江戸味噌は、蒸した大豆を仕込むので色が濃くなるのです。
雑穀麹みそ
麹は、ハトムギ、キビ、ヒエ、アワなどの雑穀でつくります。
それと大豆でみそを仕込みます。
これは通販で売っているのを見たことがあります。
黄粉麹みそ
何と読むんだろうと思いました。「きなここうじみそ」です。なんと「きなこ」を原料にして、麹を接種して、豆味噌とするのです。著者、永田十蔵氏の発明だそうです。
黄粉は炒って粉にしたものだから、蒸煮して擂砕したものとほぼ同じだと考えられる。どこでも手に入る黄粉を使って「黄粉麹みそ」を仕込んでみよう。
黄粉を使えば、仕込み時間は大幅に短縮されます。
味噌の歴史を知ることができる
この本を読むと、味噌の歴史も知ることができます。私が不思議に思っていたのは、豆味噌です。なぜ、名古屋周辺でだけ豆味噌が作られるのだろうとずっと思っていました。八丁味噌など豆味噌のルーツは朝鮮半島にあるようです。
その部分を少し引用します。
高麗醤の麹は餅麹で、その麹菌は黄麹菌である。餅麹とは、煮大豆をつぶして団子状、あるいは分銅状にしたものに黄麹菌が繁殖したものである。韓土では「メジュ」といい、今でも「醤(ジャン)」の基(もとい)である。この「メジュ」=「餅麹」は、日本でも「みそ玉麹」としてみることができる。日本の「みそ玉麹」は、まさに韓土の「メジュ」そのものである。
豆味噌は「みそ玉麹」を作って仕込むのですよね。
NOTE
この本を読むと、味噌作りのハードルが下がり、自分でも作ってみようと思うようになります。
作りたい味噌は、まず、江戸甘みその丸の内タニタ食堂の減塩みそをコピーしてみたいです。20割麹で仕込んだらどんなのができるのだろう?
そしてもう一つは、豆味噌です。八丁味噌はたまに買いますが、結構高いですから自分で仕込んでみたい。ついでに豆麹ってどんなものなのか見てみたい気持ちがあります。八丁味噌はカレーの隠し味に入れてもなかなか複雑な味になっておいしいです。
そして、八丁味噌の成分分析表を見ると、タンパクが多く塩分はさほど多くないので、タンパク源としておかずにもなるのではないかと思っています。
味噌について他にもいくつか記事を書いています。味噌についてをご覧下さい。