味噌の中でも乳酸菌や酵母が活躍している

味噌は大豆と米麹で仕込むので、麹が発酵させていると思っていたのですが、麹は米や大豆のでんぷんを糖化させ、たんぱく質をアミノ酸にします。その後、乳酸菌や酵母が出てきて、糖分を乳酸やアルコールに分解し、雑菌の繁殖を抑えたり、香りをつくったりします。乳酸菌や酵母は味噌の中でも活躍しています。

味噌の発酵でも酵母と乳酸菌が働いている

このブログを始めて改めて知ったことがあります。それは、「酵母と乳酸菌は相性がよい」こと。特にお酒に関しては、日本酒でもウイスキーでも酵母の前後に乳酸菌が出て来ました。

味噌ではどうなんだろうと思って少し調べたら、やはり乳酸菌が登場します。味噌は麹で仕込みますが、やはり酵母と乳酸菌の助けも借りていました。

この記事では、味噌醸造での乳酸菌の役割について書きます。

味噌の製造

味噌は、大豆を煮たり蒸したりして潰したものに、米麹や麦麹と塩を加えて混ぜ、空気にふれないようにしてそのまま半年から1年ほど寝かせておくとでき上がります。

麹はたんぱく質とでんぷんを分解する酵素をつくる

麹は、たくさんの酵素をつくりますが、主要なものはたんぱく質分解酵素(プロテアーゼ)や糖化酵素(アミラーゼ)です。

これが塩の存在下で大豆や米・麦を分解して発酵、熟成させ、おいしい味噌を造ります。また、味噌造りにはこうじ菌以外に酵母も重要な役割を占めています。酵母は麹の酵素作用によってでんぷんが糖化してできたグルコースを摂取して増殖し、アルコール発酵を始めます。

さらに乳酸菌は、乳酸を作り、味噌に酸味を与えて大豆臭を取り除き、酵母の発育を促します。このように、味噌造りには麹と酵母と乳酸菌が大きな働きをしており、有用な微生物を生育させ、枯草菌などよけいな雑菌を繁殖させないようになっています。

酵母は香りに関係がある

味噌の香りは主に酵母の働きによるものです。酵母はアミノ酸とブドウ糖から各種アルコールやエステルを作り出します。

香りはエステル。味噌も、酒も、ウイスキーも変わりません。

味噌で働く乳酸菌

味噌は、煮てつぶした大豆に麹と塩を混ぜて仕込みます。麹はいろいろな酵素をつくるので、大豆のタンパク質やデンプンが分解されていきます。麹のあとに乳酸菌が増え、その後酵母が増えます。

テトラジェノコッカス・ハロフィルス

味噌で働く乳酸菌は、テトラジェノコッカス・ハロフィルス(Tetragenococcus halophilus)です。醤油の乳酸菌も菌株が同じかどうかわかりませんが、テトラジェノコッカス・ハロフィルスだそうです。

テトラジェノコッカス・ハロフィルス(Tetragenococcus halophilus)は、以前はペディオコッカス・ハロフィルス(Pediococcus halophilus)と呼ばれていましたが、1993年以降、新属Tetragenococcus属として独立しました。形態は四連球菌です。ホモ型乳酸発酵(乳酸だけをつくる)を行い、生成する乳酸異性体はL型です。もちろん耐塩性があります。

乳酸菌は雑菌を抑え塩なれを改善し大豆特有のにおいを取る

乳酸菌が増えると、乳酸によって味噌のpHは5.0付近まで低下し、雑菌の生育を抑制します。味噌を食塩だけで防腐するには25%以上の濃度が必要とされますが、乳酸との相乗効果で10~13%食塩濃度で防腐が可能になります。

また、味噌の香味を左右する酵母はpH4.3~5.1の間で最もよく活動します。つまり、乳酸菌が繁殖して乳酸をつくると、酵母が活躍する下地を作ることになります。 pH低下が不十分な場合、野生産膜酵母が働き、香味を悪くする場合があります。味噌の表面に酵母が繁殖して皮膜ができてしまいます。

さらに、乳酸発酵により味噌の味(塩なれ、しまり)が改善されると同時に原料臭(蒸し大豆臭、麹臭)が除去され色調が安定するとされています。

味噌は塩を使いますから、最初は塩のとげとげした味がします。それがだんだん穏やかになり、本来入っている塩分より食べて感じる塩からさを少なく感じる現象のことを「塩なれ」といいます。

味噌のしまりといわれるものは、酸味から得られます。一般に味噌には酸味はないように感じられますが、わずかですがあります。もちろんそれは乳酸菌がつくった乳酸によるものです。

ところで、味噌はうま味とまろやかな塩味を楽しむものでヨーグルトなど酸味を楽しむような食べものではありません。

だから、味噌は、かなりゆっくりと発酵が進んでいるのだと思います。

長く発酵させると味噌は黒くなり酸味とアルコールが増えるらしい

味噌づくりをネットで調べるといつも一番に出てくるのが、福井のマルカワみそさんの素晴らしいサイトです。

義母が味噌をつくっているので、うちでは手作り味噌を使っているのですが、味噌屋が教える失敗しない手作りみその作り方を読むと自分でもつくってみたくなります。

手作り味噌は仕込んだ後、どのような発酵過程になるのか?を読むと、味噌はゆっくり発酵が進んでいることが大きな写真とともによく分かります。仕込んで10ヶ月の食べ頃の味噌と仕込んで3年以上の味噌がでていましたが、色が黒くなっています。色の変化はメイラード反応によるものです。

長く発酵させた味噌の風味の変化は、長期熟成により、米の甘味が減り、代わりに乳酸発酵による酸味が出てくるとか。また、香りの変化は、10ヶ月目に比べて強くなり、アルコール臭も味噌の状態によっては強くなると書かれていました。

お酒と味噌は違いますが、お酒の発酵のように酸味とアルコールが少しずつ増えていくのだと思います。

味噌はもともと保存食ですから、きっと発酵もゆっくり進んでいるのでしょう。このようにつくっている人たちからいろいろ教えていただけるのはよい時代だと思います。

乳酸菌と酵母の共生関係については論文がありました。日本生物工学会のサイトにあった乳酸菌と酵母の共存と共生です。

NOTE

以前、知人から10年ものの味噌をいただきました。八丁味噌ではありません。米麹を大豆に対してどのくらい使ったか、麹歩合はわかりませんが、自家製の味噌を寝かせたものです。

容器を開けると、味噌のにおいはもちろんですが、はっきりと吟醸酒の吟醸香がしました。吟醸香は、炭素数の短い脂肪酸とアルコールのエステルです。アルコールが増える話を読んで、このことを思い出しました。

味噌について他にもいくつか記事を書いています。味噌についてをご覧下さい。

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