赤味噌の食べ頃の時期は意外と短いのかもしれない

味噌は三年なんてテレビのCMだったか子供の頃に聞かされたことがあります。発酵食品は長く寝かせるといいと思っていました。ところが、赤味噌は、工場から出荷されたあと、容器に入っていても意外と早く味が落ちてしまうのだとか。

私にとってはおどろきな話でしたが、今回そのことについて書きます。

味噌樽

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味噌には思い出があります。

ずいぶん前のことですが、八ヶ岳の根石山荘の小屋番をやっていたことがあります。標高2500メーターくらい。真夏でも気温は20℃にはならないところです。11月の小屋締めの時で-20℃近くまで下がっていたので、真冬はもっと寒いはず。

大体、-20℃から20℃くらいの温度になる環境です。標高が高いので少し空気は薄く、ご飯は圧力鍋で炊かないとだめなところです。

あるとき、小屋の物置で味噌樽を見つけました。小屋の主人に聞いてみると、忘れてたが2、3年は経っているんじゃないかということでした。自家製味噌です。

開けてみると、ひどく濃い色になっているわけではなかったです。上に水分が出てました。なめてみるとうまい!すごくうまみが強い味噌で、だしの力を借りなくてもみそ汁になりそうでした。

みそ汁を作ると、すぐに味噌と上澄みが分離して味噌が沈んでいってしまうのですが、理由は分かりません。

しかし、実にうまい味噌で、小屋に来るお客さんにもどうやったらこんなおいしい味噌が手に入るのかと何度も聞かれました。

味噌は低温で長く置いておくとおいしくなるらしい、と刷り込まれた経験です。

その後、勤めた会社が日本橋高島屋の近くだったので、帰りに食品売り場をのぞいてたまに2年味噌など長く熟成させた味噌を買いましたが、あの時にしばらく食べていた味噌を超えるものに出あったことはありません。

味噌の品質変化についての実験

今回、味噌の品質保持という論文を見つけました。1995年頃に書かれたもののようです。

冒頭こんなことが書かれていました。

味噌には熟成という明確な概念がなく,独立した熟成工程というものも存在しない。あえて言えば,主発酵工程がすなわち熟成工程である。したがって,味噌は食べ頃も品質劣化の始まる時期もはっきりしない奇妙な食品である。この奇妙さのよって来たるところは,味噌が含塩固形の発酵食品であることにある。

一般に発酵食品は,その他の加工食品に比べ製造工程が複雑で製造に時間を要するが,なかでも味噌は上記の特質をもつため,酵素反応も微生物活動も緩慢で低いレベルで反応が止まってしまうこと,さらにおりさげなどの発酵以後の工程が不要なためである。

塩を加えて発酵させているので、ぶくぶく湧いて発酵するようなことがなく、緩慢に進む。そして、包装して出荷されたあとも状態が変化していくということだそうです。

しかし、味噌は腐ることがないため、食品衛生法が公布された翌年(1948年:昭和23年)以来食中毒の事件になったことはないそうです。

この論文では、パッケージに詰められた赤味噌と淡色味噌を比較し、5℃と20℃で保存した後、1ヶ月後~4ヶ月後までの、色、香り、味の変化について調べられています。

味噌の種類3つ

味噌には色によって赤味噌、淡色味噌、白味噌があります。他にも分類の仕方はありますが、色が薄いのは、発酵期間が短いのです。白~淡色~赤になるにつれて発酵期間が長くなっています。

色が濃くなるのは、”メイラード反応”という、アミノ酸が糖と反応して褐色を帯びる化学変化によるものです。

淡色味噌はより香味が増す

赤味噌と淡色味噌を比べると、淡色味噌の方が若い味噌です。味噌にはY値(黄色み)という値があり、20%を境目にしてそれより下なら赤味噌、上なら淡色味噌になります。

赤味噌と淡色味噌の醸造期間がどのくらい違うのか調べてみました。

お味噌の種類についてによると、麹をあまり加えない米味噌の辛口味噌で、淡色味噌は2~3ヶ月。赤味噌は3~12ヶ月とかなり差がありました。

この論文では、5℃と20℃で保存した淡色味噌と赤味噌の経時変化を官能検査で比較しています。

しかし、20℃ で保存した場合、淡色味噌は製造したばかりの時よりも品質がよくなったと判断されたのが意外でした。香味について4ヶ月までは半数以上の審査員が製造したばかりの時より良いと評価し、製造したばかりの時と差がないとした審査員を加えると80%以上になりました。

一方、5℃で保存すれば、状態が変わりにくいことは予想できます。実際のところ、5℃ では変化が少なく、製造したばかりのものと比較して変わりがないが圧倒的に多く、製造したばかりの時より良いという評価は少なかったです。

赤味噌の味は意外と早く落ちるらしい

淡色味噌でよいなら、赤味噌の方はもっとよいだろうなと思ったのですが、結果は正反対でした。

色に関しては20℃保存の場合、2ヶ月経つと、製造したばかりの時に比べてよくないと思う人が50%になります。確かに味噌の色は、冷蔵庫に入れておいても毎日フタを開け閉めするうちに黒ずんできます。

香りに関しては、3ヶ月まではまだ半分以上の審査員が、製造したばかりの時に比べてよい、製造したばかりの時に比べて変わりないと答えているのですが、4ヶ月になると、逆転します。

味に関しては4ヶ月目で、ぎりぎりまだ製造したばかりの時に比べてよい、製造したばかりの時に比べて変わりないと答える審査員が多いという状態です。

さらに厳密にした実験も赤味噌と淡色味噌について行われています。

製造したばかりの味噌を基準として、つまり標準として、5℃と20℃をしたもの、それぞれ1ヶ月後~8ヶ月後について、標準と比べてそれからの変化をどこまで許容するかと設問した実験です。

淡色味噌5℃保存のものは、色、香り、味について、8ヶ月目のもので全員が一致して許容できないと答えました。つまり7ヶ月目までは許容できたのです。

淡色味噌20℃保存のものは、色に関しては、4ヶ月目までに全員が許容できないと。香りについては、6ヶ月目までには過半数が許容できないと答え、8ヶ月目までに全員が許容できないと答えました。

味については、5ヶ月目までには過半数が許容できないと答え、8ヶ月目までに全員が許容できないと答えました。

赤味噌5℃保存のものは、5ヶ月目に許容できない人が出始め、8ヶ月目までに全員が許容できないと答えました。

赤味噌20℃保存のものは、2ヶ月目までに過半数が色、香り、味とも許容できないと答え、香り味については5ヶ月目までに全員が許容できないと答えました。

色については1人だけ8ヶ月目に許容できないと答えた人がいましたが、傾向としては5ヶ月目までにほぼ全員が許容できないと答えていたようなものです。

味噌は三年といわれているのに、製造に仮に12ヶ月程度かかった赤味噌が、パッケージに入れられて出荷され、その後5ヶ月で色、香り、味とも許容できないレベルになってしまうのはなぜなのでしょう?

赤味噌の味が落ちるのはなぜか?

市販の赤味噌は、思ったより早く味が落ちていくようです。なぜなんでしょう?こんな風に書かれていました。苦みがでてくるようですね。

伝統的な赤味噌では褐変臭は感じるが,このような苦味を経験したことはない。推測にすぎないが,近年の赤味噌の麹歩合の高さに原因があるのではないかと思われる。

この文面を読むと、昔に比べて最近の赤味噌に使われる麹の量が増えているということでしょう。麹歩合ということばが出て来ました。何となく分かるがよく分からない。調べてみました。

麹歩合とは

麹歩合(こうじぶあい)とは、味噌の材料に対しての麹の割合のことをいいます。例えば味噌を仕込む前の大豆が10キロで麹が8キロのお味噌があるとします。この場合、麹歩合は8歩(はちぶ)といいます。

また、たとえば、麹歩合が22歩だと、仕込む前の大豆10キロに対して麹を22キロ使うということになります。こんな味噌あるのですね。(?)

麹の割合(麹歩合)が少なく、大豆の量が多いと、大豆の旨味や食塩の塩味、大豆の香りが強くなります。大豆はたんぱく質が多いので、アミノ酸によって旨味は確かに強くなりそうです。

しかし、麹を多くするとなぜ苦みが強くなるのかは、分かりませんでした。

伝統的な濃い赤味噌は麹歩合が低いばかりでなく,大豆からくる味を重要視しており,窒素成分による濃厚な味が苦味をマスキングしているものとも考えられる。

窒素成分とはたんぱく質やそれを分解したアミノ酸のことです。苦みがでても旨味がそれをカバーしてしまうのかもしれません。

味噌は濃い色のものを選ぼう

味噌の効能が分かる味噌力で書きましたが、味噌の色は、メラノイジン量が増して濃くなっていきます。メラノイジンは強い抗酸化力を持つので、色が濃い味噌を選んでいた方が健康のためにはよいですよ。

味噌力を読みました。味噌汁はお好きですか?私はよく飲みます。 自転車が趣味なのですが、長距離を走って疲労してきたときは、コンビ...

まとめ

今回、赤味噌は早く味が落ちることが分かりましたが、ひょっとすると仙台味噌のような麹をあまり使わない辛口味噌なら、長く置くことで旨味が苦みに勝っておいしく食べられるのかもしれないと思いました。

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