麹は米を糖化させるだけでなく大豆のタンパク質も分解する

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日本酒の醸造は蒸した米に麹を植えつけて糖化させていましたが、味噌をつくるときは、茹でるか蒸した大豆に米麹を加えて発酵させます。同じ麹ですが、麹はデンプン、タンパク質、脂質を分解する酵素をそれぞれつくります。

味噌は大豆と塩と米麹だけでできる

誰でもできる手づくり味噌―はじめてでもできる極上の味を読みました。もと麹屋さん永田十蔵さんの本です。この方の本は実に面白い。しかし、この本は現在入手不可になっていて、アマゾンでは古本にプレミアムがついているようです。私は、神保町にある農文協の農業書センターに行って買って来ました。

この本は麹づくりから仕込みがスタートできるようになっています。私が若い頃にこんな本を読み続けたら、間違いなく農学部に行って食品の勉強をしただろうなと思います。

味噌については思い出が一つあります。私は若い頃、山小屋の小屋番をやっていたことがあります。そこに小屋のオーナー手作りの味噌がありました。

山小屋は夏でも日中の気温がせいぜい15℃程度で、6月に雪が消えてから10月にまた雪が降るような気候でしたから、食料庫の室温はいつもとても低いのです。お客さんがあまり泊まらない小屋だったので、3年前に荷揚げした味噌樽がそのままになっていました。

それを開けて味噌汁を作ってみるとものすごく深い味がしてあまり出汁を入れなくてもよいくらいでした。特徴は、すぐに味噌の成分がお椀の下の方に沈んでしまうのです。低温熟成させるとこんな味になるのかと思ったものです。

麹は米を糖化するだけではないのか?

私も味噌を作ってみようと思いました。そして、この本を買ったのは、味噌の発酵過程について知りたかったのです。味噌づくりをするために麹を加えるのは知っていましたが、わが家でできるこだわり清酒で書いた通り、麹の役割はデンプンを糖化させることだと思います。

しかし、味噌はタンパク質が豊富な大豆を使います。大豆のタンパク質が分解されて味噌になるのですが、その中で、麹はどんな役割をしているのでしょう。

麹はタンパク質、デンプン、脂質を分解する酵素をつくる

味噌の原材料の大豆、米、麦からつくられます。それぞれ、タンパク質、デンプン、脂質が含まれています。これに麹を加えるのですが、麹がつくる酵素がどれも分解していくのだそうです。

タンパク質を分解する酵素は、プロテアーゼ。デンプンを分解する酵素は、アミラーゼ。脂肪を分解する酵素は、リパーゼです。

タンパク質はアミノ酸に、デンプンはブドウ糖や果糖などの単糖類、ショ糖(砂糖)や麦芽糖などの二糖類、デキストリンという多糖類に分解されます。脂肪は、脂肪酸とグリセリンに分解されます。

麹がこんなに酵素を持っているとは知りませんでした。

味噌に使う麹はプロテアーゼを多く生産する種類

味噌に使う麹は、黄麹菌です。成熟した麹菌の胞子が黄色になるのが特徴です。麹には黄麹菌の他、醤油麹菌、泡盛麹菌、紅麹菌があります。

黄麹菌は、味噌、醤油、日本酒、焼酎、みりんの醸造に使われる麹の中でも代表的な麹菌です。この中でも種類があり、デンプンを分解するアミラーゼを多く生産する種類は、酒造用に、プロテアーゼを多く生産する種類は、味噌、醤油に使用されます。

この黄麹菌は、ニホンコウジカビと呼ばれ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)というのが学名です。もともと米麹から発見されたためイネの学名Oryzaをそのまま使用しています。

醤油にも使われますが、醤油製造用には醤油麹菌もありました。醤油麹菌は、ショウユコウジカビ(Aspergillus sojae)と学名がつけられています。sojaeは大豆のことです。

外から酵母が入って来てアルコールができる

味噌の発酵はデンプン、タンパク質、脂質を分解しながら進みますが、デンプンから分解された単糖類は、外から入ってきた酵母によってアルコールになります。

タンパク質はアミノ酸に分解され、グルタミン酸やアスパラギン酸という、うま味成分も含め18~19種類になるといいます。

脂肪酸とアルコールがエステル結合して香り成分になる

脂質(脂肪)は脂肪酸とグリセリンに分解されますが、脂肪酸がエチルアルコールと結合してエステルという形になると、香り成分になります。味噌では香り成分が300ほどあるとか。

日本酒の醸造では、まず米を磨いて米粒を小さくしますが、これはなるべくタンパク質を取り除いて飲んだ時の雑味を少なくする目的があります。調味料としての味噌は、その反対にいろいろな分解物が複雑な味をつくるのです。

味噌汁のうまさは浮遊している粒子

味噌汁をコーヒー用のフィルターペーパーで濾過するとクリアな液体になり、その味はコンソメスープのようなものになるそうです。濾過した味噌汁は、もはや味噌汁ではなくなります。

味噌汁の味は、濁り、浮遊している粒子(コロイド)が関係しているそうです。これは味のからくり (1967年)という本に詳しく書かれているらしいので、図書館で探してみようと思います。味噌濾しでゆっくり味噌を溶き、適度なコロイド粒子を汁の中に溶かし出す。これが味噌汁をうまくする方法らしいです。

味噌はなめらかでない方がうまい

市販の味噌は、なめらかさを出すために、味噌濾しをして、さらにアミラーゼやプロテアーゼを使って、味噌の粒子をできるだけ溶かすような工夫をしているものもあるそうです。そうするとよく溶けるなめらかな味噌になっているのですが、あまりおいしくない。

冒頭の話に戻りますが、手作り味噌で、山小屋の低温な食料庫で長期低温熟成された味噌は、椀につぐとほどなく沈んでしまう味噌でした。これはおいしい味噌の証明だったのかもしれません。

実際、お客さんにはものすごく好評で、なんでここの味噌汁はこんなにおいしいのかとよく聞かれたものです。

NOTE

日本酒で蒸した米を糖化するために麹を使うと知ると、なぜゆでるか蒸した大豆と米麹を一緒に発酵させると味噌になるのかとても疑問に思いました。しかし、麹はデンプンもタンパク質も脂質も分解する酵素をそれぞれつくることを知れば解決です。

ヨーグルトは糖を乳酸菌が乳酸に分解してその酸で固まるのですが、乳酸菌に比べると麹はずいぶん高機能だなと思います。

味噌について他にもいくつか記事を書いています。味噌についてをご覧下さい。

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