東京農大で酒づくりを学ぶ

東京農大で酒づくりを学べるのは、応用生物科学部 醸造科学科です。3年生になると調味料と酒類を製造する実習と、全国の醸造所に2週間ほど泊まり込む実習があります。シラバスを見ると醸造学科ならではの授業が多く、他大学との違いを感じます。実際に入学した学生の評価も高く、全国の酒造会社の50%に卒業生がいる強みがあります。

応用生物科学部 醸造科学科

「酒づくりを学ぶ大学」といえば、一番に思い浮かぶのは東京農業大学でしょう。その中でも、農大と農大の酒づくりを有名にしたのは小泉武夫先生の功績が大きいと思います。名前にウイキペディアのリンクを貼っておきます。

私も30年くらい前に発酵の面白さを小泉先生の本で初めて知り、以来、現在までずっと本を読ませていただいています。最近読んだ小泉先生の本の中で面白かった話は、ご飯に生えたカビから木灰を使って麹だけを取り出す話です。これは、カビだらけのご飯から木灰を使って麹を単離するという記事に書きました。

東京農大で酒づくりを学べるのは、応用生物科学部 醸造科学科です。

醸造科学科 | 東京農業大学
東京農業大学の応用生物科学部 醸造科学科ページです。大学案内、学部・大学院、研究活動、キャンパス、国際交流・留学、入学案内など、東京農業大学の情報をご覧いただけます。

受験生向けの朝日新聞EduAにある学内で酒造り、競って学ぶ発酵の奥深さ 東京農業大学 応用生物科学部 醸造科学科を読むと、この学科に入学した学生がどんなことを学ぶのか大まかにわかります。

3年生になると調味料と酒類を製造する実習がある

醸造科学科を象徴するのが3年次の生産学実験だ。4~7月は味噌と醤油といった調味料を、9~12月は清酒、焼酎、ビール、ワインといった酒類を製造する。完成品は学生、教員、大学院生の全員で香りや味の観点から評価する。学生からも人気の実習だ。

3年生の12月に全国の醸造所に2週間ほど泊まり込む実習がある

もう一つの3年次の目玉が、12月に全国の醸造所に2週間ほど泊まり込みで行う「醸造科学特別実習」だ。選択科目ではあるが、毎年同学科の7割の学生が選択するという。

「受け入れ先は清酒の蔵が多く、米を洗うところから最後の“搾り”の工程まで経験させてもらっています。蔵人の指導もあり、就職活動にも役立つ良い社会経験になっています」(藤本教授)

東京農大の正門前にある「食と農」の博物館に行ったことがある方ならご存知でしょう。2Fにずらりと日本酒のビンが並んでいます。しかも、有名な銘柄が多い。卒業生の蔵です。受け入れ先がたくさんあるのです。

東京農業大学「食と農」の博物館は入場無料です。行ってみる価値ありますよ。

醸造学科ならではの授業が多い

東京農大では、シラバス(講義の摘要)がサイトで公開されています。醸造学科を見ると、化学や生化学など一般の理系の学部でもある科目の他、醸造学科ならではの科目がたくさん出てきます。これは他大学ではあまり考えられないですね。

清酒学

たとえば、「清酒学」。概要はこのように書かれています。

清酒は、科学的解析以前より先人達の巧みな微生物管理と経験により醸されてきた。これに加え近年では科学技術の導入、融合により、日本伝統の醸造酒であることを継承しつつ、酒質は大きく変化した。また輸出も増加し、海外でも現地生産されるようになった。さらに平成27年(2015年)末には、「日本酒」の定義も新たに設けられ、このように洗練された現代の清酒は、そのイメージも時代と共に変化し、国内外で広く愛飲されていることを科学的学問として理解できる。

ビール学

そして、「ビール学」。

酒類を大別すると醸造酒、蒸留酒、混成酒にわかられる。その中の醸造酒に主眼を置き講義を行う。酒類としてはビールと果実酒(ワイン)である。これらの酒類は世界的に多くの国々で製造されているとともに、種類も豊富である。講義においては、それぞれの酒類についての歴史、発酵様式、原料から発酵、熟成、製品までの工程について教授する。また関係する微生物や発酵における反応などのついても併せ講義する。(後略)

味噌醸造学

「味噌醸造学」もあります。

日本を代表する醸造物である味噌は、日本の食生活に重要な役割を演じ、気候風土・食生活等により、各地域特有の味噌が製造される。味噌は原料により米・麦・豆味噌の他、加工味噌等に分類される。本授業では各種味噌の特長や製造に関する理論と工程を学ぶ。また、味噌の成分・香味並びに味噌の機能性についても言及する。

他の大学だと、清酒もビールも味噌も同じ科目の中で講義されそうですが、東京農大ではそれぞれが独立した科目です。

実際に入学した学生の評価

みんなの大学情報の応用生物科学部 醸造科学科 口コミにはこの記事を書いている時点で48件の口コミが寄せられていて、5点満点の平均評価は、4.07なのでかなりよいですね。

全国の酒造会社の50%に卒業生がいる

ニッポンの「酒」を支える東京農業大学のチカラを読むと、こんなことが書かれています。

東京農業大学が2016年に全国の酒造会社1936社に行った調査によると、実に東京農大卒業生の在職割合は50%だった(回答1391社。回答率71.8%)。

これだけ卒業生が同じ業界にいると、横のつながりが活発になります。

出羽桜酒造の仲野社長をはじめ、先輩や大学の同期に「日ごろから何かにつけて教えてもらい、助けられている」というのは南部美人の久慈浩介さんだ。

「新しく麹室を作るときには、「出羽桜」の仲野社長や「十四代」の高木社長などに見せてもらったり、瓶詰め蔵を建てる時には「天山」の七田社長に見せてもらったりしました。みなさんがご自身の経験から、使い勝手や改良点などを助言してくださるんです。大学で得た最大のものは、知識や技術よりも、同期の仲間や先輩・後輩のつながりです。卒業して数十年経っていながら、大学のネットワークで仕事ができる業界はそうはないでしょう」と胸を張る。

農水省の日本酒をめぐる状況を読むと、1973年(昭和48)をピークに日本酒の国内出荷量は減り続けているのがわかります。

ただ、私が日本酒を飲み始めた1980年代初めのことを思い出すと、明らかにおいしい日本酒が増えていると思います。そのせいか輸出量は増えています。東京農大のネットワークは日本酒のおいしさにきっと貢献しているでしょう。

農大アンテナショップ「農」の蔵

ところで、この記事を書くまで、農大アンテナショップ「農」の蔵というお店のことを知りませんでした。

東京農大醸造科卒の全国の有名蔵元から地酒を取り寄せています。日本酒をはじめ、ワインや焼酎もあります。また、味噌・醤油・みりんなど発酵食品、農大ジャム、はちみつ、お酒に合うおつまみなどもございます。朝市のタイミングで自家製のパン屋や洋菓子も入荷いたします。

世田谷代田駅のすぐ近くです。これは行ってみなければ!

農大ショップ「農」の蔵 | 株式会社農大サポート
株式会社農大サポートは学校法人東京農業大学と連携し、みなさまに高品質なサービスをご提供します

NOTE

東京農大の醸造学科は、製造することに力を入れた教育をしています。いままでは、このような学科がなかったですからね。これからは、ひょっとすると、帯広畜産大学や新潟大学がよいものを製造する教育をするようになるかもしれないと思いました。

タイトルとURLをコピーしました