味噌の効能が分かる「味噌力」

味噌汁を飲まない人が増えていると聞いたことがありますが、「味噌力」を読むと、やはり日本人は味噌汁を飲まなければと思うようになります。味噌と健康の関係というより、もっと踏み込んで、味噌が大きな病気を避ける味方になってくれることを教えてくれる本です。

味噌

「味噌力」を読んだ

味噌力を読みました。味噌汁はお好きですか?私はよく飲みます。

自転車が趣味なのですが、長距離を走って疲労してきたときは、コンビニで味噌汁を買って飲みます。

疲労したときは糖分をとるのがよいなんて信じていたときはジュースを買って飲んでいました。しかし、甘いジュースは一瞬、効くのですが、その後に猛烈な空腹感に襲われます。血糖値が上がって下がるからだと思います。甘いコーヒーも飲んだ直後はすっきりしますが、その効果は長続きしません。

ところが、味噌汁は塩分が補給できることもあるのでしょうが、疲れが明らかにとれるのです。そして、おにぎりなど食べなくてもそのまま走り続けることができます。こんな体験を何度か味わうと世間の常識を疑うようになります。

ただ、塩分とりすぎは血圧上がるという理由で、私の実家もそうですが、すごく薄い味噌汁を飲む人がいます。そんな方はこの本を一度お読みになるとよいと思います。

日本人は大豆で生きているんだなと改めて思われるのではないかと思います。

著者は、渡邊敦光先生。広島大学を退官された先生です。この本は、味噌と健康の関係よりも、もっと踏み込んで、味噌と放射能、味噌とがん、味噌と高血圧、糖尿病、脳卒中など大きな病気との効果効能の関係を教えてくれます。こんな本を読みたかったと思える本です。是非、一度読んでみてください。

味噌は放射能から体を守る

渡邊先生は、もともと消化管組織の変化とがんの発病との関係を研究していました。ラットやマウスに放射線をあて、小腸の組織に障害を起こしたり、化学発がん物質を与え、その経過を観察しながら消化管におけるがん発生のメカニズムを解明しようとしていました。

そこに味噌の研究を手伝ってほしいと依頼が来て、放射線と消化管組織、そして味噌との関係を調べることになりました。

実際にやってみると、放射線で障害を受けたマウスの小腸腺窩(せんか)が味噌で再生することがわかりました。

放射線を浴びる数日前から味噌を食べていると効果的

マウスに「みそエサ」を1週間食べさせてX線照射を2~2分行い、小腸のようすを確かめる実験が行われました。

小腸は細胞分裂が盛んなところで、ヒトの場合、1日に約900億個の細胞が新しく生まれているといわれています。マウスだと1日に約2億2000万個だそうです。

その分、腸の細胞は寿命が短く、3.5日で死んでしまいます。小腸は細胞が激しく入れ替わっている場所なのです。

しかし、放射線を浴びると障害が起き、新しい細胞が生まれなくなってしまうのです。小腸の表面には絨毛(じゅうもう)という細かい突起があり、その下には、ひたすら増殖を続けている腺窩(せんか)という組織があります。

放射線を浴びると、この腺窩の増殖がストップしてしまいます。すると、古い細胞はどんどん死んで行くのに新しい細胞が生まれないことになります。すると腸が傷み、血便や下痢などが引き起こされます。

普通のエサを食べていたマウスでは腺窩が大きく減っていましたが、みそエサを食べていたマウスの小腸腺窩は、普通のエサを食べていたマウスより再生していたのです。

また、みそエサを食べる時期の違いも、結果に影響がでました。

放射線をあてた直後、1日後、2日後にみそエサを与えても小腸腺窩の再生は見られませんでした。あくまでも放射線をあてる前にみそエサを与えていたマウスだけが放射線による障害をやわらげることができることが分かりました。

味噌はがんから体を守る

味噌は乳がんの発生をおさえる

食生活の変化で乳がんになる女性が増えているそうですが、みそ汁を1日1杯未満しか飲まない人のガンリスクを1とすると、1日3杯以上飲む人のガンリスクは、0.6になるそうです。つまり、みそ汁を3杯飲むと、乳がんの発生率を40%軽減することにつながるそうです。大豆、豆腐、油揚げ、納豆では、この直接的な効果は期待できないそうです。味噌に意味があるらしいです。

味噌は肺腺がんの発生をおさえる

肺腺がんは、肺がんの60%程度を占めていると言われているがんのタイプで、粘膜にできます。気管支の末梢などに生ずるタイプのがんです。

発がん物質を投与したラットに対し、「普通のえさ」「10%のみそが含まれたエサ」を食べさせた場合に、肺の腺がんがどのように発達するか実験されました。

その結果、発がん剤を投与されていたラットに比べて、みそ入りエサ、特に「180日熟成のみそが混ざったエサ」を食べていたラットはがんの数も増殖も少ないことがわかりました。

味噌は胃がんの発生をおさえる

昔は胃がんになる人が多かったです。胃がんは塩分とりすぎによって起こります。塩のきいた漬物をよく食べた時代がありました。

高濃度の塩分は、胃の粘膜を破壊します。もちろんすぐに修復されますが、それが毎回食事のたびに続くと胃の粘膜が傷み、胃がんの原因になります。

みそ汁3杯飲むと確かに塩分量は増えますが、ラットを使った実験では、食塩による塩分と味噌による塩分の量を揃えたエサを与えて、比較した結果、がんの発生率も大きさも味噌の方がずっと小さくて低かったのです。この場合も熟成期間が180日のみそがよかったようです。

ちなみに用意されたみそは180日熟成が一番長く、これ以上の場合は分かりません。3年味噌なんていいます。きっと風味がよくなる長期熟成味噌がよいのだと思いますよ。

味噌は大腸がんの発生をおさえる

大腸がんは、今や日本人のがんで第一位になっています。

みそには、前がん病変(がんになる確率が高い組織の異常)を抑制する力と、大腸がんの成長をおさえる力があることがラットの実験によって確かめられています。

発がん物質と各種エサを与えたら、みそを多く含むエサを食べたラットは大腸前がん病変になりにくかったのです。

また、大腸がんになってしまった組織について、みそを多く含むエサを食べたラットは、普通のエサを食べていたラットに比べて半分くらいの大きさにしかなっていませんでした。

その他、肝がんや早期前立腺がんの発生をおさえる効果があるそうです。

味噌の塩分では血圧は上がりにくい

塩分と高血圧の関係は、はっきりしています。健康診断で血圧が高いと、塩分のことを必ずいわれます。ただ、この本によると、塩分を減らし過ぎると血圧は下がるものの、心臓血管系の疾患にかかるリスクはまた高くなるそうです。

みその塩分については、食塩感受性のあるラットを使って確かめられました。食塩感受性とは食塩をとるとそれに応じて血圧が上がる体質のことです。

実験の結果は、同じ塩分濃度のエサを食べていても、塩でなくみそを含んだエサを食べていたラットの血圧は上がりませんでした。

しょう油はどうなんでしょうね?普段料理するときの塩味の調味料として、食塩でなくみそやしょう油を使うようにしようと思いました。

味噌の効果は味噌の色が濃いほどよい

味噌の種類による抗酸化性の比較によると、味噌の抗酸化性の強さは、色の濃淡が大きく関与しているのではないかと考えられています。

味噌の色の違いは、熟成期間の違いによることが大きく、熟成期間が長いほどいわゆるメイラード反応によってできる褐色物質、メラノイジン量が増して色は濃くなっていきます。メラノイジンは強い抗酸化力を持つことが知られています。

育った地方によって味噌に好き好きがあると思いますが、濃い色の味噌を選ぶようにするとよいようです。ちなみに私は濃い色の味噌の方が好きです。

八丁味噌は長期熟成の味噌として知られています。たとえばこれ。最近、お店で買えるようになってきました。

米麹や麦麹を使わず、原材大豆の全てを麹にした豆麹で作られる豆味噌です。長期間(1年半から2年以上)天然醸造され、腐敗を防ぐために塩分濃度を高めているため独特の渋みとうまみが特徴です。

関東では赤だしをあまり食べませんが、デパートや高級スーパー、自然食品店の他、数は少ないですが、味噌専門店に行くと必ずあります。

こういうのを毎日飲んでいてもよいですね。

大豆は脳卒中を遠ざける

みそに限らず大豆食品は、脳卒中のリスクを軽減することが知られています。実験用のラットは、遺伝的に必ず脳卒中で死ぬ「脳卒中ラット」が使われました。

普通のエサを食べたラットは100日未満で生存率が0%になりますが、大豆タンパクのエサを食べたラットは、生存率が0%になるまでに2倍の日数を要しました。大豆を食べなければ、100日未満で生存率0%になっていたのに、大豆を食べることで寿命が延びたのです。

その他、みそは糖尿病、肥満、便秘などから体を守るという話もありました。洋風の料理は塩の方がよいのですが、きっと味噌や醤油を使った方がよいと思いますよ。

私はカレーを作るのが好きで、油はオリーブ油少々にして、できるだけ使わないようにしています。S&Bのカレーパウダーも使いますが、クミンシード、ブラックペッパー、シナモン、その他代表的なスパイスは使います。肉は鳥むね肉を買ってきて、皮は捨てます。その時に塩代わりに活躍するのは、たまり醤油なのです。

味噌では大豆アレルギーが起こらない

さらに農大の小泉先生の新しい本、醤油・味噌・酢はすごいを読むと、味噌の効能が書かれていました。追加してご紹介しましょう。

味噌にはたんぱく質が肉と同じくらい含まれていて、たんぱく質はアレルギーの原因になります。しかし、味噌では大豆アレルギーが起こらないのだそうです。

食物アレルギーは、タンパク質やその分解途中のペプチドでは起こるが、アミノ酸にまで分解したものでは起こらない。

大人はタンパク質を消化管でアミノ酸にまで分解して吸収するが、乳幼児では、消化分解する力が不十分だったり、消化管が未発達のため、アミノ酸まで分解しないままに、体内に吸収してしまい、アレルギーを起こしてしまう。

アレルギーを起こす原因となる物質をアレルゲンというが、乳児期の三大アレルゲンは、卵、牛乳、大豆である。

大豆に含まれるところのタンパク質の中で、十六種がアレルゲンであることがわかっている。その中でも最も頻度が高く、約六十五%の人にアレルゲンとなっている成分が発見され、「Gly m Bd 30K」と命名された。

これはダニアレルゲンと共通するアミノ酸の配列を持つもので、大豆にも存在する。

ところが、味噌、醤油、納豆などの大豆の発酵食品にはこのアレルゲンは検出されない。

その理由は、味噌が発酵熟成する間に、タンパク質分解酵素によってこの部分が約三ヶ月で分解されて、脱アレルゲン(アレルギーを起こさない物質)になるからだと考えられている。

お子さんが大豆アレルギーで困っているお母さんは、長期熟成味噌を買って下さい。少し前のことですが、三軒茶屋に八丁味噌を買いに行きました。その時に聞いたのは、いまどき2年長期熟成させている味噌は八丁味噌くらいしかないよとのことでした。

坂本商店で八丁味噌を買う@三軒茶屋
味噌は色が濃い方がよいらしい。もともと寒いところで育っているので、味噌は赤味噌だ。味噌の色を濃くするのはメラノイジンというのだそうだ。寝かせている時間が長くなるとどんどん黒ずんでいくが、メラノイジンが増えて、体には有効なのだそうだ。 この2

メラニン色素の合成を防ぐ

メラニン色素はシミの原因になると知られています。味噌が発酵すると、大豆の油が分解されて、脂肪酸とグリセリンになります。切り離された脂肪酸は、遊離脂肪酸と呼ばれます。

遊離脂肪酸は、皮下でできるメラニン色素の合成を抑制する効果がある。メラニン色素は、体内のチロシンというアミノ酸から合成されるが、このときに働く酵素の作用を、味噌の遊離脂肪酸が阻害するからである。(中略)

昔から味噌を扱う人は肌がきれいだといわれるのはこのためかもしれない。

味噌のオリゴ糖がビフィズス菌を増やす

味噌にもオリゴ糖が入っていました。

大腸に多く含まれるオリゴ糖の「オリゴ」は「少数」という意味で、ブドウ糖、果糖などの単糖類(糖の一番小さい単位)が少数結合しているものをオリゴ糖という。

人間はこのオリゴ糖を消化できず、大腸まで送る。大腸内にいる有害な腐敗菌や大腸菌はオリゴ糖を利用しないが、有害菌を抑えるビフィズス菌はこのオリゴ糖を選んで、栄養源にして繁殖している。

歳をとるとビフィズス菌が減ってくるので、毎日の味噌汁など、味噌に含まれる大豆を通じてオリゴ糖を摂取することは、腸内環境をよくすることにつながることになる。

味噌汁は煮たてないように

川島四郎先生と漫画家サトウサンペイさんの続 食べ物さん、ありがとう―日本人の栄養学講座にはこんなことが書かれていました。ちなみにこのシリーズは3冊ありますが、どれもとても楽しく読めます。

先生 サンペイさん、味噌の命は何だと思いますか。

サンペイ 「香り」ですか?インスタント味噌汁のCMでは、いつも”ウーン、いい香り”なんていっているから。

先生 そのとおりです。よく、三年味噌はおいしい、というでしょう。なぜかというと、三年味噌には、「味・色・香り」の三拍子がそろっているからです。

味噌は、仕込んでから一年目に「味」、二年目に「色」、そして、三年かかってはじめて「香り」がでてくるのです。

ほとんどの女性は、味噌が三年もかかって、やっと作り上げたものを、最後の肝心な味噌汁をつくる場面で、台無しにしているんです。

サンペイ それは、けしからんですねェ(笑い)。どうすれば、味噌の香りを失わないで、本当のうまさを味わえますか。

先生 グラグラ煮たてないで、あたためればいいんです。八〇度以上で三、四分間煮たてるとせっかくの三年もかかって作った「香り」は飛んでしまいます。

サンペイ そういえば、味噌を入れた直後が、一番おいしそうな香りがしますね。

外食していると、なかなかおいしい味噌汁を食べることができません。(高級店は別です)自分で味噌汁を作る時は、ダシは沸騰させないとよく出ませんが、具をあまり煮込まず、味噌は最後に入れると一番おいしくできます。

味噌は熟成が進むと色も香りもよくなると覚えておきましょう。

まとめ

味噌の効果効能はなかなかよさそうですね。しかし、サプリメントとは違って、味噌は日本人にとっては基本的に「ごはんとみそ汁」とセットになっているものです。

みそ汁を飲むのは当たり前のことです。しかし、若い人の中には、ごはん(米)を食べない人も結構いるらしく、お米の消費量が下がってきています。きっと味噌の消費量もそれに合わせて減っているでしょう。

この記事の最初に、私が自転車で長距離を走った時は、途中、コンビニでみそ汁を買って飲む話を書きました。本当に疲労困憊すると、食べ物のよさを感じられるようになります。

この記事を読んでくださった若い方で、もし、ごはんやみそ汁を普段あまり食べないという方がいたら、からだが疲れ切った時に、コンビニでよいですから生味噌タイプのみそ汁を買って飲んでみてください。きっとよさを感じていただけると思います。

味噌に興味を持ったら、是非、紹介した2冊の本を読んでみてください。

味噌について他にもいくつか記事を書いています。味噌についてをご覧下さい。

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