八丁味噌を買ってきてたまに使っています。八丁味噌は愛知、岐阜、三重県あたりでつくられている豆味噌のうち、愛知県でつくられたもののことを指します。独特の味がして、渋みや苦味も感じます。
私は北海道で生まれ育ったので、赤味噌が好きですが、八丁味噌は黒いです。八丁味噌と赤味噌を合わせた赤だしはほとんど飲んだことがありません。
しかし、味噌の効能が分かる味噌力を書いた時に、味噌は寝かせる年数が長く、色の濃い方がメラノイジンがたくさん入っていて体によいことが分かりました。

では早速と買って来ましたが、八丁味噌はかなり味が強いので、負けないように強いダシを使わないとダシの後味が口に残らない味噌汁になってしまいます。
ちなみにこれは、買いに行った三軒茶屋の味噌屋(坂本屋)さんで撮らせてもらいました。

八丁味噌とは
名前の由来は地名から
江戸時代の岡崎に八町村という地名があり、それが名前の由来になっています。現在の地名は岡崎市八帖町となっています。八帖を八丁として八丁味噌と呼ぶようになりました。
豆味噌の中で、愛知県で製造されたものを八丁味噌と呼ぶようです。
造り方の特徴は大豆だけを使ってつくる
八丁味噌は豆味噌です。大豆だけを使ってつくる味噌です。たいていの味噌は米麹や麦麹を使ってそれで蒸した大豆を発酵させるのですが、八丁味噌は、麹を直接大豆に植えつけるのです。
テレビで日本酒の仕込みを見ることがあると思います。杜氏さんや蔵人が麹室に入って蒸したお米に種麹をかけてお米とよく混ぜ、バラバラにしていきます。お米一粒一粒に麹菌が繁殖して、白くバラバラになった麹を「散麹」(ばらこうじ)といいます。
ところが、八丁味噌の麹は豆に植え付けますが、方法がだいぶ違います。蒸した大豆をおむすびのように握るか丸く固め、それに種麹を植え付けて培養します。この方法を餅麹(もちこうじ)と呼ぶそうです。変わってますね。画像を探しました。フリー画像はないので、リンクを貼らせていただきます。是非、こちらのサイトをご覧下さい。
味噌玉麹の秘密から一部引用させていただきます。
味噌玉の上から香煎に種麹を混ぜたものをふります。これを室に入れ四日間で味噌玉麹にするのです。
味噌玉の内部は嫌気性(酸素の少ない状態)となり、乳酸菌が育成しやすくなります。乳酸菌を充分に育成することにより、味噌玉のPHは酸性になります。
このことにより非常に強い納豆菌が嫌う環境を作るのです。室入れした翌日の昼頃には酸味のある匂いを感じることができます。
したがって味噌玉麹の豆みそは乳酸菌が多いのです。乳酸菌は腸内環境の良い働きをし、腸内から免疫力を作り、美しい肌をつくってくれる強い味方です。
麹は麹菌で、乳酸菌は別の菌です。ただ、醤油でも味噌でも日本酒でも、麹、乳酸菌、酵母はセットで働きます。
赤味噌と八丁味噌の違い
赤味噌と八丁味噌の違いは米麹を使うか使わないかです。八丁味噌は麹も含めて大豆だけを使った味噌です。
赤味噌も色の濃い味噌です。実は私は、八丁味噌は赤味噌が長期熟成されたものだと思っていました。赤味噌は、仕込む時に米麹を使います。それが違いです。もちろん、赤味噌も年数が経つとどんどん黒くなるのは同じです。
豆味噌は、大昔、朝鮮半島から伝わってきたらしい
農大の小泉先生の醤油・味噌・酢はすごい – 三大発酵調味料と日本人 によると、豆味噌の味噌玉をつくる方法は、中国から朝鮮半島を経由して日本に入ってきたものだそうです。
日本の豆味噌を造るときの味噌玉とまったく同じものが朝鮮半島に今もあって、それを「鼓」(メジュ)と呼んでいる。中国の古代文献に「鼓」(シ)とう字は見えるので、おそらく中国から朝鮮半島に伝わり、そこで形を変えて「鼓」となった。
それを使って造った味噌が「甜醤」(テンジャン)、醤油が「干醤」(カンジャン)、唐辛子味噌が「苦椒醤」(コチュジャン)なのである。
つまり、朝鮮半島から高麗人が渡来し、そのときに「鼓」が持ち込まれ、それが日本での「味噌玉」づくりになったと見られている。(中略)
なお、高麗人による豆味噌の日本への伝来経路は、日本海から若狭湾の敦賀付近に入り、そこから陸路近江の余呉、浅井を抜けて関ヶ原から美濃平野に入り、まず飛騨味噌(この味噌も味噌玉を使った大豆だけの豆味噌である)で発達し、一部は北上して信州の一地区に及んだが大半はそれが三河に広まった。
小泉先生によれば、味噌の伝搬ルートは2本あるそうです。奈良時代からある味噌は、醤油と関係が深く、中国から伝来した醤(ひしお)がもとになって、醤油と味噌に分化しました。これが普通の味噌と醤油です。
そして、もう1本のルートが、上記のように朝鮮半島で味噌玉というアレンジを加えられた豆味噌です。
八丁味噌の特徴
八丁味噌は大豆だけが原料ですから、同じ重量なら、肉のタンパク質と同程度のタンパク質が含まれています。栄養満点ですね。
たんぱく質と脂質が多く炭水化物が少ない
豆味噌は大豆だけを使っているので、大豆の特徴である、たんぱく質と脂質が多く、炭水化物が少ないことがそのまま反映されています。
他の味噌と比較してみましょう。
米みそ甘みそは使っている米麹の量が多い味噌です。淡色赤色については、赤みその方が熟成時間が長くなったものだとお考えください。
米麹や麦麹をつかうと炭水化物の量が増えます。
エネルギー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | 食塩相当量 | |
米みそ甘みそ | 217kcal | 42.6g | 9.7g | 3.0g | 37.9g | 6.1g |
米みそ淡色辛みそ | 192kcal | 45.4g | 12.5g | 6.0g | 21.9g | 12.4g |
米みそ赤色辛みそ | 186kcal | 45.7g | 13.1g | 5.5g | 21.1g | 13.0g |
麦みそ | 198kcal | 44.0g | 9.7g | 4.3g | 30.0g | 10.7g |
豆味噌 | 217kcal | 44.9g | 17.2g | 10.5g | 14.5g | 10.9g |
食塩については、豆味噌は意外と少ないです。味噌100gあたり10.9gです。味噌汁一杯に使う味噌の量は、約16gだそうです。その根拠は、味噌は10倍の水に薄めるのがだいたいの目安だからです。(出典|お味噌をどれくらい仕込んだら良いのかわからない人へ)
豆味噌の味噌汁を一杯飲むと、1.6gくらいの食塩量になります。
今はあまり食べないですが、特に豆味噌を塗って焼いたおにぎりは、たんぱく質も脂質(大豆の油)も一緒に食べられて栄養満点だったのです。
2~3年寝かせた長期熟成味噌
八丁味噌は桶の上に石をたくさん積んで2~3年寝かせて長期熟成させるところが特徴です。味噌屋さんにお聞きしたところ、長期熟成の味噌は減っているそうです。
しかし、八丁味噌は長期熟成させることが伝統なので、長期熟成の味噌がほしくて買うなら間違いがないとのことでした。
八丁味噌のメーカー
愛知県岡崎市には、合資会社八丁味噌カクキューさんと株式会社まるや八丁味噌さんがあります。どちらも工場見学ができるようです。一度見てみたいです。

乾物屋さんから聞いたおすすめ
近所でよく行く乾物屋さんに聞いたおすすめは、カクキュー 三河産大豆八丁味噌銀袋だそうです。これは定番商品なので、切らすわけにいかないといっていました。
もし、ご近所のお店で買えれば、メーカーサイトによると643円くらいです。まずはお近くで探すのがよいです。メーカーサイトのオンラインショップでは、579円でしたが、送料が680円かかります。
それを基準に安く買えるところを探してみてください。
八丁味噌のレシピ
味噌汁
八丁味噌を使ったおいしい味噌汁の作り方は、メーカーに聞くのが一番早いです。
まるや八丁味噌さんのレシピは2つ公開されていました。ダシはコンブとかつお節でとるのが基本みたいです。
カクキューさんは、懐石料理屋さんの味噌汁の作り方を公開していました。

まとめ
八丁味噌は、以前はまったく使ったことがなかったのですが、今は切らさないようにしています。他の味噌も使っていますが、意外と八丁味噌は使いでがあります。カレーを作る時に、コンソメ代わりにスプーン一杯入れると複雑な味になります。
いまは何でもネットで注文できる時代ですが、お住まいの近くに味噌屋さんがないか調べて、買いに行くとよいですよ。まず、値段が安いです。安心して買えます。
味噌について他にもいくつか記事を書いています。味噌についてをご覧下さい。